塩の水溶液の液性(硫酸水素カリウムの水溶液の液性が酸性になる理由についても解説しています)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

今回は塩の水溶液の液性を答える問題を解いていきます。

塩の水溶液の液性を答える問題は、塩の加水分解が理解できていれば、ほとんど解くことができます。そのため今回扱う問題も塩の加水分解の考え方を使って解いていくのですが、今回は塩の加水分解の原理が理解できている前提で話を進めていきます。もし理解が不十分な場合は別の動画で詳しく解説をしているので、まずはそちらをご覧になってください。

それでは以下の塩を含む水溶液の液性を答えていきます。

炭酸ナトリウム(Na2CO3)を含む水溶液の液性

まずは炭酸ナトリウム(Na2CO3)を含む水溶液の液性を考えていきます。

塩の水溶液の液性を考えるときは、その塩が強酸・弱酸・強塩基・弱塩基のどの組み合わせの中和によってできた塩なのかを考えます。

炭酸ナトリウムは弱酸である炭酸と、強塩基である水酸化ナトリウムの中和によってできる塩です。そして塩は水溶液の中では100%電離をするので、ナトリウムイオンと炭酸イオンに分かれます。

Na2CO3 → 2Na+ + CO32-

そして、このナトリウムイオンは強塩基のイオンなのでこれ以上何もしません。しかし、弱酸のイオンである炭酸イオンは以下のように加水分解をし、

CO32- + 2H2O → H2CO3 + 2OH

水酸化物イオンが発生するので、この塩の水溶液の液性は塩基性となります。

炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を含む水溶液の液性

続いて、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)です。

化学式の中に水素原子がある、いわゆる酸性塩ですが考え方は同じです。

炭酸水素ナトリウムは弱酸である炭酸と、強塩基である水酸化ナトリウムの中和によってできた塩なので、先ほどと同様に、炭酸水素イオンは、以下のように炭酸に戻ろうとして加水分解を起こし、水酸化物イオンが発生するので、水溶液の液性は塩基性になります。

HCO3- + H2O → H2CO3 + OH

このように酸性塩であろうが弱塩基性塩であろうが、弱酸や弱塩基の塩であれば加水分解を考えて答えるようにしましょう。

硝酸カリウム(KNO3)を含む水溶液の液性

続いて、硝酸カリウム(KNO3)です。

硝酸カリウムは強酸である硝酸と、強塩基である水酸化カリウムの中和によってできた塩です。どちらのイオンも何もしないので液性は中性となります。

硫酸アンモニウム((NH4)2SO4を含む水溶液の液性

続いて、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4です。

硫酸アンモニウムは強酸である硫酸と、弱塩基であるアンモニアの中和によってできる塩なので、アンモニウムイオンが加水分解をして酸性となります。

硫酸銅(CuSO4)を含む水溶液の液性

次は、硫酸銅(CuSO4)です。

硫酸銅は強酸である硫酸と、弱塩基である水酸化銅の中和によってできる塩です。

水酸化銅Cu(OH)2は弱塩基であることに注意しましょう。水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化カルシウムや水酸化バリウムといったアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物以外は基本的に全て弱塩基です。

よって弱塩基である銅イオンが加水分解をして、硫酸銅の水溶液の液性は酸性となります。

硫酸水素カリウム(KHSO4)を含む水溶液の液性

最後に、硫酸水素カリウム(KHSO4)です。

硫酸水素カリウムは強酸である硫酸と、強塩基である水酸化カリウムの中和によってできた塩なので、「硝酸カリウムと同様に中性である」としてしまっては間違いです。

それがなぜかを説明します。硫酸水素カリウムは塩なので、水溶液中でカリウムイオンと硫酸水素イオンに完全に電離します。

KHSO4 → K+ + HSO4

そして、この2つとも弱酸でも弱塩基でもないので加水分解をすることははありません。しかし硫酸水素イオンは水溶液中で電離をします。

HSO4 → H+ + SO42-

なぜなら硫酸イオンは強酸のイオンなので、水溶液中では水素イオンと離れようとするからです。よって水素イオンが発生するので液性は酸性となります。

このように、強酸と強塩基の組み合わせは、まだ電離する余地があるか確認するのを忘れないようにしましょう。このことを一般的に言うと、「強酸と強塩基による酸性塩の液性は酸性になる」ということになるのですが、それを覚えるよりは、上記のように電離をするから酸性になるといったように原理から考えるようにしましょう。

炭酸水素イオンと硫酸水素イオンの振る舞い方の違いは対比させながら理解するようにするとよいでしょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

塩の水溶液の液性問題演習

酸と塩基、中和(化学基礎)知識テスト

(4)中和と塩(理論化学)の解説一覧

中和の計算(逆滴定、食酢の濃度の問題も解説しています)

塩の加水分解と弱酸遊離の原理(弱酸の性質によって起きる現象)

中和の計算を極める問題(複数の反応を扱った問題の解法、弱酸(弱塩基)遊離→逆滴定)

pHの計算(対数を使った計算、pOHとの関係、水のイオン積Kwについても解説しています)

塩の水溶液の液性(硫酸水素カリウムの水溶液の液性が酸性になる理由についても解説しています)

(5)参考

中和と塩(理論化学)の解説・授業・知識・演習問題一覧

理論化学の解説動画・授業動画一覧

理論化学知識一覧

化学計算の王道(化学基礎・理論化学)

化学反応式の王道(理論化学・無機化学)

化学反応式一覧(理論化学・無機化学)

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化学の語呂合わせ(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)

化学学習に必要な参考書・問題集