(1)解説授業動画
- 次:漸化式をマスターしよう(3)応用パターン①(隣接3項間漸化式、特性方程式の解が2つ出るパターン、特性方程式の解が1つのパターン)
- 前:漸化式をマスターしよう(2)基本パターン⑦(階差数列の公式を使うパターン)
☆YouTubeチャンネルの登録をよろしくお願いします→大学受験の王道チャンネル
(2)解説授業の原稿
最も重要なパターンの漸化式
それでは次は、an+1=pan+f(n)のパターンです。
これが基本のパターンの最後のパターンとなります。最後のパターンですが、このパターンは重要なパターンとなります。この漸化式の解法が理解できれば、漸化式の基本はマスターできたと言えます。では
どのような漸化式か確認しましょう。
an+1=pan+f(n)の形の漸化式です。
先ほどの階差数列の公式を使った漸化式と形は似ていますが、今回はanの係数が1ではありません。もしanの係数が1であれば、このf(n)が階差数列となり、階差数列の公式を使って解くことができます。しかし今回はanの係数が1ではないので、f(n)は階差数列とはなりません。
ではこのパターンの漸化式はどのように解いたらいいのかというと、左辺がn+1、右辺がnの形をムリヤリ作ることで解きます。
例題1:an+1+α(n+1)+β=p(an+αn+β)の形にムリヤリ式変形する
実際にやってみましょう。
a1=0、an+1=2an+2n−2
先ほども確認したとおり、anの係数が2となっているので、この2n−2は階差数列ではありません。また、an+1とanをαとした特性方程式を使って解くこともできません。なぜなら、この2n−2が定数ではなくnを含む式になっている場合は、特性方程式を使うことができないからです。
ではどのようにしたら良いかというと、左辺がn+1、右辺がnとなるような式変形を目指します。
an+1+2(n+1)=2(an+2n)のように、対応する場所の左辺ではn+1、右辺ではnの形になっており、それ以外が同じ形になっていれば、置き換えを使うことができるので、漸化式を解くことができます。
しかし、an+1=2an+2n−2の式を見ただけで、an+1+2(n+1)=2(an+2n)のように式変形するのは難しいです。そこで、とりあえず分からない部分をα、βと置いて式を作り、そのαとβを求めていくという方針で答案を進めます。
まずは、
an+1+α(n+1)+β=2(an+αn+β)
のように、左辺はn+1の係数をαとし定数項をβとし、右辺はanの係数である2でくくったあと、nの係数をαとし定数項をβとします。次に、an+1+α(n+1)+β=2(an+αn+β)の式を展開して整理します。すると、
an+1=2an+(β−α)
となり、この式と元の式
an+1=2an+2n−2
と比較して元の式ではnの係数が2なのでα=2となり、元の式は定数項が−2なのでβ−α=−2となります。あとはこの2つを連立させると、α=2、β=0と求めることができます。
αとβを求めたら、an+1+α(n+1)+β=2(an+αn+β)に求めたαとβを代入します。すると
an+1+2(n+1)= 2(an+2n)
のようになります。
つまり、この元の漸化式an+1=2an+2n−2は、an+1+2(n+1)= 2(an+2n)のように式変形できるということになります。
このαとβは、an+1+2(n+1)= 2(an+2n)とan+1=2an+2n−2が同じになるときのαとβなので、そのαとβを代入したら、an+1+2(n+1)= 2(an+2n)になっているので、元の漸化式an+1=2an+2n−2と、このan+1+2(n+1)= 2(an+2n)は同じ式であるということになります。実際にan+1+2(n+1)= 2(an+2n)を展開して整理してみると、元の式an+1=2an+2n−2に戻ります。
これで元の漸化式を左辺がn+1、右辺がnの形にできたので、an+2nをbnとおくと、bn+1=2bnとなり、解くことができる簡単な漸化式となります。bnは初項がb1で、公比が2の等比数列なので、bn=(0+2・1)・2n−1の式となり、計算すると2nとなります。よって、bnにan+2nを代入してanで解くと、an=2n−2nとなります。
いかがでしょうか。このαとβを使ってムリヤリ式変形をするという答案の流れが理解できたでしょうか。このパターンの答案も結局のところ左辺をn+1、右辺をnの形にして置き換えて簡単な漸化式にするという基本の流れで解いているのです。
例題2:an+1+α(n+1)2+β(n+1)+γ=p(an+αn2+βn+γ)の形にムリヤリ式変形する
それではもう1問このパターンの問題を解いてみます。
a1=0、an+1=2an+n2−n+1
