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格助詞「が・の・より・にて・して・とて・を」の意味と注意点(同格の「の」、比喩の「の」、格助詞「より」の重要な意味、「をば」の訳し方を例文を使って解説しています)【古文文法のすべて】

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(2)解説授業の原稿

格助詞「が」

まず、格助詞の「が」には3つの意味があります。

  1. 主格(~が)
  2. 連体格(~の)
  3. 体言の代用(~のもの)

この中で特に注意したいのは、主格(~が)と体言の代用(~のもの)です。古文の「が」は、「の」と同じ意味で使われることがあります。

格助詞「の」

格助詞の「の」には、5つの意味があります。

  1. 主格(~が)
  2. 連体格(~の)
  3. 体言の代用(~のもの)
  4. 同格(~で)
  5. 比喩(~のように)

この中で特に注意したいのは、主格(~が)、比喩(~のように)、同格(~で)の3つの意味です。

先ほど、古文では「が」が「の」と同じように使われると説明しましたが、逆に、「の」が「が」と同じように使われることもあります。

比喩の「の」

また、「~のように」と訳す比喩の「の」も重要です。

ただし、格助詞の「の」が比喩の意味になるときは、和歌の中で使われるか、「例の+用言」の形で使われるときだけであるということは知っておきましょう。

和歌の中で使われるときは、よく序詞の最後に使われます。また、「例の+用言」の形になるときは、「例の」の部分は「いつものように~」と訳すようにしましょう。

同格の「の」の見分け方

同格の「の」について、例えば、

頭白き女の水汲めるなむ、家に入りける。

という例文があったとき、この「女の」の「の」が同格の「の」となります。

「の」が同格であると見分けるポイントは、「の」の下の部分に連体形で終わっている部分があるかどうかがポイントとなります。

「水汲める」の「る」は、存続の助動詞「り」の連体形となっています。その下の「なむ」は、係助詞の「なむ」なので、意味の上では無視したとすると、「水汲める」の部分は連体形で終わっていることになります。

連体形で終わっている理由は、この下に「女」が省略されているからです。「女」は一度言われているので、二度目の「女」は省略されているのです。このように、体言を省略して連体形で終わる文法のことを、準体法といいます。

つまり、まとめると、格助詞の「の」の下に準体法、つまり体言が省略されて連体形で終わっている部分がある場合は、その「の」は同格の「の」となるということです。

同格の「の」の訳し方

それでは、この例文を現代語訳してみましょう。

同格の「の」を現代語訳するポイントが2つあり、1つ目は、「の」は「~で」で訳すということ、そして、省略されている体言を補う、という2点に注意して現代語訳します。この例文を現代語訳してみると、

「頭の白い(白髪の)女で、水を汲んでいる女が、家に入った。」

といった訳になります。

格助詞「より」

次の格助詞は「より」です。「より」もたくさんの意味があります。

  1. 起点(~から)
  2. 比較(~よりも)
  3. 通過(~を通って)
  4. 手段(~によって)
  5. 限定(~よりほかに)
  6. 即時(~するやいなや)

特に注意したいのは、「~を通って」と訳す通過、「~よりほかに」と訳す限定、「~するやいなや」と訳す即時で、この3つは現代語の「より」からは考えにくい意味なので、注意しておきましょう。

格助詞「にて」

続いて、「にて」ですが、「にて」は格助詞の場合、「にて」で一語なので注意してください。

格助詞の「にて」は「~で」と訳すということを覚えておけば問題ありません。

格助詞「して」

「して」も格助詞の場合は「して」で一語です。

そして、「して」は、「~で」や「~を使って」と訳すと覚えておきましょう。

格助詞「とて」

また、格助詞の「とて」も「とて」で一語です。

「とて」は引用を表す格助詞なので、「~と言って」や「~と思って」と訳すようにしてください。

格助詞「を」(「をば」について)

格助詞の「を」は現代語の「を」と同じですが、1点だけ注意点があります。それは、「を」は「をば」の形になっていることがあるということです。

この「をば」は一体どういうものなのかというと、格助詞の「を」に係助詞の「は」がついたもので、「をは」だと言いにくいので「をば」と濁音化したものです。

しかし、係助詞の「は」は現代語に無理やり訳す必要がないので、結局のところ、古文で「をば」を見たら、「を」と訳すようにすればよいということになります。

それでは、格助詞「の」「が」「より」の例文をいくつか確認します。

格助詞「の」「が」を例文で確認しよう

まずは、「の」と「が」の例文を見ていきます。

格助詞「の」「が」には、主格、連体格、体言の代用、同格、比喩といったような意味があります。

①飼いたる犬の少将が子に飛びつきたり。(飼っている犬が少将の子に飛びついた。)

まずは、この例文です。

この「の」は主格の「の」なので「~が」と訳し、この「が」は連体格の「が」なので「~の」と訳します。このように古文では、「の」を「が」と訳したり、「が」を「の」と訳したりすることがあります。

ちなみに、この「たる」は完了・存続の助動詞「たり」の連体形で、今回は存続の意味なので「~している」と訳します。

②唐のなでしこはさらない、大和のもいとめでたし。(唐のなでしこは言うまでもないが、大和のものもたいそうすばらしい。)

続いて、この例文です。

この「大和の」の「の」は体言の代用の「の」なので、「~のもの」と訳しています。

今回「大和のもの」とは「大和のなでしこ」のことなのですが、このように前に出てきた単語を省略するときに体言の代用は使います。

ちなみに、「唐のなでしこ」の「の」は連体格の「の」なので、「~の」と訳し、「なでしこ」とは花の名前です。
※なでしこ(撫子):秋の七草の1つ。初秋に淡紅色の花を開く。

