有機化学に関する現象や技術(問題と答え)

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有機化学(脂肪族化合物、芳香族化合物)知識一覧


①メタンハイドレートとは、メタン分子を何が取り込んだもののことか。

→水分子
※水分子のかご構造の中にメタン分子が入り、分子間力によって安定している。

②メタンハイドレートの生成は発熱反応で、メタン分子と水分子が固まっているので、体積が小さい(密度は大きい)。よって、メタンハイドレートの生成には、温度と圧力はどうすれば有利か。

→低温・高圧(ルシャトリエの原理による)
※メタンハイドレートは、永久凍土や氷河、あるいは海の底の地層に多く存在している。日本では、北海道の沖、南海トラフなどにその存在が確認されている。

③メタンハイドレート採掘には、メタンを大気中に拡散させないように気をつけないといけない。それはなぜか。

→メタンは高い温室効果があるから(二酸化炭素の約20倍)。

④果実が成熟するのを促進させる働きをもつアルケンは?

→エチレン

⑤アセチレンは空気中で点火すると、不完全燃焼をして、多量のススを出す。また、酸素を十分に与えると、約3000℃の高温の炎が得られる。それはなぜか。

→炭素の含有率が大きいから。

⑥アセトアルデヒドの製法として、アセチレンに硫酸水銀(Ⅱ)を触媒として水を付加させる方法があるが、現在この方法は、日本では全く行われていない。それはなぜか。

→この反応の触媒に使われた水銀(Ⅱ)イオンが水俣病を引き起こしたから。

⑦石油中の炭化水素は、アルカン・アルケン・アルキンのうちどれが最も多いか。

→アルカン
※アルケンとアルキンはほとんど含まれていない。

⑧液化天然ガスは冷却して圧縮しないと液化できない。それはなぜか。

→メタンの沸点が低いから(-161℃)

⑨石炭はそのまま使用するよりも、ある操作によってコークス・コールタール・石炭ガスに分離してから使用することが多い。この操作は何か。

→乾留(空気を絶って高温で熱分解すること)

⑩石油などに、触媒上で、高温・高圧の水素を吹き込むことで、ある元素を除去している。その元素は何か。

→硫黄(脱硫という)
※硫黄は硫化水素となって分離される。

⑪メタノールには毒性があり、飲むと失明したり死亡したりする。これは、メタノールの酸化によって生じるある物質によるものだが、その物質は何か。

→ホルムアルデヒド

⑫有機化合物が微生物の働きで分解される反応のうち、人間にとって有用な物質を生じる場合を何と言うか。また、人間にとって有害な物質を生じる場合を何と言うか。

→発酵、腐敗

⑬エタノールは工業的には、変性アルコール(エタノールにメタノールやガソリンなどを混ぜたもの)が使われている。これは工業的にはまったく支障はないが、ある用途に転用はできない。その転用できない用途とは何か。

→飲料用

⑭エチレングリコールは不凍液として用いられる。それはなぜか。

→水に極めてよく溶けるから(凝固点を大きく降下させる)
※エチレングリコールは2価のアルコールであり、ヒドロキシ基を2つ持つため、水によく溶ける。

⑮ジエチルエーテルは有機溶媒として広く用いられているが、それは何と反応しにくいからか。

→水
※ジエチルエーテルは極性が小さく、両端のエチル基が酸素を包み込んでいるので、水分子と水素結合を形成しにく。

⑯ホルマリンは、何の水溶液か。

→ホルムアルデヒド
※消毒剤、防腐剤などに用いられる。

⑰呼気中のエタノールの濃度は、二クロム酸カリウムの酸化によって測定される。どのような色の変化となるか。

→赤橙色から暗緑色(二クロム酸イオンからクロムイオン)

⑱脂肪酸(鎖式の1価カルボン酸)の中で最も毒性が強いカルボン酸は?

