圧平衡定数の計算の解説(気体の平衡を考えるために必要なものについても解説しています)【化学計算の王道】

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

今回は圧平衡定数の計算問題について解説します。

なお、圧平衡定数とは何かについてや、化学平衡の基本的な考え方などについては別の動画で解説しているので、そちらもご覧になってください。

問題①:反応の進行度αを求める

それでは早速問題を確認していきます。

2.0molの二酸化硫黄と1.0molの酸素を混合すると、以下の反応が進行し、平衡に達します。
2SO2 + O2 ⇄ 2SO3
反応の前後で温度と体積は一定であるとし、平衡前、つまり反応する前の全圧は1.0×10Paであったとし、平衡に達した後の全圧は0.8×10Paでした。このとき、進行度(最初の酸素の量に対する平衡に達するまでのあいだ消費された酸素の反応量の割合)をαとしたものと、圧平衡定数Kpを求めてみましょう。

それでは進行度αを求めていきます。

反応前、変化量、反応後の表を作る

平衡は未反応のものがある反応なので、この反応前、変化量、反応後の表を作ります。

まず反応前の物質量は二酸化硫黄が2.0mol、酸素が1.0molで、まだ反応前なので三酸化硫黄は0molです。

次に変化量ですが、これはαを使って表します。

進行度とは要するに、この反応がどのくらいの割合右に進行したかを表しており、例えば進行度が0.8の場合、80%右に進行したということなので、もともとあった酸素の1.0molのうち0.8molを反応で消費したということであり、例えば進行度が0.3の場合はもともとあった酸素の1.0molのうち0.3molを反応で消費するということになります。

よって、進行度がαの場合は減少量はもともとあった酸素の1.0molにαをかけたものになるので、この変化量は-1.0αとなります。

そして酸素の変化量が決まったら、化学反応式の係数を見て、比が2:1:2なので、変化量の比も2:1:2となり、左辺は消費されるので、マイナスとなり、右辺は生成するのでプラスとなります。

そして、反応後は反応前と変化量を足したものになるので、平衡に達した後の二酸化硫黄の物質量は2.0(1-α)となり、酸素の物質量は1.0(1-α)となり、三酸化硫黄の物質量は2.0αとなります。

そしてここでポイントとなるのが、この問題の場合は、この表に合計の欄を作ることです。変化前の気体分子の総物質量は2.0+1.0+0=3.0molとなり、平衡に達した後の気体分子の総物質量は、3.0-αとなります。

なぜ合計の物質量を求める必要があるのかというと、今回は平衡前と平衡後の全圧を使わないといけないからです。全圧は混合気体の全圧ということなので、必要な物質量は混合気体の物質量となります。そのため気体分子の総物質量が必要となるわけです。

反応前と反応後の状態方程式を連立する

これで反応前と反応後の混合気体の物質量が分かったので、全圧を使って反応前後の理想気体の状態方程式を立てます。

今回の容器の体積をV[L]とし、気体定数をRとし、温度をT[K]とすると、反応前後の状態方程式は上図のようになります。物質量の部分がそれぞれ、成分気体の物質量の合計になっていることに注意してください。

ここまで式を作ることができれば、後はこの2つの方程式を連立させてαを求めることができます。

これらのように、同じ形の方程式を連立させるときは、辺々を割ると計算しやすくなるということは知っておきましょう。辺々を割るとは、『(左辺どうしを割ったもの)=(右辺どうしを割ったもの)』のように計算することです。イメージで言えば、2つの式の間に分数の線を入れるイメージです。

