誘導リアクタンスと容量リアクタンスを積分と微分(数学Ⅲ)で導きます!

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

交流回路におけるリアクタンスを積分と微分で導いでみます。

リアクタンスとは何か

まずはそもそもリアクタンスとは何かを確認します。

交流電源にコイルをつないだとき、電流をI=I0sinωtとすると、電圧はV=V0sin(ωt+π/2)となります。そして、この電圧の最大値はV0=ωL・I0を満たすので、V=ωL・I0sin(ωt+π/2)となります。このときのωLを誘導リアクタンスといいます。

次に、交流電源にコンデンサーをつないだとき、電流をI=I0sinωtとすると電圧はV=V0sin(ωt−π/2)となります。そして、電圧の最大値V0=1/ωC・I0となるので、V=1/ωC・I0sin(ωt−π/2)となります。このときの1/ωCのことを容量リアクタンスといいます。

リアクタンスとオームの法則

誘導リアクタンスをXL、容量リアクタンスをXCとすると、交流回路におけるコイルはV0=XLI0を満たし、交流回路におけるコンデンサーはV0=XCI0を満たします。

これらの式はオ−ムの法則と同じ形の式となっています。つまり誘導リアクタンスとはコイルを抵抗とみなしたものということであり、容量リアクタンスとはコンデンサーを抵抗とみなしたものということが言えます。

ちなみに抵抗の単位はΩですが、誘導リアクタンスの単位もΩであり、容量リアクタンスの単位もΩとなっています。つまり単位からいってもリアクタンスというものは抵抗と同じものであるということがわかります。

これがリアクタンスの意味なのですが、今回はなぜ誘導リアクタンスがωLなのか、容量リアクタンスが1/ωCなのかを積分と微分を使って数学的に導いてみようと思います。

誘導リアクタンスを積分を使って導く

それではまず誘導リアクタンスを積分を使って導いてみます。下図のように交流電源に自己インダクタンスLのコイルをつなぎます。

そして、電源の電圧をV0sinωtとしたときの電流を求めることで誘導リアクタンスを導きます。ちなみに交流電源は時間とともにその電圧の大きさと向きが変わる電源です。そのためsinの関数となるのですが、時間の基準をどこに取るかによって電流や電圧の式を変えることができます。今回は電圧がV=V0sinωtとなるようにtの基準を考えます。

コイルの自己誘導

まずコイルは電流が変化すると、その変化に対して自己誘導を起こします。その自己誘導による誘導起電力をEすると、E=−LΔI/Δtで表すことができます。

キルヒホッフの第2法則

そして、この回路におけるキルヒホッフの第2法則、つまり(起電力の合計)=(電圧降下)の式を立てると、

V+E=0

となります。今回、起電力を発生しているのは交流電源とコイルなので左辺はV+Eとなり、この回路おいて電圧降下を起こす装置はないので右辺は0となります。

両辺を時間tで積分する

このV+E=0の式に、V=V0sinωtとE=−LΔI/Δtを代入します。この後積分をするので、ΔI/Δtを数学の形でdI/dtと書いておきます。

V0sinωt−LdI/dt=0

そしてここで両辺を時間tで積分します。まずは積分なのでこのそれぞれにインテグラルとdtをつけます。

∫V0sinωt・dt−∫LdI/dt・dt=0
− V0/ω・cosωt−LI+A=0 (Aは積分定数)

まずは∫V0sinωt・dtの積分ですが、なぜ

∫V0sinωt・dt=− V0/ωcosωt

になるかがわからない場合はcosωtをtで微分してみてください。

d/dt・cosωt=ω・(−sinωt)

cosωtは合成関数なので、合成関数の微分を使って微分します。するとωtの微分がωになりcosの微分は−sinなのでこのようになります。ここから逆算して考えると、sinωtをtで積分してみると−1/ω・cosωtとなるので、あとは係数のV0をかけるとこの積分ができます。

