係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も」の用法と係助詞を使った表現(係り結びの法則、結びの省略、結びの消去(消滅、流れ)についても解説しています)【古文文法のすべて】

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7種類の係助詞

係助詞は、「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」「は」「も」の7種類あります。

「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」までは覚えている方も多いかと思いますが、係助詞の「は」「も」も覚えるようにしましょう。

係り結びの法則

まず、係助詞と言えばやはり、係り結びです。

「ぞ」「なむ」「や」「か」は連体形結びとなり、「こそ」は已然形結びとなります。そして、「は」「も」は係り結びの結びの変化を起こしません。

係助詞の意味

また、「や」と「か」には疑問(~か)と反語(~か、いや~ない)の意味があることは必ず覚えておきましょう。

その他の係助詞つまり「ぞ」「なむ」「こそ」「は」「も」は、そのまま訳してみて変でなければ現代語訳に入れて、そのまま訳してみると現代語訳が不自然になる場合は訳さないようにしましょう。

結びの省略

また、係り結びに関して、重要な文法事項があります。それは、結びの省略という文法事項です。

これは、結び(文末)の部分が「あり」や「あらむ」などの場合は、省略されることがあるという文法です。

例えば、文末が「にや」の形になっていた場合は、「や」の下に「ある」や「あらむ」などが省略されており、文末が「にこそ」になっている場合は、「こそ」の下に「あれ」や「あらめ」などが省略されています。

この場合、省略されてはいますが、下に「あり」があるので、この「に」は断定の助動詞「なり」の連用形となり、「にや」は「~であろうか(疑問)」あるいは「~であろうか、いや、~ない(反語)」と訳し、「にこそ」は「~である」と訳します。

係助詞を使った重要表現

続いて、係助詞を使った重要表現を確認します。

「やは」「かは」

まずは、「やは」「かは」です。これは、係助詞の「や」と係助詞の「は」、あるいは係助詞の「か」と係助詞の「は」を組み合わせた表現です。

意味は、反語になります。つまり、疑問と反語の「や」と「か」に「は」を組み合わせることで、疑問の意味はなくなり、反語の意味だけになります。

「ぞかし」

続いて、「ぞかし」です。これは、係助詞の「ぞ」が念押しの終助詞「かし」にくっついた表現です。

「かし」だけでも念押しの意味はあるのですが、「ぞ」がくっつくことで、感動を伴った念押しとなり「~であるよ」といったように訳します。

※「ぞ」は終助詞であるとする説もある。

「もぞ」「もこそ」

次に、「もぞ」「もこそ」です。これは係助詞の「も」に係助詞の「ぞ」がくっついていたり、係助詞の「も」に係助詞の「こそ」がくっついていたりする表現です。

意味としては、「~したら困る」や「~したら大変だ」といったように訳します。

文中の「……こそ~已然形、」

最後に、「……こそ~已然形、」の係り結びのかたまりが文末ではなく文中にあるときは、「~だけれども」といった逆接の意味になるということは知っておきましょう。

よく、「……ばこそ~め、」の形で出てきます。この「……ばこそ~め、」を訳してみると、「ば」が順接仮定条件の接続助詞なので、「……ならば~だろうけど(推量)」あるいは「……ならば~したらよいけど(適当)」といったように訳します。

係り結びの法則を例文で確認しよう

それでは、係り結びの法則の例文を確認します。

まずは、①~③の文末を適切な形に変えてみます。

①雪なむ〔あはれなり〕。→あはれなる(連体形)

①は文中に係助詞の「なむ」があるので、文末の形容動詞「あはれなり」は連体形の「あはれなる」に変化します。

②今や〔別る〕。→別るる(連体形)

次に、この文は文中に係助詞の「や」があるので、文末の下二段動詞「別る」は連体形の「別るる」に変化します。

③月見れば千々にものこそ〔悲し〕。→悲しけれ(已然形)

