力の矢印の書き方(場の力と接触力、作用・反作用の法則、積み重ねられた物体に働く力、浮力の反作用)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

場の力と接触力

力学の問題を解くときは、まず力の矢印をかくところから始めます。

力の矢印をかくときに意識して欲しいことは、力は2種類しか存在しないということです。つまり力学の問題を解くときに考えるべき力は、

①場の力
②接触力

この2種類だけを考えるようにすればいいということです。

場の力とは重力や電磁気力のように、その場にいるだけではたらく力のことです。力学においては基本的に重力だけを考えれば問題ありません。

そして、場の力以外の力はすべて接触力となります。接触力とはその名の通り、何かと何かが接触しているときに、はたらく力のことです。逆に、何かと何かが接触していれば、必ずそこには力がはたらく、ということになります。たとえば、垂直抗力や張力、弾性力といったものが接触力となります。

接触力において重要なことは、接触力には必ず作用・反作用の法則がはたらくということです。つまり、何かに接触して力を受けている場合、その接触している相手にも同じ大きさで、向きが逆の力を与えているという法則が必ず成り立ちます。このことは力の矢印を考えるときにとても重要なので、必ず理解しておきましょう。

また、3つ目の力として慣性力を考えることがあります。慣性力とは、加速している物体に乗っているときに受けていると感じる力のことです。しかし、これは見かけの力であり、実際に存在する力ではないので、今回は考えないようにします。

積み重ねられた物体にはたらく力

それでは実際に例を使って力の矢印の書き方を確認してみましょう。

このように、なめらかな床の上に質量mの物体を3つ乗せ、真ん中の物体をFの力で引っ張った場合、それぞれの物体にどのような力がはたらくか考えてみましょう。条件として、これら3つの物体の質量は全て同じmであるということ、また、物体間には摩擦があり、床には摩擦がないものとします。

このように積み重なっている物体を考えるときは、同時に考えるのではなく、バラバラにして考えるようにします。図のかき方の工夫として、少し隙間を作るようにすると矢印がかきやすくなります。

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それではまず、場の力をかいていきます。力学において場の力は重力なので、まず重力をかきます。

次に、接触力を考えます。何かと何かが接触している部分には必ず力がはたらくので、どこで何と接触しているのか確認しながら矢印を書いていきます。

物体Bにはたらく力

今回は引っ張られている真ん中の物体から考えるようにします。

まずは引っ張られている場所にFの力がはたらきます。

次に、この真ん中の物体Bは下にある物体Cと接触しているので、BとCの間に接触力がはたらきます。今回でいえば、垂直抗力と摩擦力がはたらきます。摩擦力の向きは進行方向の逆向きにはたらきます。これらはBC間ではたらく力なので、fBCと書くようにしておくと分かりやすくなります。

また、真ん中のBは上においてあるAとも接触しています。なのでBC間と同様に、AB間にも垂直抗力と摩擦力がはたらきます。

これで物体Bと接触しているものは全て考えたので、Bにはたらく力はこれが全てです。

物体Aにはたらく力

それでは次に、Aにはたらく力を考えてみましょう。

AはBと接触しているので、AB間で力がはたらきます。まずは、AはBから垂直抗力を受けます。AがBから受ける垂直抗力とBがAから受ける垂直抗力は作用・反作用の関係になっているので、同じ大きさとなります。

そして次に、AはBから摩擦力を受けます。その向きなのですが、摩擦力は接触力なので、作用・反作用の法則がはたらきます。このBが受けている摩擦力と大きさは同じで、向きが逆になる摩擦力をAが受けることになります。そのため向きは右向きとなります。

このように、作用・反作用の法則を理解しておけば、接触力の向きで間違うことがなくなります。

物体Cにはたらく力

最後にCも同様にして考えてみましょう。

まずはCはBからの垂直抗力を受けます。CがBから受けている垂直抗力は、BがCから受けている垂直抗力と作用・反作用の関係となっているので、大きさが同じで向きが逆の力となります。

