漸化式をマスターしよう(3)応用パターン②(式変形の発想が難しい漸化式、この漸化式が自力で解けたら漸化式マスターです)

(1)解説授業動画

https://youtu.be/0amTN5XR1BE

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(2)解説授業の原稿

次は式変形の発想が難しい漸化式をいくつか解いてみます。基本のパターンではないので、式変形の方法が簡単には思いつきませんが、それでも「左辺をn+1、右辺をnの形にする」ということを発想の基本にします。

発想が難しい漸化式パターン1

a1=1、nan+1=3(n+1)an

この漸化式は、このままの形では置き換えができません。なぜなら項数は確かに左辺がn+1、右辺がnの形になっていますが、係数の部分が左辺がn、右辺がn+1の形になっているので、置き換えをすることができないからです。それではどのようにすればよいのでしょうか。

このような場合は、両辺をn(n+1)で割ります。そうすることで

an+1/n+1=3・an/n

となり、左辺がn+1、右辺がnの形になるのです。こうなれば置き換えをすることができます。an/n=bnとおくと、

bn+1=3bn

となるので、bnは公比が3の等比数列となります。初項はa1/1なので、これを計算すると、

bn=a1/1・3n−1=3n−1

となり、bn=an/nなのでanで解けば、an=n・3n−1となります。

この両辺をn(n+1)で割るという発想が出るのは、nan+1=3(n+1)anの式の左辺のnを消してn+1とし、右辺のn+1を消してnとしたいという考え方が元になっています。

発想が難しい漸化式パターン2

それでは次の漸化式ではどうでしょうか。

a1=1/3、an+1=(2n−1)an/(2n+3)

とりあえずまず左辺に大きいもの、右辺に小さいものをもっていくという発想で両辺を2n+3でかけてみて、

(2n+3)an+1=(2n−1)an

となるところまでは、すぐに思いつくと思います。

しかし、ここからが進まなくなります。確かに項数だけを見れば、左辺がn+1、右辺がnの形になっているのですが、係数が対応していません。なぜなら、2n−1のnにn+1をいれてみると2n+1となり、2n+1のnにn+1をいれてみると2n+3となるので、2n−1と2n+3は1つ飛んでしまっているのです。よって、このままでは置き換えができません。

例えば、2n+3が2n+1なら置き換えができます。あるいは2n−1が2n+1でも置き換えができます。このように、この漸化式(2n+3)an+1=(2n−1)anを解くためには、間の2n+1が必要なのです。それではどうすればよいのでしょうか。

2n+1が足りなくて困っているのであれば、両辺に2n+1をかければいいのです。すると

(2n+3)(2n+1)an+1=(2n+1)(2n−1)an

のようになります。この式は対応する部分がそれぞれ1つずれた形になっています。2n+1の次は2n+3であり、2n−1の次は2n+1であり、nの次はn+1になっています。

このように両辺の対応する部分が全て1つだけずれた形にできれば、置き換えをすることができます。(2n+1)(2n−1)an=bnとすると、左辺はbn+1になるので、この(2n+3)(2n+1)an+1=(2n+1)(2n−1)an

bn+1=bn

となります。このbn+1=bnという漸化式が意味することは、ずっと同じ数が並んでいる数列であるということなので、bn=b1になり、b1=3・1・a1なので、bn=1となります。よってbn=(2n+1)(2n−1)anなので、an=1/(2n+1)(2n−1)となります。

ちなみに、bn+1=bnの漸化式を解くときに初項がb1、公差が0の等差数列と考えてもいいですし、初項がb1、公比が1の等比数列と考えてもいいです。

いかがでしょうか。このように、「間が抜けているのであれば、その間を埋めてあげる」という発想は数学において重要な発想です。

発想が難しい漸化式パターン3

それでは次の漸化式を解いてみます。

a1=1、a2=2、an+2−2an+1+an=6n

三項間漸化式ですが、右辺が0になっていないので特性方程式を使って解くことはできません。ではどうしたらよいのでしょうか。

正直、この漸化式は解いたことがあるか、誘導がないと自力で解くことは非常に困難だと思います。ヒントとしては、−2an+1を−an+1−an+1と分けてみることです。そうすれば、