そして、「さらなり」は「言うまでもない」という意味の形容動詞で、「めでたし」は「めでたい」という意味ではなく「すばらしい」という意味の形容詞です。

③いと清げなる僧の、黄なる袈裟を着たるが来けり。(たいそう美しい僧で、黄色い袈裟を着ている僧が来た。)

次に、この例文です。

この例文の「の」は同格の「の」です。

同格の「の」の見つけ方は、「体言+の」の後ろに、下に体言のない連体形が来ていれば、その「の」は同格の「の」であると判断することができます。

なぜ体言がないのに連体形になっているのかというと、この連体形の部分の下に体言が省略されているからです。今回は、「の」の上の「僧」が省略されています。

このように、連体形の後ろの体言が省略される文法のことを「準体法」といいます。

つまり、格助詞の「の」の後ろに準体法が来ていたら、その「の」は同格の「の」になるということです。

同格の「の」を含む文の訳し方は、「の」は「~で」で訳し、連体形の下に省略されている体言を補いながら訳します。

例えばこの文であれば、「たいそう美しい僧で、黄色い袈裟を着ている僧が来た。」のように訳します。(「袈裟」とは僧の服装の1つのこと。)

体言を2回訳すことがポイントになります。

④少将、例のうなづく。(少将は、いつものようにうなずく。)

次にこの例文です。

この例文の「の」は、比喩の「の」なので、「~のように」と訳します。

比喩の「の」は使われる2つのパターンを知っておきましょう。

1つ目は和歌の中で使われることがあります。特に序詞の最後に付いている「の」は比喩の「の」であることが多いです。

そして、2つ目のパターンは「例の+用言」です。

「例の+用言」は「いつものように~」と訳します。用言とは動詞、形容詞、形容動詞のことです。今回の「うなづく」は動詞なので、「例の」は「いつものように」と訳します。

ちなみに、「例の+体言」の場合は、「例の」は「いつもの」と訳します。

格助詞「より」「をば」を例文で確認しよう

次は格助詞「より」の例文をいくつか確認します。

格助詞「より」には、起点、比較の基準、限定、通過する場所、手段、即時といったような意味がありますが、今回は現代語に残っていない通過する場所、手段、即時の例文を確認します。

また、ついでに「をば」についても確認します。

⑤前より行く水をば初瀬川といふなりけり。(前を通って流れていく川を初瀬川というのであった。)

まずは、この例文です。

この例文の「より」は通過する場所の意味なので、「~を通って」と訳します。

このように、場所などを表す言葉の下に「より」があり、起点(~から)で訳しては不自然な場合は、通過する場所(~を通って)で訳すようにしましょう。

また、古文で「をば」を見たら、「~を」と訳せばよいということは知っておきましょう。

「をば」を文法的に説明すると、「を」は格助詞の「を」であり、「ば」は係助詞「は」は濁音化させたものです。

濁音化とは、「をは」だと言いにくいので、言いやすいように「は」に濁点をつけて「をば」と読んだということです。

格助詞「を」は現代語の「を」と同じ意味であり、係助詞の「は」は無理に現代語訳しなくてもいいので、結局、「をば」を見たら「~を」とだけ訳せばよいということになります。

ちなみに、「なりけり」の「なり」は断定の助動詞「なり」の連用形で、「けり」は過去の助動詞「けり」の終止形です。そのため「なりけり」は「~であった」と訳します。

⑥汝、馬より行くに、我、徒歩より行く。(あなたは馬で行くが、私は徒歩で行く。)

次にこの例文です。

この例文の「より」はどちらも手段の意味なので「~で」と訳します。

つまり、「馬より行く」は「馬で行く」となり、「徒歩(かち)より行く」は「徒歩で行く」となります。

⑦「あはれなり」とぞ、見るより思はるる。(「しみじみと趣深いなあ」と見るやいなや自然に思われる。)

最後にこの例文です。

この例文の「より」は即時の意味で「~するやいなや」と訳します。

つまり、この文を訳してみると「『しみじみと趣深いなあ』と見るやいなや自然に思われる。」といったような意味になります。

ちなみに、この「るる」は受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」の連体形で今回は自発(自然と~される)の意味になっています。

また、連体形になっているのは、文中に係助詞「ぞ」があるので係り結びになっているからです。

(3)解説授業の内容を復習しよう

格助詞の確認テスト

②準体法についての確認テストはこちら→準体法確認テスト

(4)助詞(古文)の解説授業一覧

係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も」の用法と係助詞を使った表現(係り結びの法則、結びの省略、結びの消去(消滅、流れ)についても解説しています)

格助詞「が・の・より・にて・して・とて・を」の意味と注意点(同格の「の」、比喩の「の」、格助詞「より」の重要な意味、「をば」の訳し方を例文を使って解説しています)

接続助詞「ば・を・に・が・ど・ども・と・とも・て・して・で・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」の接続と意味(「ば」の訳し分けについても例文を使って解説しています)

副助詞「だに・すら・さへ・し・しも」の意味と注意点(添加と類推の違い、「だに」の最小限の限定の意味の使い方も解説しています)

終助詞「ばや・なむ・てしが・にしが・てしがな・にしがな・もがな・がな・な・そ・か・かな・は・よ・かし・ぞ」の意味と注意点(願望、禁止、「な~そ」、詠嘆、念押し、「ぞかし」)

間投助詞「や」「を」(そもそも間投助詞とは何か、「を」の識別についても解説しています)

古文でよく出てくる準体法とは何かについて解説します。

(5)参考

格助詞「が・の・より・にて・して・とて・を」の意味・接続・用法

格助詞「が・の・より・にて・して・とて・を」の解説・テスト一覧

助詞(係助詞・格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞・間投助詞)一覧(意味・接続・用法)

助詞(係助詞・格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞・間投助詞)解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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