定滑車と動滑車の考え方(束縛条件、動滑車を使って物体を持ち上げる場合についても解説しています)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

定滑車と動滑車で成り立つ関係式

定滑車と動滑車を考えるときに、まず前提となる条件があります。それは物理において「ひもは伸びたり縮んだりしない」ということです。

この前提条件があるため、定滑車で繋がれている物体どうしは、

l1=l2, v1=v2, a1=a2

の関係を満たし、動滑車で繋がれている物体どうしは、

d1=2d2, v1=2v2, a1=2a2

この関係を満たします。

定滑車における変位・速度・加速度

それぞれ図を使って確認してみます。まずは定滑車を確認してみます。

下図のように天井に定滑車を吊るし、物体1とおもり2を伸び縮みすることのないひもでつなぎます。それぞれの最初の位置から移動し、ある時刻で下図の位置に移動したとします。この時刻におけるそれぞれの変位と速度と加速度を考えてみましょう。

ひもの長さはどの時刻においても一定であるので、おもり2が下がった分だけ物体1は上昇します。そのため、それぞれの変位の大きさは等しくなります。

l1=l2

また、それぞれ同じ時間で同じ距離移動するので速さも等しくなります。

v1=v2

さらに、それぞれ同じ時間で同じ大きさの速度変化をするので、加速度の大きさも等しくなります。

a1=a2

このように定滑車で繋がれた2つの物体はどの時刻をとっても、変位の大きさと速さと加速度の大きさは等しくなります。

動滑車における変位・速度・加速度

次に動滑車です。

例えば下図のように物体と動滑車を伸び縮みのしないひもでつないだとします。動滑車2がd2下がったとき、物体1がd1移動したとします。このときのそれぞれの変位の大きさのd1とd2の関係を考えてみましょう。

動滑車を考えるポイントは、動滑車によってひもが折り返されているということです。つまり、動滑車の右側のひもがd2分長くなると、動滑車の左側のひもの部分もd2分長くなるということになります。全体のひもの長さは移動前も移動後も一定であるので、d1= d2+ d2という関係になり、物体1と動滑車2の変位の大きさの関係は、

d1=2d2

となります。

あとは定滑車のときと同様に、それぞれ同じ時間で移動した距離の比が2:1なので、速さの比も2:1となり、

v1=v2×2=2v2

という関係式ができます。

そして加速度も同様に、物体1と動滑車2の速度の変化量の大きさが2:1となるので、加速度の大きさの比も2:1となり、

a1=a2×2=2a2

という関係を満たします。

そして、これらの関係はすべてどの時刻においても成り立ちます。そのため、束縛条件と呼ばれます。

動滑車を使って物体を持ち上げる

最後に、動滑車について1点補足しておきます。

このように動滑車と定滑車があり、動滑車に質量mの物体を吊り下げます。そしてひもの端を人がひっぱります。

このような状況において、物体を持ち上げるのに必要な力を考えてみましょう。ただし、動滑車の質量は無視できるものとします。

動滑車の左右にはたらくひもの張力をTとおいたとき、動滑車と人の手はひもで繋がっているので、ひもが手を引っ張る張力もTとなります。そして作用・反作用の関係から、人がひもを引っ張る力もTとなります。

また、動滑車の質量は無視できるので、物体と一体となっていると考えると、

2T=mg

というつり合いの式が立てられ、

T=mg/2

となります。したがって、動滑車を使って物体を持ち上げようと思えば、人はmg/2の大きさの力で引っ張ればよいということになります。つまり動滑車を使えば、物体を持ち上げるために必要な力は半分でいいということになります。

いかがだったでしょうか。物理においてはこのように、前提となっている条件から関係式が導かれるということはよくあります。そのため、こういった条件を見落とさないように気をつけましょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

定滑車問題演習

(4)力の法則(力学)の解説一覧

力の法則(力学)公式

力の矢印の書き方(場の力と接触力、作用・反作用の法則、積み重ねられた物体に働く力、浮力の反作用)

運動方程式の意味(力を加えるとその方向に加速度が生じる、放物運動・円運動・単振動を運動方程式で考える)

定滑車と動滑車の考え方(束縛条件、動滑車を使って物体を持ち上げる場合についても解説しています)

ばねの合成と切断(直列つなぎ、並列つなぎ、1/nに切断、M:mに切断したとき、ばね定数がどうなるか)

浮力とは何か(水圧と浮力の違い、アルキメデスの原理についても解説しています)

流体内(大気中・水中)の圧力を考えるときのポイント(圧力はあらゆる方向からかかる、圧力のつり合いは壁で考える、力のつり合いと圧力のつり合いの違い)

摩擦力は3種類あると考えましょう(静止摩擦力、最大摩擦力、動摩擦力)

見かけの重力とは何か?(見かけの鉛直方向とは何か? 加速している電車の中でつり革・風船・コップに入った水・振り子はどうなる?)

(5)参考

力の法則(力学)の解説・授業・公式・演習問題一覧

力学(物理基礎、物理)の解説動画・授業動画一覧

力学(物理基礎、物理)公式一覧

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物理の解説動画・授業動画一覧(力学・熱力学・波動・電磁気・原子)

物理に関する現象や技術(力学、熱力学、波動、電磁気、原子)

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