すると、どんどん約分されていって式がとても簡単になります。あとは両辺の分母をはらって、αを求めると答えはα=0.6となります。

この混合気体の考え方や理想気体の状態方程式を使った計算の進め方などが怪しい場合は気体の単元の復習もしておいてください。

問題②:圧平衡定数を求める

答案の方針

ここで先に次の問題の答案の方針を確認しておきます。

次の問題は圧平衡定数を求める問題です。今回の圧平衡定数は、

Kp=PSO32 / PSO22・PO2

となります。そのためこれを求めるためには、平衡に達した後のこれらの気体の分圧を求めないといけません。

しかし、今回問題で与えられているのは全圧だけです。そこで、「物質量の比=分圧の比」という関係を使って、それぞれの気体の平衡に達した後の分圧を求めていきます。

したがって、今求めた進行度αを代入して平衡に達した後のそれぞれの気体の物質量を求めておきます。ちなみに平衡に達した後の混合気体の総物質量も使います。

それぞれの分圧から圧平衡定数の式を立てる

それでは圧平衡定数を求めていきます。

先ほども確認した通り、進行度αが出たので、平衡に達した後のそれぞれの物質量が分かります。二酸化硫黄は0.8mol、酸素が0.4mol、三酸化硫黄は1.2molです。そしてこれらの合計(つまり混合気体の総物質量)は2.4molとなります。

よって、これらの分圧をそれぞれPSO2, PO2, PSO3とすると、物質量の比が分圧の比となるので、それぞれの分圧は以下のように表されます。

二酸化硫黄の分圧であれば、全圧に「(二酸化硫黄の物質量) / (全体の物質量)」をかけることで求めることができます。酸素と三酸化硫黄の分圧も同様に求めることができます。

したがって圧平衡定数は

Kp = PSO32 / PSO22・PO2

となるので、この式に今求めた分圧を代入して計算することで、今回の反応の圧平衡定数を求めることができます。

計算を工夫する

それではこの式を計算していきます。今回もなるべく工夫をして正確にかつ楽に計算するようにしましょう。

まずは簡単に約分できるところは約分してしまい、「(分数)/(分数)」となっているので、分母と分子にそれぞれ振り分けていきます。

まず分母は、0.82×(105)2×0.8×105=0.82×1010×0.8×105、そして分子に(1/2)2があるので、分母にさらに22をかけます。次に分子は、0.82×(105)2=1010に、分母に(1/3)2があるので、32をかけ、さらに分母に1/6があるので、分子に6をかけます。

このように、「(分数)/(分数)」となっているときは分母と分子に振り分けていくことで計算しやすくなります。

あとは約分をしていき、残ったものを書き、分母と分子の掛け算をして、割り算を最後にして、有効数字が2桁になるように四捨五入をして、答えは1.7×10-4 [Pa]-1となります。

注意点として、平衡定数や圧平衡定数は単位が残ることがあるので、単位が残った場合は必ず書くようにしましょう。今回は分母が[Pa]2・[Pa]で[Pa]3となり、分子は[Pa]2なので[Pa]-1という単位が残ります。[Pa]-1は[1/Pa]と書いても構いません。

気体の平衡を考えるときに必要なもの

いかがだったでしょうか。圧平衡定数の計算問題の解法が理解できたでしょうか。

今回の問題は、さらにもう一つ重要なポイントがあります。

それは、今回の問題文で与えられている条件は、反応を起こす前の気体の物質量と反応前後の全圧だけです。

つまり、混合気体を入れた容器の圧力計だけを見ておけば、平衡に達した後の物質量や分圧が分かり、平衡定数を求めることもできるということになります。

気体を混合してしまうと、その成分気体の分圧を測定することは非常に困難です。しかし、初期条件と全圧の情報さえあれば、今回やったように計算で物質量や分圧を求めることができます。

「気体の平衡を考えるうえで必要なものは、初期条件と平衡前後の全圧だけである」ということは知っておいてもよいでしょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

気体の平衡の計算

化学平衡(理論化学)知識テスト

(4)気体の平衡の解説一覧

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(5)参考

化学平衡(理論化学)の解説・授業・知識・演習問題一覧

理論化学の解説動画・授業動画一覧

理論化学知識一覧

化学計算の王道(化学基礎・理論化学)

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化学の語呂合わせ(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)

化学学習に必要な参考書・問題集


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