→ギ酸

⑲光学異性体は、旋光性以外にどのようなものが異なる場合が多いか。

→味、臭い、生理作用
※ヒトの嗅覚や味覚の受容体は、一方の光学異性体しか認識できないから。

⑳私たちが摂取するタンパク質はL-アミノ酸、デンプンはDーグルコースからできていいる。では、D-アミノ酸、Lーグルコースを摂取したらどうなるか。

→栄養にはならず排泄される。

㉑分子量の小さなエステルは揮発性があり、ある用途で使われる。それは何か。

→香料
※果実のような芳香がある。

㉒ニトログリセリンの用途を2つ答えよ。

→爆薬(ダイナマイトの原料)、血圧降下剤(血管を一時的に拡張させる)

㉓油脂のうち、常温で固体のものを何と言うか。

→脂肪
※動物性油脂に多い。

㉔油脂のうち、常温で液体の物を何と言うか。

→脂肪油
※植物性油脂に多い。

㉕不飽和脂肪酸は空気中に放置すると酸化されて、特有の酸味と悪臭をもつようになる。では、不飽和脂肪酸はなぜ酸化されやすいのか。

→二重結合をもつから。

㉖油で揚げたスナック菓子の袋には、窒素が充填されている。それはなぜか。

→油が酸化されるのを防ぐため。

㉗陸生動物の油脂は融点が高く、海産生物の油脂の融点は低い傾向がある。これは、一般に、陸生動物のほうが海産生物より、あるものが高いからであるが、それは何か。

→体温
※油脂は貯蔵するときは固体(単位体積当たりの分子数が多くなるから)、各細胞に運搬するときは液体にする。そこで、融点を体温にできるだけ近づけて、固体と液体の中間の状態(液晶)にしておくのが最適である。

㉘血栓を予防したり、血中の脂質量を低下させたりする効果のある、イコサペンタン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は何に含まれているか。

→魚油

㉙液体状の不飽和脂肪酸を、飽和脂肪酸の多い硬化油にするにはどうすればよいか。

→水素を付加させる。
※ローソクやマーガリンなどの原料となる。

㉚油脂に強塩基を加えると何が得られるか。

→セッケン
※この操作をけん化という。

㉛多くの二重結合をもつ脂肪油の中には、空気中に放置すると酸化され固化するものがある。このような脂肪油を何と言うか。

→乾性油

㉜乾性油の乾燥性を強めたもの(ボイル油)に顔料を混ぜたものは何に使われるか。

→油絵の具

㉝シス型脂肪酸とトランス型脂肪酸のどちらが、安定性が高いか(融点が高い、酸化されにくい)。

→トランス型脂肪酸
※そのため、トランス型脂肪酸は体内で分解されにくく、体内に蓄積されやすい。その結果、動脈硬化のリスクが高まり、アレルギーが起きやすくなる。

㉞油脂を水酸化ナトリウムでけん化すると、セッケンは会合コロイドとなっている。ここへ多量の塩化ナトリウムを加えると、セッケンは沈殿する。この現象を何と言うか。

→塩析
※コロイドについての知識はこちら→コロイド溶液の知識テスト

㉟水にセッケンを溶かすと、親水基を外側に、疎水基を内側に向けてコロイド粒子をつくる。これを何と言うか。

→ミセル

㊱セッケンのミセルでは、疎水基は何によってお互いくっついているか。

→ファンデルワールス力

㊲水の表面張力を小さくする働きをもつ物質を何と言うか。

→界面活性剤

㊳セッケンは、水分子どうしのあるものを切断するため、水の表面張力を小さくすることができる。では、何を切断するか。

→水素結合
※水の表面張力が小さくなるため、泡が立ちやすくなる。また、セッケン水は表面張力が小さいため、繊維の細かいすき間にも容易に浸透することができる。

㊴セッケンの疎水性の部分が油汚れのほうに向き、親水性の部分が水のほうに向き、安定な親水性の微粒子(ミセル)となって水中に分散する。この作用を何と言うか。

→乳化作用

㊵セッケンは硬水(カルシウムイオンやマグネシウムイオンを多く含む水)で使用すると、洗浄能力を失う。それはなぜか。

→水に不溶な物質(金属セッケン)となって沈殿するから。

㊶セッケンは、自然に優しい洗剤であると言える。それはなぜか。

→微生物によって生分解されやすいから。

㊷セッケンは、絹や羊毛を痛める。それはなぜか。

→塩基性だから。

㊸アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS洗剤)は、中性で洗浄力が強く、硬水でも海水中でも使える合成洗剤であるが、ある問題を引き起こした。その問題は何か。

