気体の平衡の計算(化学平衡の法則(平衡定数=一定)から方程式を立てる、平衡定数の求め方についても解説しています)【化学計算の王道】

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(2)解説授業の原稿

今回は気体の平衡の計算の基本的な考え方について解説します。

なお、化学平衡とは何かについて理解できている前提で話を進めていきます。もし理解が不十分な場合は、そちらの解説をまずご覧になってください。

気体の平衡の計算の基本的な方針

それでは、気体の平衡の計算の基本的な方針について解説します。

気体に限らず平衡状態にあるものは、「温度を変えない限り平衡定数が一定になる」という化学平衡の法則が成り立ちます。

そのため、気体の平衡の計算の基本的な方針は、この関係を使って方程式を立てるという方針になります。

問題①:平衡定数を求める

それでは実際に問題で試してみましょう。まずは、以下の問題を解きます。

448℃で1.0Lの容器に水素とヨウ素を0.5molずつ入れ、H2+I2 ⇆ 2HI の平衡状態に到達させたところ、ヨウ化水素が0.78mol存在していた。では、そのときの平衡定数を求めてみましょう。ただし整数で答えます。

平衡定数の式を確認する

まずは今回求める平衡定数がどのような式になるかを確認します。

今回の、水素とヨウ素が反応してヨウ化水素が生成する反応における平衡定数は以下のようになります。

K=[HI]2/[H2][I2]

左辺のモル濃度を分母に、右辺のモル濃度を分子にします。そして、化学反応式の係数が次数になります。これは定義でこのように決まっているので、平衡定数は必ずこの式で求めます。

変化量を文字で置く

そして、この式に代入するモル濃度は平衡状態に到達させた後のモル濃度でないといけないので、この平衡前の0.5を代入してはいけません。

平衡後のヨウ化水素の物質量がわかっているので、あとは平衡後の水素とヨウ素の物質量を求めないといけません。そのため、平衡後の水素とヨウ素の物質量を求めるために、水素あるいはヨウ素の変化量を文字で置いて式を作っていきます。

平衡後の水素やヨウ素の物質量を文字で置いてもいいのですが、平衡の計算をするときは、反応量を文字で置いた方が計算しやすくなることが多いです。

反応前・変化量・反応後の表を作る

そして、文字で置いたら次は反応前・変化量・反応後の表を作ります。

この表は、平衡に限らず未反応のものが出てくる反応を考えるときは、必ず作るようにしましょう。また、慣れてきたら、変化量の行は省略してもかまいません。

それでは表を確認していきます。

まず平衡前は水素とヨウ素が0.5molずつ入っていたので、水素とヨウ素が0.5で、まだ反応前なのでヨウ化水素は0molです。

そして変化量ですが、今回「x mol反応した」としているので、水素はx mol減少します。化学反応式の係数を見ると1:1:2なので、それぞれの変化量が1:1:2になるようにします。あとは左辺は減少して、右辺は増加しているので-xと+2xとします。

そして、平衡後は平衡前と変化量を足したものを書きます。

今回、平衡後のヨウ化水素の物質量が0.78molなので、2x=0.78となり、x=0.39となるので、0.5-xに代入すると、平衡後の水素とヨウ素の物質量は0.11molとなります。

これで平衡定数を求めるのに必要な量が出たので、あとは平衡定数の式に代入して、平衡定数を求めていきます。

平衡定数を求める

それでは、求める平衡定数をKとおき、先ほど求めた値を代入して平衡定数を求めていきます。

まずは、分母は水素のモル濃度なので、水素の物質量0.11molを容器の体積1.0Lで割ります。ヨウ素のモル濃度も同様です。次に、分子はヨウ化水素のモル濃度の2乗なので、平衡後のヨウ化水素の物質量0.78molを容器の体積1.0Lで割って2乗します。

ここで注意したいのが、体積も必ず式に書くということです。今回は1なので計算上はなくても問題ありませんが、これがなければ式の意味が変わってきてしまいますし、なにより体積が1じゃないときに書き忘れるというミスを防ぐことができます。

工夫しながら計算する

それではこの式を計算していきます。

計算をするときのポイントとして、小数のままだと計算しにくいので、0.78は78×10ー2、0.11は11×102として計算をします。

分子は78×102を2乗するので782×10-4となり、分母は11×102をやはり2乗するので112×104となります。

あとは約分をして計算をすると、50.3……となるので整数となるように四捨五入をして、答えは50となります。

ここで注意したいのが、今回は平衡定数に単位を書きません。

なぜ単位がないのかというと、今回の平衡定数の式において、分母の単位はmol/Lの2乗で、分子の単位もmol/Lの2乗なので、約分されて単位が消えるからです。次数によっては単位が残ることもあるので、その場合は単位を書くのを忘れないようにしましょう。