次にこの文であれば、文中に係助詞の「こそ」があるので、文末の形容詞「悲し」は、已然形の「悲しけれ」に変化します。

①③の現代語訳

まずは、①「雪なむあはれなる。」を現代語訳してみると、「雪がしみじみと趣深い。」といったような意味です。

③「月見れば千々にものこそ悲しけれ。」を現代語訳してみると、「月を見ると、あれこれ物事が悲しく思われる。」といったような意味になります。

①③の現代語訳のように、「ぞ」「なむ」「こそ」は不自然であれば現代語訳する必要はありません。

②の現代語訳

それに対して、「や」「か」は疑問(~か)と反語(~か、いや、~ない)の意味があるので、必ず現代語訳するようにしましょう。

例えば、②「今や別るる。」を疑問で訳してみると、「今は別れるだろうか。」という意味になり、反語で訳してみると、「今は別れるだろうか、いや、別れない。」といったような現代語訳になります。

疑問で訳すのか、反語で訳すのかは文脈で判断します。

④悲しきことも多くなむ。(悲しいことも多くある。)

続いてこの文を現代語訳してみます。

「悲しきことも多くなむ。」の現代語訳は、「悲しいことも多くある。」といったような訳になります。

ポイントは、文末が係助詞の「なむ」になっていることです。

このように文末が係助詞になっている場合は、その下に「あり」や「あらむ」が省略されていると判断します。そのため現代語訳に「ある」や「あるだろう」を補います。

このように、係り結びの結び(文末)の部分が省略されていることを「結びの省略」と言います。

省略されているものは文脈によって判断しますが、「あり」や「あらむ」が省略されていることが多いです。

⑤ひが耳にや。(聞き間違いであろうか。)(聞き間違いであろうか、いや、聞き間違いではない。)

続いて、こちらの例文も文末が係助詞「や」になっているので、結びの省略が起きていると判断し、「あり」や「あらむ」を補って現代語訳します。

また、「にや」のように「に+係助詞」が文末に来て結びの省略が起きていることが多いのですが、この場合の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形になります。

断定の助動詞「なり」の連用形の「に」は、下にラ変動詞「あり」を伴うという特徴があります。

そのため、「に+係助詞」で文末になっているときは、後ろに「あり」が省略されているので、この「に」は断定の助動詞「なり」の連用形と判断することができます。

よって、文末の「に+係助詞」を現代語訳するときは、「に」が断定の助動詞「なり」であると分かるように、「~である」を現代語訳に入れるようにしましょう。

例えば、⑤を現代語訳してみると、「聞き間違いであろうか。(疑問)」あるいは「聞き間違いであろうか、いや、聞き間違いではない。(反語)」といったような訳になります。ちなみに、「ひが耳」は「聞き間違い」という意味の古文単語です。

⑥花ぞ散りければよめる歌(花が散ったので詠んだ歌)

最後にこの例文を確認してみます。

⑥を現代語訳してみると、「花が散ったので詠んだ歌」となりますが、この文のポイントは、文中に係助詞の「ぞ」があるの、それに対応する助動詞の「けり」が連体形の「ける」になっていないということです。

なぜ「けり」が連体形の「ける」になっていないのかというと、下に接続助詞の「ば」があるからです。今回の「ば」は已然形接続の接続助詞で、その上の「けり」は「ば」に合わせて、已然形の「けれ」になっているのです。

このように、係り結びの結びのすぐ後ろに接続助詞が来て文が続いていく場合は、係り結びの法則による活用形の変化をするのではなく、接続助詞の接続による活用形の変化をするというルールのことを、結びの消去(結びの消滅、結びの流れ)と言います。

以上のように、係り結びの法則は文末の活用形の変化だけでなく、結びの省略や結びの消去といったようなルールもあるので注意しましょう。

係助詞を使った表現を例文で確認しよう

それでは、係助詞を使った表現をいくつか例文を使って確認します。

①我やは花にふれたる。(私は花に触れているだろうか、いや、触れてはいない。)

