「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立」の解説

①枕詞・序詞・掛詞

・「いく」に「行く」と「生野」を掛けている

・「ふみ」に「踏み」と「文」を掛けている

②助動詞と助詞の文法的説明

・「ば」は順接確定条件(理由)の接続助詞

・「も」は係助詞

・「ず」は打消しの助動詞の終止形

③句切れ

・四句切れ

→「ず」は終止形

④現代語訳

母のいる丹後の国へは大江山を越え行き、生野を通って行かなければならない遠い道なので、まだ天橋立を踏んだこともありませんし、母からの手紙も見ていません。

⑤その他解説

・この歌にまつわる逸話が有名である。一流歌人の和泉式部を母に持つ作者(小式部内侍)は、母が丹後へ行っている間に、歌合に招かれた。それを知った藤原定頼が「母上に代作は頼みましたか。まだ使いは戻りませんか。さぞかしご心配でしょう」とからかったので、それに対して即座に詠んだ歌である。これにより、小式部内侍は代作疑惑を払拭し、歌人として名を上げた。

・「大江山」:山城国と丹波国の間にまたがる山。現在の京都西北部にある。

・「生野」:丹波国天田郡(現在の京都府福知山市)の地名。

・「天の橋立」:丹後国与謝郡(現在の京都府宮津市)を代表する名所。日本三景のひとつ。