そして先ほどと同様に摩擦力も作用・反作用の法則から、右向きに、BがCから受けている摩擦力と同じ大きさの摩擦力がはたらきます。

最後に、Cは床とも接触しているので、床からの垂直抗力を受けます。

これでこの3つの物体にかかっている力の矢印が全てかけました。

特に注意したいのが、fBCとfABの2つの摩擦力の向きです。感覚で向きを決めるのではなく、作用・反作用の法則を使って向きを決めるようにしてください。

ちなみに、AとCに右向きの摩擦力がかかっているということは、AとCは右向きの加速度を持っているということになり、Bと一緒に右向きに動くという現実とも合致します。

浮力の反作用を考える

それでは次に、下図のように糸でつるした物体を水に沈め、その水をはかりの上に置いたときに、このはかりが測定する力は何なのかを考えてみましょう。

まずは先ほどと同様に、2種類の力の矢印をかき込んでいきます。

まずは場の力つまり重力をかき込みます。物体の重力と水の重力がはたらきます。

物体にはたらく接触力

次に、接触力を考えます。まずは物体にかかる接触力を考えてみます。

物体は糸と接触しているので、物体と糸の間に接触力である張力がはたらきます。今回は、その張力をTとします。

次に物体は水とも接触しているので、水との間に接触力がはたらきます。水に沈められている物体が受ける接触力とは、つまり浮力のことです。力学において重力以外はすべて接触力なので、浮力も接触力として考えます。

これでこの物体にかかる力は全てとなります。

水にはたらく接触力

次に、まわりの水にはたらく力を考えてみましょう。

まわりの水は下にあるはかりと接触しています。正確にいえば水が入っている容器に接触していて、その容器がはかりと接触しているのですが、今回は容器のことを考えないようにします。垂直抗力なので、上向きの力がはたらきます。

そして、水は物体とも接触しています。ここで作用・反作用の法則を考えて、水が物体から受ける力は、物体が水から受けている浮力の反作用です。作用・反作用の関係なので、大きさが同じで、向きは逆向きの力が物体から水にはたらきます。この浮力の反作用を考えることができるかがポイントとなります。

はかりにはたらく接触力

そして、水からはかりにはたらいている力は、垂直抗力の反作用となります。はかりは水と接触しており、作用・反作用の法則がはたらくので、水がはかりから受けている垂直抗力と同じ大きさで、向きが逆の垂直抗力の反作用をはかりは水から受けます。

つまり、はかりや体重計などが測定しているのは、その上に乗っている物体の重力ではなく、垂直抗力の反作用であるということは、とても重要なことなので知っておきましょう。

はかりが測定している力の大きさ

では最後に、はかりが測定している垂直抗力の反作用の大きさを考えてみます。

物体と水での鉛直方向のつり合いの式をそれぞれ書きます。そしてこれらからFつまり浮力を消して整理するとこのようになります。

物体:T+F=mg
水:N=Mg+f
よって、N=Mg+mg-T

この式からも分かる通り、はかりが測定しているのははかりの上に乗っているもの重力ではないということになります。

力学の問題を解くときは、力の矢印が正確に書けないと解くことができません。ぜひ今回の考え方を理解し使えるようにしておいてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

積み重ねられた物体の運動問題演習

(4)力の法則(力学)の解説一覧

力の法則(力学)公式

力の矢印の書き方(場の力と接触力、作用・反作用の法則、積み重ねられた物体に働く力、浮力の反作用)

運動方程式の意味(力を加えるとその方向に加速度が生じる、放物運動・円運動・単振動を運動方程式で考える)

定滑車と動滑車の考え方(束縛条件、動滑車を使って物体を持ち上げる場合についても解説しています)

ばねの合成と切断(直列つなぎ、並列つなぎ、1/nに切断、M:mに切断したとき、ばね定数がどうなるか)

浮力とは何か(水圧と浮力の違い、アルキメデスの原理についても解説しています)

流体内(大気中・水中)の圧力を考えるときのポイント(圧力はあらゆる方向からかかる、圧力のつり合いは壁で考える、力のつり合いと圧力のつり合いの違い)

摩擦力は3種類あると考えましょう(静止摩擦力、最大摩擦力、動摩擦力)

見かけの重力とは何か?(見かけの鉛直方向とは何か? 加速している電車の中でつり革・風船・コップに入った水・振り子はどうなる?)

(5)参考

力の法則(力学)の解説・授業・公式・演習問題一覧

力学(物理基礎、物理)の解説動画・授業動画一覧

力学(物理基礎、物理)公式一覧

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物理に関する現象や技術(力学、熱力学、波動、電磁気、原子)

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物理学習に必要な参考書・問題集