ダイオードと交流回路

(1)例題

図1のように、電圧の最大値がV0、周期がTの交流電源にダイオードと抵抗を接続した回路を作った。図2は点Bを基準としたときの点Aの電位の時間変化である。ただし、ダイオードは整流作用のみを持つ理想化した素子として考える。

図1

図2

①点Dを基準としたときの点Cの電位の時間変化を表す図として最も適当なものを、次(ア)~(カ)のうちから一つ選べ。

(ア)

(イ)

(ウ)

(エ)

(オ)

(カ)

②抵抗での消費電力の時間平均を求めよ。ただし、抵抗の抵抗値をRとする。

(センター試験2015年物理本試第2問Aより)

(2)例題の答案

点Bを基準とした点Aの電位をVBA、点Dを基準としたときの点Cの電位をVDCとする。

電位VBAが正になるとき(Bが低電位、Aが高電位のとき)は、交流電源は、BからAの向きの電流を流そうとする。しかし、ダイオードは、この向きの電流を流さないので、抵抗に流れる電流は0となり、CD間にかかる電圧は0となる。すなわち VDC=0

逆に、電位VBAが負になるとき(Aが低電位、Bが高電位のとき)は、交流電源は、AからBの向きに電流を流そうとする。ダイオードは、この向きの電流を流すので、ダイオードの抵抗が0であることから、ダイオードにかかる電圧は0となり、CD間に交流電源の起電力に等しい電圧がかかる。すなわち VDC=VBA

したがって、図2の点Aの電位が負の時間だけ、点Cには同じ波形の電位が現れる。よって、最も適当なのは(オ)である。

(3)解法のポイント

①ダイオードは順方向であれば電流を流し、逆方向であれば電流を流さない性質(整流作用)があります。

また、電源は、「低電位から高電位の方向へ電流を流そうとする」働きがあることが重要です。抵抗は「高電位から低電位の方向に電流が流れる」ということと間違えないようにしましょう。

※抵抗は水路、電源はポンプであると考えよう。水路であれば高いところから低いところへ水は流れるが、ポンプは低いところから高いところへ水をくみ上げる働きがある。

(4)必要な知識

①交流起電力

②抵抗を流れる交流

(5)理解すべきこと

交流回路における抵抗・コイル・コンデンサーの考え方(なぜコイルとコンデンサーで電流と電圧の位相がズレるのか)

回路は水路をイメージすると理解しやすくなります(キルヒホッフの第1法則、キルヒホッフ第2法則、抵抗の合成についても解説しています)