掛詞の3つのパターンを解説します!(「大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天橋立」の解釈もします)【古文文法のすべて】

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

掛詞とは

掛詞とは、同じ音で意味の違う言葉を利用して、1つの語句に2つ以上の意味を持たせる修辞法のことを言います。

掛詞には主に3つのパターンがあります。

①掛詞を起点にある文脈が別の文脈に切り替わるパターン

1つ目のパターンは、掛詞を起点にある文脈が別の文脈に切り替わるパターンです。

例えば、

秋の野に人まつ虫のこゑすなり

とあれば、「まつ」に、人を待つの「待つ」と、「松虫」という虫の名前がかけられています。

この場合、「秋の野に人を待っている」という文脈が「松虫の声が聞こえる」という文脈に、掛詞を起点として切り変わっています。

上からくる2つの文脈を掛詞が受けているパターン

2つ目のパターンは、上からくる2つの文脈を掛詞が受けているパターンです。

例えば、

人目も草もかれぬと思へば

このような例文があったとすると、「かれ」に離れるという意味の「離れ」と、植物が枯れるという意味の「枯れ」の2つの意味がかけられています。

こうなると、「人目が離れ、そして、草も枯れた」といったように上からの2つの文脈を「かれ」が受けていることになります。

掛詞が和歌に2つの文脈が込められているということを示唆するパターン

3つ目のパターンは、掛詞が和歌に2つの文脈が込められているということを示唆するパターンです。

例えば、

大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天の橋立
(和歌の解釈:(母のいる丹後の国へは)大江山の生野を越えて行く、その道のりが遠いので、私はまだ(丹後の有名な)天橋立に踏み入ってみたことはありませんし、まだ(母からの)手紙も見てはいません。)

という有名な和歌ですが、この和歌には、2つの掛詞があります。

まず1つ目は「いくの」に地名の「生野」と「行く野」がかけられており、「ふみ」に踏み入るの「踏み」と、手紙という意味の「文」がかけられています。

特に「ふみ」で、この和歌には2つの文脈が存在することを示唆しています。つまり、「まだふみも見ず天の橋立」の部分は、「まだ天橋立に踏み入ってみたこともないし、手紙も見ていません」となるように、「ふみ」という掛詞によって、2つの文脈が存在することがわかります。

ちなみに、この和歌を解釈してみると、「大江山を越えて生野へ行く道が遠いので、私はまだ天橋立に踏み入ってみたこともなく、まだ手紙も見ていません」といったような解釈になります。

※この和歌は、歌人として名高い母をもつ作者が、「母に代作を頼む使いを出したか」とからかわれたときに、返事として詠んだ歌と言われている。

掛詞を考えるときは、このように文脈とのつながりを考えてみると、より和歌が理解できるようになります。

(3)解説授業の内容を復習しよう

和歌の修辞法(序詞・掛詞・縁語・隠し題)確認テスト

②「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立」の枕詞・序詞・掛詞を指摘し、助動詞と助詞を文法的に説明し、何句切れかを答え、現代語訳をしましょう→「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立」の解説

③百人一首を解釈することで文法力・和歌の知識・古文常識を鍛えよう→百人一首の解釈

(4)和歌(古文)の解説授業一覧

掛詞の3つのパターンを解説します!(「大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天橋立」の解釈もします)

序詞の3つのパターン(「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」「みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ」「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとしきかば今帰り来む」)

隠し題の3つのパターン(①物名、②折句、③沓冠、「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」「夜も涼し寝覚めの仮庵手枕も真袖も秋に隔てなき風」)

和歌の句切れを文法的に見つけよう! ポイントは文末表現を探すことです!

和歌の解釈の3つのポイント(「難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき」の解釈)

(5)参考

和歌の修辞法一覧(句切れ・枕詞・序詞・掛詞・縁語・隠し題・本歌取り)

和歌(古文)の解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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