終助詞「ばや・なむ・てしが・にしが・てしがな・にしがな・もがな・がな・な・そ・か・かな・は・よ・かし・ぞ」の意味と注意点(願望、禁止、「な~そ」、詠嘆、念押し、「ぞかし」)【古文文法のすべて】

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願望の終助詞「ばや」「なむ」

まずは、「ばや」と「なむ」です。この2つは、対比させながら覚えるようにしましょう。

ともに願望を表す終助詞で、未然形接続となっています。

しかし、「ばや」は「~したい」という自己の願望であり、「なむ」は「~してほしい」という他者への願望を表します。つまり、自分が何かをしたいときは「ばや」を使い、誰かに何かをしてほしいときは「なむ」を使うということになります。

その他の願望の終助詞

「ばや」や「なむ」以外にも願望の終助詞があります。

「てしが」「てしがな」「にしが」「にしがな」「もがな」「がな」などが「~したいなあ」や「~が欲しいなあ」といった願望を表す終助詞となっています。

これらと同類の終助詞はこの他にもあるのですが、元々は「しか」や「もが」であり、この「しか」と「もが」の前後に「て」や「に」や「な」などがくっついて変化してできたのがこれらの終助詞であると覚えておきましょう。

※「て」「に」「な」は強意の助動詞「つ」「ぬ」が元になっている。

禁止の終助詞「な」「そ」

終助詞の「な」と「そ」は単独で用いても「~するな」といった禁止の意味となります。

禁止の「な」と「そ」は「な~そ」のように組み合わせて使った場合は、「~してくれるな」といった弱い禁止となり、「な」は単独で使った場合は、「~するな」といった強い禁止となります。

※「そ」を単独で使った場合は、「な~そ」の「な」が省略されたと考える。

詠嘆の終助詞「な」「か」「かな」「は」「よ」

また、終助詞の「な」「か」「かな」「は」「よ」には、「~だなあ」といった詠嘆の意味があります。

この詠嘆の終助詞は和歌などでよく使われ、句切れを考えるときに重要なポイントとなります。

念押しの終助詞「かし」「ぞ」

最後に、終助詞の「かし」と「ぞ」についても確認します。

この2つは、「~ことよ」といったように訳す、念押しの意味となります。

この2つは、「ぞかし」のように組み合わせて使って、感動を含む強い念押し(~であるよ)となることがあります。

※「ぞかし」の「ぞ」は係助詞とする説もある。

例文を使って確認しよう

それでは、終助詞「なむ」「ばや」「もがな」「そ」「な」「かし」の例文を確認します。

①桜花散らずあらなむ。(桜花が散らないでいて欲しい。)

②声を聞かばや。(声を聞きたいものだ。)

まずは、「なむ」と「ばや」の例文を確認します。終助詞の「なむ」と「ばや」はどちらも未然形接続で、願望の意味を表します。

ただ、終助詞「なむ」は他者への願望を表すので「~してほしい」と訳し、終助詞「ばや」は自己の願望を表すので「~したいものだ」と訳します。

よって、①は「桜花が散らないでいて欲しい。」といったような現代語訳になり、②は「声を聞きたいものだ。」といったような現代語訳になります。

③世の中にさらぬ別れのなくもがな。(この世の中に、避けることのできない死別などなければいいなあ。)

また、「なむ」「ばや」以外にも願望の終助詞はあり、「もがな」がその1つです。

そのため、③を現代語訳してみると、「この世の中に、避けることのできない死別などなければいいなあ。」といったような現代語訳になります。

ちなみに、「さらぬ」は「避けることができない」といったような意味の表現なので、「さらぬ別れ」は「死別」を表すことになります。

また、「もがな」以外にも「てしが」「てしがな」「にしが」「にしがな」「がな」といったような終助詞も願望の意味を表すので覚えておきましょう。

これらの終助詞はもともと「しか」「もが」であり、「しか」「もが」に強意を表す「て」「に」「な」などがくっついた表現であると知っておくと覚えやすくなると思います。

※「て」「に」「な」は強意の助動詞「つ」「ぬ」が元になっている。

④雲な隠しそ。(雲よ隠してくれるな。)

続いて、終助詞「そ」の例文を確認します。

終助詞「そ」は主に「な」とセットになって、「~してくれるな」といった禁止の意味を表します。「~な……そ」の形で禁止の表現であるということは重要なので必ず覚えておきましょう。

⑤雲たなびきそ。(雲よ、たなびいてくれるな。)

ただ、「な」がなく「そ」だけでも「~してくれるな」という禁止の意味になることがあるので、注意しましょう。

ちなみに文末に「な」が来ても禁止の意味を表します。ただ、終助詞「な」が禁止の意味を表すときは、「~するな」といった強い禁止の意味を表します。

「~な……そ」「そ」は「な」よりも弱い願望を含んだ禁止であるということは知っておいてもよいでしょう。

※「そ」を単独で用いているときは、「~な……そ」の「な」を省略していると考えるとよい。

⑥花の色は移りにけりな。(桜の花の色はあせてしまったことだなあ。)

また、終助詞「な」には禁止の意味だけでなく、「~だなあ」と訳す詠嘆の意味があります。

そのため、この例文を現代語訳してみると、「桜の花の色はあせてしまったことだなあ。」といったような現代語訳になります。

ちなみに、この「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形で、「けり」は過去の助動詞「けり」の終止形です。「にけり」で「~してしまった」と訳す重要な表現なので覚えておきましょう。

⑦げにさることぞかし。(本当にもっともなことであるよ。)

最後に、終助詞「かし」の例文を確認します。

終助詞「かし」は「~なことよ」と訳す念押しの意味になります。

よく「ぞ」と組み合わせて「ぞかし」の形で強い念押しとなります。

このときの「ぞ」は強意の係助詞で」「かし」の意味を強めているとする説と、「ぞ」も終助詞で終助詞を2つ重ねた表現であるとする説の、2つの説があります。いずれの説にしても、「ぞかし」は強い念押しの表現であるということだけを知っておけば問題ありません。

以上より⑦を現代語訳してみると、「本当にもっともなことであるよ。」といったようになります。

ちなみに、「げに」は「本当に」「まったく」といったような意味の単語で、「さること」は「そのようなこと」「もっともなこと」といったような意味の表現です。

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(5)参考

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