今回はf(n)の部分がnの二次式になっています。しかし解法の流れは先ほどと同じです。それでは答案を確認していきます。
今回はf(n)の部分がnの二次式なのでα、β、γの3つの文字を使って、左辺がn+1、右辺がnの形となるようにします。
今回はnの2乗の項と作らないといけないので、左辺にはα(n+1)2が必要です。そして残りのnの項と定数項を調整するために、左辺にはβ(n+1)とγが必要になります。右辺はまずanの係数でくくったあと、左辺のn+1に対応する部分をnに変えます。そしてγはそのままγと書きます。すると、
an+1+α(n+1)2+β(n+1)+γ=2(an+αn2+βn+γ)
となります。
これでα、β、γを使って変形したい形の式を作ることができたので、α、β、γを求めるために、この式an+1+α(n+1)2+β(n+1)+γ=2(an+αn2+βn+γ)を展開して整理するとこのように、
an+1=2an+αn2+(−2α+β)n+(α−β+γ)
となります。よって元の漸化式
an+1=2an+n2−n+1
と比較すると、n2の係数が1になっているので、α=1となり、nの係数が−1なので−2α+β=−1となり、定数項が1なので−α−β+γ=1となります。あとはこの3つを連立させると、α=1、β=1、γ=3と求めることができます。
そして、ここで求めたα、β、γをan+1+α(n+1)2+β(n+1)+γ=2(an+αn2+βn+γ)に代入すると、
an+1+(n+1)2+(n+1)+3=2(an+n2+n+3)
のようになります。つまり元の漸化式an+1=2an+n2−n+1は、この形an+1+(n+1)2+(n+1)+3=2(an+n2+n+3)に式変形することができるということになります。実際にこの式an+1+(n+1)2+(n+1)+3=2(an+n2+n+3)を展開して整理してみると、元の漸化式an+1=2an+n2−n+1に戻ります。
これで左辺がn+1、右辺がnの形ができたので、この2(an+n2+n+3)の部分をbnと置くと、bn+1=2bnとなり、bnは初項がb1、公比が2の等比数列なので計算すると、bn=(0+1+1+3)・2n−1=5・2n−1となります。よって、bnにan+n2+n+3を代入してanで解くと答えは、an=5・2n−1−n2−n−3となります。
いかがでしょうか。このf(n)がnの二次式であっても同様の解法で解けるということが分かったと思います。ちなみに、f(n) の部分はn乗などでも同様の流れで解くことができます。とにかく漸化式は左辺がn+1、右辺がnの形を作れば解くことができるのです。
(3)解説授業の内容を復習しよう
(4)漸化式基本パターン解説一覧
①漸化式をマスターしよう(2)基本パターン①(特性方程式を利用して解く漸化式、漸化式の解法の基本にして奥義)
②漸化式をマスターしよう(2)基本パターン②(n乗の項を含む漸化式)
③漸化式をマスターしよう(2)基本パターン③(分母と分子にanを含む漸化式)
④漸化式をマスターしよう(2)基本パターン④(anan+1を含む漸化式)
⑤漸化式をマスターしよう(2)基本パターン⑤(anにルートや指数がついている漸化式)
⑥漸化式をマスターしよう(2)基本パターン⑥(和Snが与えられているパターン、なぜn≧2としなければいけないのか)
⑦漸化式をマスターしよう(2)基本パターン⑦(階差数列の公式を使うパターン)
⑧漸化式をマスターしよう(2)基本パターン⑧(最も重要なパターン、これが理解できたら漸化式の基本はマスターしたと言えます)
(5)漸化式をマスターしよう(数学B)の解説一覧
②漸化式をマスターしよう(1)基本中の基本(等差数列の漸化式、等比数列の漸化式、そもそも漸化式とは何か)
④漸化式をマスターしよう(3)応用パターン解説(隣接3項間漸化式、発想が難しい漸化式、一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン)
(6)参考
☆漸化式(数学B)をマスターしよう(漸化式全パターンの解説・授業・演習問題一覧)
☆数学の解説・授業・公式・演習問題一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)
「漸化式をマスターしよう」シリーズは、『細野真宏の数列と行列が面白いほどわかる本 Version2.0』(細野真宏著、(株)中経出版発行、現在は絶版)を参考にしています。
細野真宏先生が現在発行している出版物はこちら(小学館HP)→https://www.shogakukan.co.jp/author/5885
中経出版の参考書・問題集はこちら(学参ドットコム)→https://www.gakusan.com/