→微生物による生分解が起こりにくく、河川の自然浄化を低下させた。
※ハード型洗剤とも呼ばれる。日本は、1980年代にソフト型洗剤(比較的生分解されやすい洗剤)への転換が完了した。

㊹ベンゼンは極めて有毒であるが、トルエンは比較的毒性が低い。その理由は、トルエンは、酸化されてある物質になるからであるが、それは何か。

→安息香酸
※安息香酸は体外へ排泄されやすい。トルエンはシンナーの主成分となっている。

㊺ナフタレンは防虫剤として用いられているが、それはナフタレンのどのような性質を利用しているか。

→昇華性

㊻縮合環をもつ芳香族化合物(ナフタレンなど)にはどのうような作用をもつものが多いか。

→発がん性作用

㊼防虫剤としてよく用いられているパラゾールという製品の物質名は?

→pージクロロベンゼン

㊽ベンゼンに光を当てながら塩素を付加させてできる物質は、強力な殺虫剤として用いられていたが、人体に対する毒性があることと、土壌汚染の問題が発生したため、現在は製造されていない。この物質名を答えよ。

→ヘキサクロロシクロヘキサン(ベンゼンヘキサクロリド(BHC)ともいう)

㊾トルエンを穏やかに酸化すると得られるアーモンドに似た芳香を持つ物質は?

→ベンズアルデヒド
※穏やかに酸化すると、安息香酸になる前のベンズアルデヒドの段階で反応を止めることができる。

㊿トルエンをニトロ化させて得られる黄褐色の結晶を何と言うか。また、その主な用途は?

→2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)、爆薬

51 フェノールの取り扱いには十分注意する必要がある。その理由は?

→タンパク質を凝固・変性させる力が非常に強く、皮膚や粘膜を強く侵す腐食性があるから。
※殺菌・消毒作用がある。

52 フェノールを置換させて作るある物質は、腐食性が少なく、殺菌力が強い。そのため希釈して消毒液として利用されているが、この物質は何か。

→クレゾール

53 フェノールに混酸(濃硝酸と濃硫酸)を作用させて生成させる物質で、かつては爆薬に用いられていた物質は何か。また、現在は爆薬として利用されていないが、それはなぜか。

→ピクリン酸(2,4,6-トリニトロフェノール)、金属と反応(腐食)してしまうから。

54 安息香酸の主な用途は何か。

→食品の防腐剤
※細菌やカビの生育を押さえる作用がある。

55 サリチル酸メチルの主な用途は何か。

→消炎鎮痛剤(外用塗布薬)

56 アセチルサリチル酸の主な用途は何か。

→解熱・鎮痛剤

57 サリチルアセチル酸の薬用効果は、あくまでサリチル酸のものであり、体内でサリチル酸となったときに効果が出る。しかし、サリチル酸をそのまま飲用するのは避けた方がよい。それはなぜか。

→サリチル酸は、かなり強い酸だから(胃を激しく刺激してしまう)。
※そのため、酢酸とのエステルにして酸性を弱めている。

58 ヤナギの樹皮には、古くから解熱作用があることが知られていたが、その有効成分は何であるか。

→サリチル酸

59 アニリンに無水酢酸と反応させて作る物質は、解熱剤として使われていたが、副作用(溶血作用)のため現在は使用されていない。この物質は何か。

→アセトアニリド

60 カップリングによって生じるアゾ化合物の主な用途は何か。

→染料
※黄~赤色の鮮やかな色彩をもつ。工業用染料の約60%がアゾ染料である。

61 p-ヒドロキシアゾベンゼン(p-フェニルアゾフェノール)は何色の結晶か。

→橙赤色

62 スルホ基やカルボキシ基をもつ染料(酸性染料)は、繊維の何基と結合して染色するか。

→アミノ基
※羊毛や絹などの動物性繊維やナイロンなどに用いる。

63 アミノ基をもつ染料(塩基性染料)は、繊維の何基と結合して染色するか。

→カルボキシ基
※羊毛や絹やナイロンのほかアクリル繊維にも用いることができる。

64 ベンゼン環をもち分子量が大きい染料(直接染料)は、どのような力で繊維と結びつくか。

→ファンデルワールス力と水素結合
※木綿、レーヨン、麻などの植物性繊維の染色に用いる。


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