交流回路における抵抗・コイル・コンデンサーの考え方(なぜコイルとコンデンサーで電流と電圧の位相がズレるのか)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

交流回路における抵抗、コイル、コンデンサーの考え方を解説します。

まずはそれぞれまとめたものを確認しましょう。

交流回路における抵抗の電圧と電流

交流電源に抵抗をつなぐと、電流がI=I0sinωtのとき、電圧はV=V0sinωtとなります。

このsinの角度の部分を位相とよぶのですが、交流回路における抵抗は電圧の位相と電流の位相は等しくなります。位相が等しいとは変化の様子が同じであるということを意味しており、電流が最大のとき電圧も最大となり、電流が最小のときは電圧も最小となります。

交流回路におけるコイルの電圧と電流

続いて、交流電源にコイルを接続してみます。すると電流がI= I0sinωtのとき、電圧はV=V0sin(ωt +π/2)となります。

このときそれぞれの位相を見てみると、電圧の位相は電流の位相よりもπ/2だけ進んでいます。つまり、電圧が最大になるのは電流が最大になるのよりもπ/2早いということであり、電圧が最小になるのは電流が最小になるときよりもπ/2早いということになります。

また、この「電圧の位相は電流の位相よりもπ/2だけ進んでいる」という文の主語を「電流の位相」にしてみると、「電流の位相は電圧よりもπ/2遅れる」ということになります。電圧の方が電流よりもπ/2先にいるので、電流は電圧よりもπ/2後ろにいるということを表しています。

そもそも交流とは時間とともに大きさや向きが変化するものなので、どこを基準に取るかによって式が変わってきます。

例えば、ここに書いてある3つの式はI=I0sinωtとなるように基準をとっています。そのため電流の位相を基準として電圧の位相を考えることができます。しかし、電圧がV=V0sinωtとなるように基準をとることもできるので、以下のように電圧を基準として電流を表すこともできます。

V=V0sinωtのときI=I0sin(ωtーπ/2)

そのため交流を考えるときは電流を基準にとっているのか、電圧を基準にとっているのか注意するようにしましょう。

交流回路におけるコンデンサーの電圧と電流

それでは交流電源にコンデンサーをつないだ場合も考えてみます。電流をI=I0sinωtとしたとき、電圧はV=V0sin(ωtーπ/2)となります。

それぞれの位相を見てみると、電圧の位相は電流の位相よりもπ/2遅れています。それはすなわち、電圧を基準としてみると、電流の位相は電圧の位相よりもπ/2進んでいることになります。

まずは交流電源に抵抗を超えるコンデンサーのそれぞれを接続したとき電流と電圧がどのような関係になっているか確認しました。

交流回路における抵抗で電流と電圧の位相が同じ理由

それではなぜコイルとコンデンサーにおいて電流と電圧の位相にずれが生じるのかについて解説します。

まず交流回路における抵抗で、なぜ電流と電圧の位相が同じなのかを確認します。例えば下図のように、抵抗Rを交流電源に接続します。

先ほども確認した通り交流電源というものは、時間と共にその起電力の向きと大きさが変わります。そのためsinの関数となるのですが、時間の基準をどこにおくかによって式を変えることができます。そのため電流がI=I0sinωtとなるように時間の基準を取ります。ちなみにI0とは電流の最大値のことです。それではこのときの抵抗にかかる電圧を求めてみましょう。

I=I0sinωtのとき、抵抗にはオームの法則つまりV=RIが成り立つため、V=R・I0sinωtとなります。

そしてこの式の右辺は、sinωt=1となるとき最大となるので、電圧の最大値をV0とすると、V0=RI0となります。よってV=V0sinωtとなります。

このように抵抗はオームの法則によって電流と電圧が直接つながっているので位相にずれが生じないのです。

交流回路におけるコイルで電流と電圧の位相がずれる理由

次に交流回路におけるコイルの電流と電圧の位相がなぜずれるのか確認します。例えば下図のように交流電源に自己インダクタンスがLのコイルを接続します。

コイルの自己誘導

コイルは電流の変化に対して自己誘導という現象が起き、起電力を生じます。このとき生じた誘導起電力をEとすると、E=ーL・ΔI/Δtとなります。

詳しくはコイルの自己誘導を復習してほしいのですが、注意点としてマイナスであるということと、「電流」ではなく「電流の変化量」であるということに注意しましょう。つまりコイルというものは、電流の変化に対してその変化に反対するように起電力を生じるのです。

キルヒホッフの第2法則

そして、コイルには自己誘導によって起電力が生じるので、この閉回路においてキルヒホッフの第2法則より

V+E=0

の等式が成り立ちます。キルヒホッフの第2法則は「起電力の合計=電圧降下の合計」が成り立つという法則で、今回交流電源とコイルの2つで起電力が生じており、電圧降下を起こす装置がないので右辺は0となります。

電圧は電流の変化量に比例する

よって、この式から

V=ーE

となり、Eにコイルの自己誘導の式を代入して、

V=L・ΔI/Δt

となります。この式からわかることは、コイルを交流電源につないだとき、その電圧は電流の変化量に比例するということです。

そして電流の変化量は電流のグラフの傾きを見たら分かるので、まずI=I0sinωtのグラフを書き、その傾きを読み取ります。

例えば、原点の位置においては電流のグラフの傾きつまりΔIは最大となります。あるいは、電流が最大の位置においては電流のグラフの傾きつまりΔIは0となります。そして、Iのグラフとt軸が上から下に交わる位置の電流のグラフの傾きは右下がりなので負の値となり、ΔIは最小となります。さらに、電流が最小の位置ではΔIは0で、Iのグラフとt軸が下から上に交わる位置ではΔIは最大となります。