an+2−an+1−an+1+an=6n

となり、このようにしてから「左辺にn+1と右辺にnを作って置き換えをする」という発想で考えてみてください。さらにヒントを与えると、−an+1+anをマイナスでくくって−(an+1−an)とします。

an+2−an+1−(an+1−an) =6n

とすれば、もうどのように置き換えをすればいいか分かると思います。

an+2−an+1−(an+1−an) =6n

のようにすると、an+2−an+1とan+1−anの対応する場所がそれぞれ1つずつズレた形になっています。つまり、n+1の次はn+2であり、nの次はn+1となっています。よってan+1−anをbnとおくと、an+2−an+1−(an+1−an) =6nは

bn+1−bn=6n

となり、この式はある項からその前の項を引くと6nという数列になっているということを表しているので、この6nはbnの階差数列であるということが分かります。

したがって、階差数列の公式を使えばbnを求めることができます。ただし、階差数列の公式はn−1を扱うので、n≧2のときとしてから階差数列の公式を使うようにします。今回は計算を省略して、

bn=3n2−3n+1

となり、bn=an+1−anなので、

an+1−an=3n2−3n+1

となります。

そしてさらに、

an+1−an=3n2−3n+1

の式を見ると、右辺の3n2−3n+1はanの階差数列ということがわかるので、もう一度階差数列の公式を使います。そしてこれを計算すると

an=n3−3n2+3n

となります。

そして、ここまではn≧2のときの話をしていたので、この式an=n3−3n2+3nがn=1でも成り立つことを確認します。この式の右辺にn=1を代入し計算してみると1となり、問題文で与えられていたa1の値と一致するので、この式an=n3−3n2+3n はn=1のときも成り立つことが分かります。したがって、全ての自然数nにおいてan=n3−3n2+3nとなります。

いかがでしょうか。発想が難しい漸化式ではありましたが、「左辺をn+1、右辺をnにする」つまり「1つだけずれた形を作り、置き換えをすると解くことができる漸化式になる」という基本の考え方を元にして取り組むことで、解くことができます。

(3)解説授業の内容を復習しよう

式変形の発想が難しい漸化式

(4)漸化式応用パターン解説一覧

漸化式をマスターしよう(3)応用パターン①(隣接3項間漸化式、特性方程式の解が2つ出るパターン、特性方程式の解が1つのパターン)

漸化式をマスターしよう(3)応用パターン②(式変形の発想が難しい漸化式、この漸化式が自力で解けたら漸化式マスターです)

漸化式をマスターしよう(3)応用パターン③(一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン、数学的帰納法の流れについても解説しています)

(5)漸化式をマスターしよう(数学B)の解説一覧

漸化式(数学B)公式一覧

漸化式をマスターしよう(1)基本中の基本(等差数列の漸化式、等比数列の漸化式、そもそも漸化式とは何か)

漸化式をマスターしよう(2)基本8パターン(①特性方程式を利用する漸化式、②n乗の項を含む漸化式、③分母と分子にanを含む漸化式、④anan+1を含む漸化式、⑤anにルートや指数がついている漸化式、⑥和Snが与えられているパターン、⑦階差数列の公式を使うパターン、⑧an+1=pan+f(n))

漸化式をマスターしよう(3)応用パターン解説(隣接3項間漸化式、発想が難しい漸化式、一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン)

(6)参考

漸化式をマスターしよう(数学B)解説動画・授業動画一覧

漸化式(数学B)公式一覧

漸化式(数学B)をマスターしよう(漸化式全パターンの解説・授業・演習問題一覧)

数列(数学B)公式一覧

数列(数学B)の解説・授業・公式・演習問題一覧

数学的帰納法(数学B)の解説・授業・公式・演習問題一覧

数学Bの解説動画・授業動画一覧

数学B公式一覧

数学Bの解説・授業・公式・演習問題一覧

数学Bの典型パターン一覧

数学の解説動画・授業動画一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)

数学公式一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)

数学の解説・授業・公式・演習問題一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)

数学典型パターン一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)

数学の語呂合わせ

数学学習に必要な参考書・問題集


「漸化式をマスターしよう」シリーズは、『細野真宏の数列と行列が面白いほどわかる本 Version2.0』(細野真宏著、(株)中経出版発行、現在は絶版)を参考にしています。

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