(1)解説授業動画
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(2)解説授業の原稿
圧平衡定数とは何か
今回は圧平衡定数の導出をします。
まずは、そもそも圧平衡定数とはどのように表されているかを確認します。
例えば以下のような反応が平衡状態にあるとき、平衡定数をKcとすると、Kcは以下のように表されます。
aA + bB ⇄ cC + dD
Kc=[C]c[D]d / [A]a[B]b =一定 (温度一定のとき)
左辺のモル濃度を分母に、右辺のモル濃度を分子として、化学反応式の係数が指数となります。これは定義でこのようになると決まっており、温度を変えない限り一定であるという化学平衡の法則が成り立ちます。
こちらの平衡定数はモル濃度を使っているので、圧平衡定数と区別して呼ぶときは濃度平衡定数と呼び、Kcと書くことが多いです。
これに対して圧平衡定数は、以下のようになります。圧平衡定数をKpとし、Pはそれぞれの分圧とすると、
Kp=PCc・PDd /PAa・PBb = 一定 (温度一定のとき)
気体はモル濃度よりも分圧の方が測定しやすいので、気体の平衡を考えるときは圧平衡定数の方が使いやすいです。
濃度平衡定数は定義で決まっており、温度が変わらないとき一定となる化学平衡の法則が成り立ちます。そのため、計算で使うことができるのですが、果たして圧平衡定数は温度が変わらないとき一定となるのでしょうか。また、圧平衡定数を計算で使ってもいいのでしょうか。
- 化学平衡の基本(化学平衡とは何か、可逆反応・不可逆反応、グラフの読み取り、平衡定数の定義、化学平衡の法則・質量作用の法則)
- 気体の平衡の計算(化学平衡の法則(平衡定数=一定)から方程式を立てる、平衡定数の求め方についても解説しています)
圧平衡定数の導出
今回は具体的な例を使って、平衡定数の定義から圧平衡定数を求めて、圧平衡定数の式が成り立ち、計算で使ってもよいことを確認してみようと思います。
濃度平衡定数を求める
それでは、窒素と水素が反応してアンモニアが生成する反応が平衡状態にあるときの濃度平衡定数を使って、この反応の圧平衡定数を求めてみようと思います。なお、今回使う文字の意味と単位は以下のようになっています。
N2+3H2 → 2NH3
n:物質量[mol]
V:容器の体積[L]
P:分圧[Pa]
R:気体定数
T:温度[K]
今回は温度を一定として考えます。
それではまず濃度平衡定数を求めてみます。
Kc=[NH3]2/[N2][H2]3 [mol/L]-2
これは定義でそのように決まっているのですが、今回は単位が残ることに注意してください。
なぜこのような単位になるのかというと、モル濃度の単位は[mol/L]で、分母は[mol/L]4となり、分子は[mol/L]2となるので、分母に[mol/L]2が残るため、単位に[mol/L]-2が残ります。
このように、単位が残るときは必ず単位を書くようにしましょう。
- 化学平衡の基本(化学平衡とは何か、可逆反応・不可逆反応、グラフの読み取り、平衡定数の定義、化学平衡の法則・質量作用の法則)
- 気体の平衡の計算(化学平衡の法則(平衡定数=一定)から方程式を立てる、平衡定数の求め方についても解説しています)
濃度平衡定数を圧平衡定数へ変換する
そして、
(モル濃度)=(物質量)/(容器の体積)
なので、それぞれ以下のように書くことができます。
Kc=(nNH3/V)2 / (nN2/V)(nH2/V)3
今回1つの容器にこれらの気体をすべて入れると考えます。そのため分母はすべてVとなります。
そして、理想気体の状態方程式PV=nRTより
n/V=P/RT
となるので、n/VをすべてP/RTに変えていきます。すると以下のようになります。
Kc=(PNH3/RT)2 / (PN2/RT)(PH2/RT)3
次に、RTをくくりだしていきます。分子の(PNH3/RT)2は(PNH3)2・(RT)-2とすることができ、分母も同様にすると以下のようになります。
Kc=(PNH3)2・(RT)-2 / PN2PH2・(RT)-4
そして、(RT)-2/(RT)-4=(RT)2となります。
これで、右辺に圧平衡定数の形ができたので、圧平衡定数の形以外の部分を左辺に持っていきます。
Kc/(RT)2=(PNH3)2 / PN2PH2
ここで、Kcつまり濃度平衡定数は定数であり、Rつまり気体定数も定数であり、今回Tは一定なので、これを全部まとめて一つの定数として、それをKpとおくと、この式は
Kp=(PNH3)2/PN2・(PH2)3 [(Pa)-2]
となります。これで濃度平衡定数の定義から圧平衡定数を求めることができました。
やはり単位が残るので、必ず単位を書くようにしましょう。今回分圧の単位は[Pa]なので、分母が[(Pa)4]となり、分子が[(Pa)2]となります。したがって[(Pa)-2]という単位が残ります。
このように圧平衡定数は濃度平衡定数と気体定数と温度を組み合わせたものなので、温度を変えない限り一定となります。したがって、(圧平衡定数)=(一定)を気体の平衡の計算に使ってもよいということが分かりました。
いかがだったでしょうか。最初にもお伝えした通り、気体はモル濃度よりも分圧の方が測定しやすいです。そのため気体の平衡の計算をするのであれば、圧平衡定数の方が使いやすいということも知っておきましょう。
(3)解説授業の内容を復習しよう
(4)気体の平衡の解説一覧
①化学平衡の基本(化学平衡とは何か、可逆反応・不可逆反応、グラフの読み取り、平衡定数の定義、化学平衡の法則・質量作用の法則)
②平衡移動(ルシャトリエの原理)の解説(アルゴンを加える問題、二酸化窒素と四酸化二窒素の平衡の色の変化についても解説しています)
③気体の平衡の計算(化学平衡の法則(平衡定数=一定)から方程式を立てる、平衡定数の求め方についても解説しています)
④圧平衡定数の導出(濃度平衡定数・圧平衡定数とは何か、平衡定数の単位についても解説しています)
⑤圧平衡定数の計算の解説(気体の平衡を考えるために必要なものについても解説しています)
⑥ハーバー・ボッシュ法の解説(なぜ高温高圧で行うのか、なぜ人類にとって重要なのか)
(5)参考
☆化学の解説動画・授業動画一覧(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)
☆化学知識一覧(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)
☆化学知識テスト一覧(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)
☆化学の解説・授業・知識・演習問題一覧(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)
☆化学の語呂合わせ(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)
「化学計算の王道」シリーズは『思考訓練の場としての体系化学』(GHS予備校)を参考にしています。
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