「契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり」の解説

①枕詞・序詞・掛詞

・なし

②助動詞と助詞の文法的説明

・「し」は過去の助動詞の連体形

・「に」は断定の助動詞の連用形

・「て」は逆接の接続助詞

・「も」は係助詞

・「めり」は推定の助動詞の終止形

③句切れ

・句切れなし

④現代語訳

あなたが約束してくださった、「しめぢが原のさせも草」(「お望み通り、そういたしましょう。頼みにしてください」という意味の歌)というさしも草の上の恵みの露のようなお言葉を、命のように大切なものであると思っていたが、それもむなしく私の望みは叶わず、ああ、今年の秋も過ぎ去ってしまうようです。

⑤その他解説

・「おき」は「露」の縁語

・「させも」は「さしも草(ヨモギ)」のこと。「なほ頼めしめぢが原のさせも草吾世の中にあらむ限りは」という清水観音の歌を踏まえて、「頼みにしてください」という気持ちを示している。

・「露」は大切なものという意味を表している。

・詞書を踏まえなければ意味が取りにくい。作者(藤原基俊)は興福寺で仏典の講義を行う講師に息子の光覚を選んでくれるよう、藤原忠道に頼んだ。すると、忠道は清水観音の歌の二句と三句(しめぢが原のさせも草)を口にして、「頼みにしてください」と約束したので、作者は期待していた。