電圧のグラフを考える

よってVのグラフを考えてみると、t=0で最大で、電流が最大のときは0で、電流のグラフがt軸と上から下に交わる位置のときは最小で、電流が最小のときは0で、電流のグラフがt軸と下から上に交わる位置で再び最大となるので、グラフの概形は下図のようになります。

したがって周期をTとし、電流のグラフと電圧のグラフを比べてみると、電圧が最大となった1/4周期後に電流が最大となっているので、電圧は電流よりも1/4周期分進んでいるということが言えます。

それはすなわち位相がπ/2進んでいるということなので、電圧の最大値をV0とすると、

V= V0sin(ωt +π/2)

となります。

このように電流と電圧の位相がずれるのは、コイルの自己誘導によって電流と電圧が直接対応するのではなく、電圧と電流の変化量が対応するからです。つまり電流の変化量が最大のとき電圧も最大となり、電流の変化量が0のとき電圧も0となり電流の変化量が最小のとき電圧は最小となるのです。

交流回路におけるコンデンサーで電流と電圧の位相がずれる理由

次は交流回路におけるコンデンサーの電流と電圧の位相がなぜずれるのかについて確認します。

例えば下図のように交流電源に電気容量がCのコンデンサーを接続します。やはり電流をI=I0sinωtとしたときの電源の電圧を求めてみましょう。

コンデンサーの公式

まず、電圧がVのときにコンデンサーに蓄えられている電荷をQとします。するとコンデンサーの公式から

Q=CV

が成り立ちます。電気容量Cはコンデンサー自体を変えない限り変わることがないので、電荷が変化するとすれば電圧が変化します。

電流の定義

また電流の定義より

I=ΔQ/Δt

が成り立ちます。電流の定義とは「単位時間当たりの電荷の変化量」です。つまり電流は電荷の変化量と対応します。

このIとQをグラフに表すと、下図のようになります。

ΔQはQのグラフの傾きなので、Iが0のときQの傾きが0となり、Iが最大のときQの傾きが最大となり、再びIが0のときQの傾きは0となり、Iが最小のときQの傾きも最小となります。

電圧のグラフを考える

そしてVはQと対応しているので、Qが最小のときVも最小となり、Qが0のときVも0となり、Qが最大のときVも最大となります。そのためVのグラフの概形は下図のようになります。

よって、電流のグラフと電圧のグラフを比べてみると、電流のグラフが山になるのは電圧のグラフが山になるのより1/4周期早くなっています。つまり電圧は電流よりも1/4周期遅れているので、位相としてはπ/2遅れることになります。

したがって電圧の最大値をV0とすると

V= V0sin(ωt-π/2)

となります。

このようにコンデンサーも電流と電圧を直接つなぐ式がありません。電流は電荷の変化量と対応しており、電荷の変化量は電圧の変化量と対応しています。

つまり電流は電圧と対応しているのではなく、電流は電圧の変化量と対応しているということになります。そのため電流が0のときは電荷の変化量が0となり、電圧の変化量も0となります。電流が最大のときは電荷の変化量が最大であり、電圧の変化量も最大となります。電流が0のときは電荷の変化量が0であり電圧の変化量も0となりますそして電流が最小となるときは電荷の変化量が最小であり、電圧の変化量も最小となります。

これが交流回路におけるコンデンサーの電流と電圧の位相がずれる理由です。

交流回路における抵抗・コイル・コンデンサーのまとめ

いかがだったでしょうか。交流電源に抵抗をつないだ場合、電流と電圧の位相にずれが生じず、コイルやコンデンサーをつないだ場合は電流と電圧の位相にずれが生じる理由が理解できたでしょうか。最後にまとめたものを確認します。

抵抗は電流と電圧がオームの法則によって直接つながっているので位相にずれは生じません。

しかし、コイルの場合は電流と電圧は直接はつながらず、コイルの自己誘導の式によって電流の変化量と電圧が対応するため、電流と電圧の位相にずれが生じます。

そして、コンデンサーも電流と電圧は直接つながらず、まず電流の定義の式から電流は電気量の変化量と対応し、そしてコンデンサーの基本式より電気量が電圧と対応するので、電気量の変化量と電圧の変化量が対応します。つまり電流は電圧の変化量と対応するので、電流と電圧の位相にずれが生じるのです。

(3)解説授業の内容を復習しよう

ダイオードと交流回路問題演習

(4)交流と電気振動(電磁気)の解説一覧

交流と電気振動(電磁気)公式

交流回路における抵抗・コイル・コンデンサーの考え方(なぜコイルとコンデンサーで電流と電圧の位相がズレるのか)

誘導リアクタンスと容量リアクタンスを積分と微分で導く

RLC直列回路の式を三角関数の合成を使って導く(インピーダンスや遅角についても解説しています)

RLC直列回路の式をベクトルの考え方を使って導く

(5)参考

交流と電気振動(電磁気)の解説・授業・公式・演習問題一覧

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電磁気(物理基礎、物理)公式一覧

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