まずは、この例文です。

「やは」は係助詞「や」に係助詞「は」がくっついた表現で、反語(~か、いや、~ない)の意味になります。

係助詞「や」は疑問(~か)と反語(~か、いや、~ない)の2つの意味がありますが、係助詞「は」が付いたときは、必ず反語の意味になります。

そのため、この文を現代語訳してみると「私は花に触れているだろうか、いや、触れてはいない。」となります。

ちなみに、「かは」も同様に必ず反語の意味になります。

②げにさることぞかし。(本当にもっともなことであるよ。)

続いてこの例文です。

文末の「ぞかし」は係助詞「ぞ」に終助詞「かし」が付いた表現で、感動を伴った念押しの意味になります。現代語訳するときは「~であるよ」と訳します。

そのため、②を現代語訳してみると「本当にもっともなことであるよ。」といったような意味になります。ちなみに、「げに」は「本当に」「まったく」といったような意味の古文単語で、「さること」は「そのようなこと」「もっともなこと」といったような意味の表現です。

③袖の濡れもこそすれ。((涙で)袖がぬれたりしたら困る。)

次にこの例文です。

この「もこそ」は、係助詞「も」に係助詞「こそ」が付いた表現で、「~したら困る」「~したら大変だ」といったような意味の表現です。

よって、この文を訳してみると「(涙で)袖がぬれたりしたら困る。」といったような意味になります。

係助詞「こそ」があるので係り結びの法則により、文末のサ変動詞「す」が已然形の「すれ」になっていることに注意しましょう。

ちなみに、「もぞ」も「~したら困る」「~したら大変だ」といったような意味の表現になります。

④おのが身は、この国に生まれて侍らばこと(帝はわたしを)使ひ給はめ、(帝はわたしを)率ておはしまし難くや侍らむ。(もし私の体がこの国に生まれましたならば、帝は私をお使いなさるのがよいけど、(そうではないので)帝は私を連れていきなさりにくいことでしょうか。)

それでは、最後にこの例文です。

この例文のように、「……こそ~已然形」が文末ではなく文中にあるときは、「~だけど」といったような逆接の意味になります。

また、「こそ」の上の「ば」は、「ば」の上が未然形になっているので(未然形接続なので)、順接仮定条件の接続助詞「ば」となっており、「もし~ならば」と訳します。

さらに、この「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、今回は適当の意味で「~するのがよい」と訳しています。

よって、この文を現代語訳してみると、「もし私の体がこの国に生まれましたならば、帝は私をお使いなさるのがよいけど、(そうではないので)帝は私を連れていきなさりにくいことでしょうか。」といったような意味になります。

この文のように、「……こそ~已然形」で逆接になるパターンの1つに「……ばこそ~め、」といった形になることがあります。この形になった場合は、「もし……ならば~だろう(推量)けど、」「もし……ならば~するのがよい(適当)けど、」と訳すとよいでしょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

係助詞確認テスト

(4)助詞(古文)の解説授業一覧

係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も」の用法と係助詞を使った表現(係り結びの法則、結びの省略、結びの消去(消滅、流れ)についても解説しています)

格助詞「が・の・より・にて・して・とて・を」の意味と注意点(同格の「の」、比喩の「の」、格助詞「より」の重要な意味、「をば」の訳し方を例文を使って解説しています)

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副助詞「だに・すら・さへ・し・しも」の意味と注意点(添加と類推の違い、「だに」の最小限の限定の意味の使い方も解説しています)

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間投助詞「や」「を」(そもそも間投助詞とは何か、「を」の識別についても解説しています)

古文でよく出てくる準体法とは何かについて解説します。

(5)参考

係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も」の意味・接続・用法

係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も」の解説・テスト一覧

助詞(係助詞・格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞・間投助詞)一覧(意味・接続・用法)

助詞(係助詞・格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞・間投助詞)解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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