次に∫LdI/dt・dtですが、こちらはまずdtを約分します。すると残るのはLをIで積分するという式(∫LdI)が残るので、LIとなります。

この積分は不定積分なので積分定数を書きます。

式を整理する

そして、この式をI=の形にすると以下のようになります。

I=−V0/ωL・cosωt−A/L

ここで、今回、電流の最大値の絶対値と電流の最小値の絶対値が等しいことを考えると、積分定数はA=0となります。なぜかというとこのAが0でなければ、電流の最大値(cosωt=−1)のときのIの値と、電流の最小値(cosωt=1)のときのIの値が一致しなくなるからです。

よって、

I=−V0/ωL・cosωt

となり、cosをsinに変換して

I= V0/ωL・sin(ωt−π/2)

となります。この式変形では三角関数の性質を使ってcosωt=sin(π/2−ωt)とし、sin(π/2−ωt)は−sin(ωt−π/2)としています。

誘導リアクタンスを導く

よって、sin(ωt−π/2)=1のときIは最大となるので、V0/ωLがIの最大値I0となります。I0=V0/ωLをV0=の形にすると

V0=ωL・I0

となり、オ−ムの法則との対比を考えると、このωLを抵抗とみなすことができ、誘導リアクタンスがωLであることを導くことができました。

ちなみにこの電流の式(I= V0/ωL・sin(ωt−π/2))から、交流電源にコイルをつないだとき、電流の位相は電圧よりもπ/2遅れていることがわかります。

容量リアクタンスを微分を使って導く

それでは次に容量リアクタンスを微分を使って導いてみます。

下図のように電気容量がCのコンデンサーを交流電源に接続します。先ほどと同様に交流電源の電圧をV=V0sinωtとし、電流を求めることで容量リアクタンスを導いてみます。

コンデンサーの公式

このときコンデンサーに帯電している電荷をQとすると、コンデンサーの公式からQ=CVが成り立ちます。そしてこの式をVについて解いて、VにV0sinωtを代入すると以下のようになります。

V=Q/C
V0sinωt=Q/C

両辺を時間tで微分する

そして、この式の両辺を時間tで微分します。

d/dt・(V0sinωt)=1/C・dQ/dt
V0・ω・cosωt=1/C・I

まずはV0sinωtをtで微分します。sinωt は合成関数であるので、合成関数の微分になることに注意してください。sinを微分したcosにωtを微分したωをかけるのを忘れないようにしましょう。

そして次に、Q/Cをtで微分するのですが、Cは電気容量でコンデンサーを変えない限り変わることがないので、時間tには関係ありません。そして、電荷Qを時間tで微分すると電流Iとなります。これはそもそも電流の定義が単位時間当たりの電荷の変化量だからです。

式を整理する

これで式の中に電流Iが出てきたのでI=の形へ式変形し、cosωtをsinに変換します(三角関数の性質を利用)。

I=ωC・V0cosωt=ωC・V0sin(ωt+π/2)

容量リアクタンスを導く

そして、sin(ωt+π/2)が1のときIは最大となるので、ωCV0が電流の最大値となります。つまり電流の最大値は

I0=ωCV0

となり、V0について解くと

V0=1/ωC・I0

となります。そしてオ−ムの法則との対比を考えると、この1/ωCがこの回路の抵抗に相当するものと考えることができるので、この1/ωCが容量リアクタンスであると導くことができました。

ちなみにこの式から、交流回路におけるコンデンサーの電流の位相は電圧よりもπ/2進んでいることがわかります。

いかがだったでしょうか。誘導リアクタンスと容量リアクタンスを数Ⅲの積分と微分を使って導くことができました。ぜひ自分でも計算してみてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

リアクタンス問題演習

(4)交流と電気振動(電磁気)の解説一覧

交流と電気振動(電磁気)公式

交流回路における抵抗・コイル・コンデンサーの考え方(なぜコイルとコンデンサーで電流と電圧の位相がズレるのか)

誘導リアクタンスと容量リアクタンスを積分と微分で導く

RLC直列回路の式を三角関数の合成を使って導く(インピーダンスや遅角についても解説しています)

RLC直列回路の式をベクトルの考え方を使って導く

(5)参考

交流と電気振動(電磁気)の解説・授業・公式・演習問題一覧

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