副助詞「だに・すら・さへ・し・しも」の意味と注意点(添加と類推の違い、「だに」の最小限の限定の意味の使い方も解説しています)【古文文法のすべて】

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(2)解説授業の原稿

副助詞「だに」「すら」「さへ」

まずは、副助詞「だに」「すら」「さへ」の3つについて解説します。

  • だに
    1. 類推(~さえ)
    2. 最小限の限定(せめて~だけでも)
  • すら
    1. 類推(~さえ)
  • さへ
    1. 添加(~までも)

添加の副助詞「さへ」の訳し方

まず気をつけたいのは、「さへ」は「までも」と訳し、「~さえ」とは訳さないということです。古文において「~さえ」と訳す副助詞は、「だに」と「すら」です。まずこの点に注意しましょう。

そもそも「さへ」は漢字をあてると、「添へ」となり、もともと添加の意味を表す副助詞です。しかし、時がたつにつれて、「さへ」を本来の添加の意味ではなく、間違えて類推の意味で使い始め、それがそのまま広まってしまい、現代では「さえ」は類推を表す助詞となってしまったのです。

そのため、新しめの文章では、「さへ」を「~さえ」で訳すこともありますが、基本的に「さへ」は「~までも」、「だに」と「すら」を「~さえ」と訳すようにしましょう。

副助詞「だに」の最小限の限定の意味

また、「だに」の2番目の意味の、最小限の限定も忘れないようにしましょう。

こちらは「せめて~だけでも」と訳す副助詞なのですが、仮定・命令・意志・願望の文脈で使われるということを覚えておきましょう。つまり、「せめて~ならば…なのに」と訳したり、『せめて~だけでもしてくれ」と訳したり、「せめて~だけでもしよう」と訳したり、「せめて~だけでもしたい」と訳したりします」。

強意の副助詞「し」「しも」

また、強意の「し」「しも」についても解説します。

副助詞の「し」「しも」は、強意の意味なのですが、現代語に強意の「し」「しも」の用法はほとんど残っていないので、現代語に訳すことはできません。

つまり、副助詞の「し」「しも」を見たら、現代語に訳す必要はなく、また、現代語に訳すことのできない「し」「しも」は副助詞ということになります。

例文を使って確認しよう

それでは、副助詞「だに」「さへ」「すら」「し」の例文をいくつか確認します。

①ものをだに聞こえむ。御声だにし給へ。(せめて話だけでも申し上げましょう。せめてお声だけでもお出しなさってください。)

まずは、「だに」の例文をいくつか確認します。

副助詞「だに」は最小限の限定と類推の2つの意味があります。最小限の限定は「せめて~だけでも」と訳し、類推は「~さえ」と訳します。

「だに」が最小限の限定の意味になるときは、仮定、命令、意志、願望の文脈のときであるということは知っておきましょう。

例えば、「ものをだに聞こえむ。」のように、「だに」を含む文で推量の助動詞「む」を意志の意味で使っている場合は、「せめて~だけでも……しよう」といったような意味になります。

また、「御声だにし給へ。」のように、「だに」を含む文の文末が命令形になっているときは、「せめて~だけでも……してください」といったような意味になります。

ちなみに、この「聞こえ」はヤ行下二段動詞「聞こゆ」の未然形で「申し上げる」という意味の謙譲語です。

よって、この文を訳してみると「せめて話だけでも申し上げましょう。せめてお声だけでもお出しなさってください。」といったような意味になります。

②蛍ばかりの光だになし。(蛍ほどの光さえない。)

また、この例文のように仮定、命令、意志、願望の文脈ではないときに「だに」を使った場合は、「~さえ」と訳す類推の意味になります。

ちなみに「ばかり」も副助詞で、「~ほど」「~ぐらい」と訳します。
※副助詞「ばかり」には限定(~だけ)の意味もある。

よって、この文を現代語訳してみると「蛍ほどの光さえない。」となります。

③やうやう暑くさへなる。(しだいに暑くまでもなる。)

④君すらもまことの道に入りぬなり。(君さえも仏道に入ってしまったそうだ。)

次は、「さへ」と「すら」の例文を確認します。

「さへ」は添加の意味で「~までも」と現代語訳し、「すら」は類推の意味で「~さえ」と現代語訳します。

副助詞の「さへ」で注意しないといけないことは、古文の「さへ」を「さえ」と現代語訳してはいけないということです。

現代語の「さえ」は類推の意味なので、古文の「だに」と「すら」を現代語訳するときに使います。

このように古文の「さへ」と現代語の「さえ」は意味が違うので注意しましょう。

以上より③を現代語訳してみると「しだいに暑くまでもなる。」となり、④を現代語訳してみると「君さえも仏道に入ってしまったそうだ。」といったような意味になります。

ちなみに、「やうやう」は「しだいに」という意味で、「まことの道」は「仏道」を意味しています。

また、この「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形で、「なり」は伝聞・推定の助動詞「なり」の終止形で今回は伝聞の意味で訳しています。

⑤宇治のみやこの仮庵し思ほゆ。(宇治のみやこの仮小屋が(自然と)思い出される。)

最後に、副助詞「し」の例文を確認します。

副助詞「し」は強意の意味ですが、現代語に残っていないので現代語訳することができません。

そのため、副助詞「し」を見たら省いて現代語訳しましょう。逆に、省いても文意が変わらない「し」は、副助詞「し」であると判断することができます。

よって、この文を現代語訳してみると「宇治のみやこの仮小屋が(自然と)思い出される。」といったように「し」を無視して現代語訳しましょう。

ちなみに、「思ほゆ」は「(自然と)思われる」といったような意味の動詞です。

(3)解説授業の内容を復習しよう

副助詞の確認テスト(問題と答え)

(4)助詞(古文)の解説授業一覧

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(5)参考

副助詞「だに・すら・さへ・ばかり・し・しも」の意味・接続・用法

副助詞「だに・すら・さへ・ばかり・し・しも」の解説・テスト一覧

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