電流の表し方は3通りあります(電流の定義、自由電子の動きと電流、オームの法則、抵抗とは何か、抵抗率についても解説しています)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

電流の3通りの表し方

電流は3通りの表し方があるということは知っておきましょう。

①I=Q/t
②I=envS
③I=V/R

この3通りの表し方があります。

今回はそれぞれの式が何を意味しているのかを確認していきます。

①電流の定義:I=Q/t

I=Q/tの式は電流の定義を表しています。

「電流の大きさは、導線のある断面を単位時間あたりに通過する電気量である」というのが電流の定義で、この式がそれを表しています。

電流の大きさは導線を通過した電気量を時間で割ったものとなります。

Iつまり電流の単位は[A]で、Qつまり電気量の単位は[C]、tつまり時間の単位は[s]です。そのため、[A]という単位は[C/s]と表すこともできるということは知っておきましょう。

②電子の動きから導いた電流:I=envS

そして、この電流の定義を電子の動きに着目して表したのが2番目の式です。

下図のように導体に電池を接続すると、電池の正極の方に向かって導体内の自由電子が移動します。このとき単位時間あたりにどれだけの電気量が移動したかを考えることによって、電流を求めてみようと思います。

それぞれの文字が表している意味

I=envSの式を理解するためには、それぞれの文字が何を意味しているのかを正確に把握しないといけません。

まず、Sは導体の断面積を表しています。単位は[m2]です。

そして、vは自由電子の速さを表しています。単位は[m/s]です。

nは導体の単位体積中に含まれる自由電子の数を表しています。つまり導体の中に自由電子がどれだけつまっているかを表しているので、電子数の密度を表しているとも考えることができます。単位は[個/m3]です。

そして、eは電気素量を表しています。電気素量とは電子1個の電気量の大きさのことです。単位は[C]となります。

vSが表す意味

それではまず、vSが何を意味するかを考えてみます。

vは自由電子の速さなので、1・vで1秒間に電子が移動する距離を表すことができます。そして、それに断面積のSをかけることで、電子が1秒間に通過する体積を表すことができます。

vSの単位はvが[m/s]でSが[m2]なので[m3/s]となります。

nvSが表す意味

そのvSにnつまり電子の数の密度をかけたnvSは、電子が1秒間に通過する個数を表すことになります。

nvSの単位は[個/s]となります。

envSが表す意味

そして、eは電子1個当たりの電気量の大きさなので、単位は[C/個]と考えてもよく、先ほどのnvSにeをかけたenvSは、1秒間に通過する電気量の大きさとなります。

つまり、1秒間に電子がnvS個通過するのですが、電子1個あたりはe[C]の電気量を持っているので、envSで1秒間に通過する電気量の大きさ、つまり[C/s]となります。

そして、これはI=Q/tの電流の定義の単位と同じになるので、どちらも同じ電流を表しているということになります。

このI=envSはただ式を覚えようとするのではなく、今回のように順番に考えて式を作れるようになりましょう。

③オームの法則:I=V/R

それでは最後に3番目の式です。

オームの法則とは

3番目の式はいわゆるオームの法則から来ています。

オームの法則はV=RIで表され、「電圧は電流に比例する」ということを意味しています。つまり電流を大きくすれば電圧が大きくなり、あるいは電圧を大きくすれば電流が大きくなるということを表しています。

抵抗Rとは何か

そして、このオームの法則の比例定数であるRのことを抵抗と呼びます。

抵抗は

R=ρ×ℓ/S

で表され、Sは抵抗となっている物質の断面積[m2]を表しており、ℓはその物質の長さ[m]を表しています。

つまり抵抗は、その物質の断面積に反比例し、長さに比例するということになります。

これはトンネルをイメージするとわかりやすくなると思います。抵抗とは電流の流れにくさを表しており、トンネルの穴が大きいものより小さいものの方が電流が通りにくくなる、つまり、抵抗が大きくなるということを表しています。また、トンネルが短いものより長いものの方が通過するのに時間がかかるので通りにくくなる、つまり、長い方が抵抗が大きくなるということを表しています。

抵抗率とは何か

そしてさらに、抵抗の式の比例定数であるρのことを抵抗率[Ω・m]と呼んでいます。

ρ=ρ0(1+αt)

と表され、ρ0は0℃のときの抵抗率を表しており、αは温度係数と呼ばれています。そして、tはセルシウス温度となっており、単位は[℃]です。

温度係数は物質によって決まっている値で、基本的にプラスになります。そのため、基本的には温度を上げれば上げるほど抵抗率が大きくなり、抵抗が大きくなるということになります。

なぜ温度を上げると抵抗が大きくなるのか

なぜ温度を上げると抵抗が大きくなるのでしょうか。

「導体などの中を電子が移動することで電流が生じる」ということでしたが、実際のところ電子はまっすぐ進むということはあり得ません。導体中の陽イオンや原子核などにぶつかったり、邪魔をされたりして進んでいきます。

そして、温度を上げるということはそういった粒子の熱運動を激しくさせるということでもあるので、より電子の移動を妨害します。そのため温度を上げると抵抗率が大きくなり、抵抗が大きくなるということになります。

基本的に温度係数はプラスの値なのですが、半導体などではマイナスの値になるということも知っておくとよいでしょう。

抵抗についてまとめ

以上をまとめると、オームの法則における抵抗は、物質によって決まっている割合で、温度によって変化をし、物質の断面積に反比例し、長さに比例するものであるということになります。

いかがだったでしょうか。電流の3つの表し方と抵抗の定義について理解できたでしょうか。いずれもそれぞれの文字の意味と単位をしっかりと把握したうえで理解するようにしましょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

抵抗率と抵抗値

抵抗の直列つなぎと並列つなぎ

(4)電流(電磁気)の解説一覧

電流(電磁気)公式

電流の表し方は3通りあります(電流の定義、自由電子の動きと電流、オームの法則、抵抗とは何か、抵抗率についても解説しています)

回路は水路をイメージすると理解しやすくなります(キルヒホッフの第1法則、キルヒホッフ第2法則、抵抗の合成についても解説しています)

(5)参考

電流(電磁気)の解説・授業・公式・演習問題一覧

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