接続助詞「ば・を・に・が・ど・ども・と・とも・て・して・で・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」の接続と意味(「ば」の訳し分けについても例文を使って解説しています)【古文文法のすべて】

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接続助詞は、何接続か、どのような意味になるか、この2点を覚えましょう

接続助詞「ば」

接続助詞の「ば」は接続が2種類あり、どの接続をするかによって意味が異なります。

未然形接続の「ば」(順接仮定条件)

まずは未然形接続、つまり「ば」の上が未然形のときは順接仮定条件と言って、「もし~ならば」と訳します。この順接仮定条件の「ば」は、反実仮想の構文の条件節で使う接続助詞です。

已然形接続の「ば」(順接確定条件)

続いて、已然形接続、つまり「ば」の上が已然形になっているときは、「ば」は順接確定条件となります。

この順接確定条件は、訳し方が3通りあります。

まず1つ目は「~なので」と訳す理由です。そして2つ目は「~したところ」や「~すると」と訳す偶然条件です。そして3つ目は、「~するといつも」や「~すると必ず」と訳す恒常条件です。

「已然形+ば」のときは、この3つを訳し分けないといけません。

ただ、文章中で「已然形+ば」が出たときは、ほとんどが理由か偶然条件になっています。

なので、現代語訳の問題でない限りは、基本的にこの2つで訳すようにしておけば問題ありません。ただし、「已然形+ば」を含む文の現代語訳を問われた場合は、恒常条件の可能性も忘れないようにしましょう。

接続助詞「を」「に」

接続助詞の「を」と「に」は、連体形接続となり、意味が3つあります。

「~なので」と訳す順接、「~なのに」と訳す逆接、「~したところ」と訳す単純な接続、この3つの意味があります。つまり、「を」と「に」は、前後の文脈に関わらず使うことのできる便利な接続助詞ということになります。

接続助詞「が」

接続助詞の「が」も連体形接続ですが、意味は逆接と単純接続の2つで、順接の意味はありません。

接続助詞「ど」「ども」

接続助詞の「ど」「ども」は已然形接続となります。

そして、意味は「~だけれども」と訳す逆接確定条件となります。

前後で主語が変わりやすい接続助詞

また、ここまでで出てきた接続助詞で知っておきたいのは、「を」「に」「が」「ど」「ば」の接続助詞の前後では、主語が変わりやすいということは知っておきましょう。

これは必ず主語が変わっているというわけではないのですが、これらの接続助詞は、主体を判別するときに重要な手掛かりとなります。

接続助詞「と」「とも」

接続助詞の「と」「とも」は、終止形接続で、「たとえ~しても」と訳す逆接仮定条件となります。

接続助詞「て」「して」

接続助詞の「て」「して」は連用形接続で、「を」や「に」と同様に、単純な接続(~て)、順接(~ので)、逆接(~のに)の3つの意味を持っています。

接続助詞「で」

接続助詞の「で」ですが、これはもともと「ずて」が変化した接続助詞であるということを知っておきましょう。

もともとは打消の助動詞「ず」であるので、接続は未然形接続であり、意味は「~しないで」という打消しの接続となります。

前後で主語が変わりにくい接続助詞

また、先ほど出てきた「て」と、この「で」は、前後で主語が変わりにくいということを知っておきましょう。

「を」「に」「が」「ど」「ば」は主語が変わりやすく、「て」「で」は主語が変わりにくい、この2つはともに主体の判別に利用できます。

接続助詞「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」

接続助詞の「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の4つの接続助詞は「もの」とついていることから分かるように、連体形接続となります。

そして意味は、「~だけれども」や「~なのに」と訳す、逆接確定条件となります。

例文を使って確認しよう

それでは、接続助詞「ば」の例文をいくつか確認します。

接続助詞「ば」は2種類の接続があります。

順接確定条件の接続助詞「ば」(已然形接続)

已然形接続(「ば」の上が已然形)であれば、順接確定条件の接続助詞「ば」となります。

順接確定条件には3つの訳し方があります。

「~だから」「~なので」と訳す原因、「~すると」「~したところ」と訳す偶然条件、そして、「~すると必ず」「~するといつも」と訳す恒常条件、この3つの意味があります。

順接仮定条件の接続助詞「ば」(未然形接続)