問題②:平衡に達した後の物質量を求める

それでは次は、以下の問題を解きます。この問題は先ほどの問題の続きと考えてください。

448℃で1.0Lの容器に水素を1.0mol、ヨウ素を2.0mol入れH2+I2 ⇆ 2HIの平衡状態に到達させたとき、ヨウ化水素は何mol存在するか求めてみましょう。なお平衡定数は先ほど求めた50としてよく、√41は6.4とし、有効数字は2桁で答えます。

平衡定数を使って方程式を立てる

まず最初のポイントは、先ほどとは最初に入れる水素とヨウ素の物質量が違いますが、平衡定数は先ほどと同じになるということです。

なぜなら化学平衡の法則により、温度を変えない限り、反応物の量を変化させても平衡定数は変わらないからです。そのため、この問題の答案の方針は、求めるものを文字でおき、今回の平衡後のモル濃度を使って平衡定数の式を作り、=50の方程式にするという方針になります。

文字で置いて、反応前・変化量・反応後の表を作る

それでは答案を作っていきます。

まずは求める平衡後のヨウ化水素の物質量を文字でおきます。このときのポイントは、平衡後のヨウ化水素の物質量を2xとおくことです。xとおいてもいいのですが、2xとおいた方が計算が楽になります。なぜそうなるかは後で解説します。

そして次に、平衡状態は未反応のものがあるので、反応前・変化量・反応後の表を作っていきます。

まずは反応前です。反応前の水素の物質量とヨウ素の物質量を書き、ヨウ化水素はまだ生成していないので0とします。

そして変化量です。平衡後のヨウ化水素の物質量を2xとおいたので、平衡後が2xとなるようにヨウ化水素の変化量は+2xとなります。すると化学反応式の係数の比が1:1:2なので、変化量の比も1:1:2となり、水素とヨウ素の変化量はともに-xとなります。

これが平衡後のヨウ化水素の物質量を2xとおいた理由です。ここでxとおいていれば、水素とヨウ素の変化量が-x/2となってしまい、少し計算が面倒になります。そこで2xとおくことで、xの係数が整数となり計算が楽になるのです。

したがって、平衡後の物質量は平衡前の物質量と変化量を足して、このようになります。

方程式を立てる

これで平衡後の物質量が出たので、平衡定数の定義の式に代入します。モル濃度なので体積で割るのを忘れないようにしましょう。

そして今回の平衡定数は、温度を変えていないので、先ほどと同じ50となり、この方程式が成り立ちます。

あとはこの方程式を解いてxを求め、求めるヨウ化水素の物質量は2xなので2xを求めます。

二次方程式を解く(解の公式の利用)

それでは、この方程式を解いていきます。

まずはこの分母の1を消し、左辺の分母を両辺にかけます。そして方程式を整理します。方程式は両辺を割ることで簡単にできるときは、必ず簡単にしておきましょう。今回は両辺を2で割ることができるので、両辺を2で割ります。

気体の平衡の計算の場合は、このように二次方程式になることもあるということは知っておきましょう。

そして、この左辺は因数分解できそうにないので、この二次方程式を解くために二次方程式の解の公式を使います。

ルートの中をそのまま計算するのではなく、ルートの中からくくり出せるだけくくり出していきます。今回752が5×152であり、50が55×2であることに気付けば、ルートの中から5をくくり出すことができます。

そして、くくり出せるだけくくり出したら、あとはルートの中を計算して、√41は6.4として計算すると、この二次方程式の解は107/46と43/46となります。

ここで、この2つともを答えとしてはいけません。化学の計算に限らず、二次方程式の解が2つ出た場合は、それぞれ適しているかを確認しないといけません。

そこで、このxの条件を確認します。今回はこの1.0-x に注目します。この1.0-xは水素の物質量です。そのため物質量が負になることがないので、1.0-xは0より大きくなります。ちなみに、平衡状態になるので0になることもありません。

以上より水素の物質量が1.0-x molなのでそれが負になることはなく、かつ平衡状態となるので0になることもなく、0<x<1となります。

よって、この範囲を満たしているx=43/46が、この二次方程式の解となります。

ここでこの43/46を割り算しないように注意しましょう。求めるものは2xなので、2x =43/23としてから割り算をして、有効数字が2桁になるように四捨五入をして、答えは1.9molとなります。

いかがだったでしょうか。気体の平衡の計算の基本的な流れが理解きたでしょうか。温度を変えない限り平衡定数が一定であり、それを使って方程式を立てるという計算の方針は、気体以外の平衡の計算でも使う方針となるので必ずマスターしておいてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

気体の平衡の計算

化学平衡(理論化学)知識テスト

(4)気体の平衡の解説一覧

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(5)参考

化学平衡(理論化学)の解説・授業・知識・演習問題一覧

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化学計算の王道(化学基礎・理論化学)

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化学の語呂合わせ(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)

化学学習に必要な参考書・問題集


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