また、未然形接続(「ば」の上が未然形)になる場は、順接仮定条件の接続助詞「ば」となります。

順接仮定条件の接続助詞「ば」は「もし~ならば」と訳します。

以上をふまえて、以下の4つの例文を見ていきます。

①天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも(大空をはるか遠くに仰ぎ見ると、春日にある三笠の山に出ていた月(と同じ月)だなあ。)

まずは、この例文です。

この「ば」の上は「見れ」となっており、「見れ」は上一段活用動詞「見る」の已然形なので、この「ば」は順接確定条件の接続助詞「ば」であると分かります。

あとは文脈によって原因か偶然条件か恒常条件かを判断し、現代語訳していきます。今回は偶然条件で訳します。

したがって、この文を現代語訳してみると「大空をはるか遠くに仰ぎ見ると、春日にある三笠の山に出ていた月(と同じ月)だなあ。」といったような現代語訳になります。

ちなみに、「天の原」は「大空」という意味で、「ふりさけ見る」は「はるか遠くに仰ぎ見る」という意味です。

また、この「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形ですが、今回は場所を表す単語の下についているので、「~にある」と訳す存在の意味になっています。

さらに、この「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、文末の「かも」は詠嘆を表す終助詞です。

②散ればこそいとど桜はめでたけれ。(散るからこそ、いっそう桜はすばらしい。)

次にこの例文です。

この「ば」の上は「散れ」となっていますが、「散れ」は四段動詞「散る」の已然形なので、この「ば」は順接確定条件となります。今回は文脈から原因で訳します。

よって、この文を現代語訳してみると「散るからこそ、いっそう桜はすばらしい。」といったような意味になります。

ちなみに、「いとど」は「いっそう」という意味の重要単語で、「めでたし」は「めでたい」という意味ではなく「すばらしい」という意味の形容詞で、今回は文中に係助詞「こそ」があるので係り結びの法則により、「めでたけれ」と已然形となっています。

③いつはりのなき世なりせばいかばかり人の言の葉うれしからまし(もし偽りのない世であったならば、どれほど人の言葉がうれしいだろうか。)

次に、この例文です。

この「ば」の上は「せ」となっており、この「せ」は過去の助動詞「き」の已然形なので、この「ば」は順接仮定条件の接続助詞「ば」となります。

順接仮定条件は「もし~ならば」と訳します。

よって、この文を現代語訳してみると「もし偽りのない世であったならば、どれほど人の言葉がうれしいだろうか。」といったような意味になります。

この文の重要なポイントは「~せば……まし」の反実仮想の構文が使われていることです。

反実仮想の構文は「~ましかば……まし」「~ませば……まし」「~せば……まし」「~未然形+ば……まし」の4つがあり、この構文になっていれば「まし」は反実仮想の意味になります。

過去の助動詞「き」の未然形「せ」は、この「~せば……まし」の構文でしか使わない活用であるということは知っておいてもよいでしょう。

さらに、この「なり」は断定の助動詞「なり」の連用形なので、現代語訳に「~である」を入れるようにしましょう。

④念仏すれば、往生す。(念仏をすれば必ず、極楽浄土に生まれ変わることができる。)

最後にこの例文です

この例文の「ば」の上は「すれ」となっており、「すれ」はサ変動詞「す」の已然形なので、この「ば」は順接確定条件の接続助詞「ば」となります。

今回は文脈から、仏教の真理を言っていると判断して、この「ば」は順接確定条件の訳し方のうちで、恒常条件で訳すのがよいと思います。

よって、この文を現代語訳してみると「念仏をすれば必ず、極楽浄土に生まれ変わることができる。」といったような意味になります。

このように接続助詞「ば」は、まず接続を見て、順接確定条件か順接仮定条件か判断し、順接確定条件の場合は3つの意味から訳し分けていきましょう。

ただ、順接確定条件の場合はほとんどが原因か偶然条件で、恒常条件になることはあまりないということは知っておきましょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

接続助詞の確認テスト(問題と答え)

(4)助詞(古文)の解説授業一覧

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(5)参考

接続助詞「ば・を・に・が・と・とも・ど・ども・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」の意味・接続・用法

接続助詞「ば・を・に・が・と・とも・ど・ども・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」の解説・テスト一覧

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