(1)解説授業動画
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(2)解説授業の原稿
定常波とは何か
まずはそもそも定常波とは何かを確認します。
定常波とは、周期・振幅・波長の等しい正弦波が左右から逆向きに伝わって重なり合ってできる波のことです。
そして、定常波はそれぞれの場所ごとに決まった大きさの振幅の振動をくり返すだけとなります。
例えば定常波は以下のようになります。
ある時刻において図の左のような形の定常波があれば、この定常波は1/4周期後には図の真ん中のようになり、さらに1/4周期後には図の右のような形となり、そしてこの1/4周期後にはまた真ん中の形となり、この1/4周期後にはまた元の左の形に戻ります。このような変化をくり返すのが定常波です。
媒質に注目すると、それぞれの場所ごとに決まった大きさの振幅の単振動をくり返しています。よって定常波は左右どちら方向にも移動しているようには見えません。それゆえに「定まった位置に常にある波」ということで「定常波」とよばれています。
また、定常波の振幅が最も大きくなる位置を腹といい、全く変位しない場所を節といいます。図を見てもらったら分かる通り、腹と節の間隔はそれぞれ1/4波長となります。ということは、節と節、あるいは腹と腹の間隔は1/2波長ということになります。
さらに定常波は2つの波が重なり合ってできているので、腹の振幅は元の波の振幅の2倍となります。
定常波はどのようにできるのか
それではもう少し具体的に、どのように定常波ができるかを図を使って確認してみます。
例えば下図のように、左右から周期と振幅と波長が等しい2つの波を発生させたとします。
すると、この2つの波はある点で重なり始めます。重なり始めてからそれぞれの波を波長の1/4つまり1/4波長だけ動かしてみると下図の左のようになります。
このとき、波が重なり合って、黒い実線のような合成波ができます。合成波の振幅が元の波の振幅の2倍になっている場所が腹となります。
そしてここからさらに1/4波長だけ動かしたものが図の右です。このようになるとそれぞれの波がお互いに打ち消し合うので合成波は黒い太線のようになります。
そして、ここからさらに1/4波長動かしたのが下図の上です。
この場合、合成波は山と山が重なっている位置で腹になり、元の波の媒質がどちらも振動の中心にいる位置で節となります。そして2つの波が最初に出会った位置は腹であり、谷と谷が重なっています。そのため合成波は黒い実線のようになります。
ここからさらに1/4波長動かしたのが上図の下で、合成波は黒い太線のようになります。2つの波が最初に出会った位置から1/4波長ずれている場所の合成波は常に振動の中心にいて変位していないので、節となっていることが分かります。
このようにして定常波はできているのです。
反射波が作る定常波
それでは定常波が何かを理解できたところで、具体的にどのようなときに定常波ができるのかを確認していきます。
まずは反射波が作る定常波を確認します。
波は壁などにぶつかったとき、反射をします。このとき、ぶつかってきた波のことを入射波、反射されてできた波のことを反射波といいます。これらは、周期と振幅と波長が同じであり、波の進む向きが逆向きなので、この2つの合成波は定常波を作ります。
反射の仕方は2種類あります。かたい壁など自由に動くことにできない物質にぶつかるときの反射を固定端反射といい、水や空気などの自由に動くことのできる物質にぶつかったときを自由端反射といいます。
固定端反射が作る定常波
まずは固定端反射でどのような定常波ができるか確認していきます。
例えば下図の左のように、壁に波の山の部分が入射したとします。
すると、反射波は固定端においては谷となっていないといけません。なぜなら、固定端において媒質は自由に動くことができないので、固定端における媒質は必ず振動の中心の位置にいないといけないからです。
そのため、固定端においては、入射波と反射波を合成した合成波は、変位が0つまり節となっていないといけないのです。
もう少し具体的に反射波の書き方を確認します。例えば図の左の位置から入射波が1/4波長動いたとします。この場合反射はどのようになるのでしょうか。
かき方としては、まず壁の中に入射波の続きをかきます。次に、この壁の中の入射波を上下反転させます。そして、この上下反転させた波をさらに壁で折り返します。すると、これが反射波となります。
ちなみに、このときとの合成波は図の赤線のように定常波を作っており、やはりこちらの場合でも固定端は節となっています。
自由端反射が作る定常波
次に、自由端反射です。固定端とは違い、自由端は媒質が自由に動くことができるので、入射した波と同じ波を反射します。
それでは自由端反射における反射波のかき方も確認します。
まずは固定端のときと同様に、入射波の続きをかきます。そして次に、そのまま折り返します。すると、自由端反射の反射波がかけます。
こちらも1/4波長だけ入射波を動かしてみた場合を考えてみます。
先ほどと同様に、まずは入射波の続きをかいて、それを自由端でそのまま折り返します。すると、反射波は上図の右のようになります。これらの入射波と反射波を合成してみると、赤線のような合成波となり、上図の右はそれぞれで打ち消し合ったような合成波となります。
やはり合成波は定常波となり、自由端反射の場合は自由端では腹となります。
弦に発生する定常波
続いて、弦に発生する定常波について解説します。
下図のように両端を固定させた弦をはじくと、定常波ができます。
例えば上図のような定常波ができた場合は、1/4周期ごとにこのような変化をします。
どの形の定常波となったとしても、両端は固定されているので、弦に発生する定常波は必ず両端が節となります。これがポイントとなります。
腹の数が1個の定常波を基本振動、腹の数が2個の定常波を2倍振動、腹の数が3個の定常波を3倍振動とよんでいます。
弦の長さをℓとすると、基本振動は腹が1個なので、ℓ=λ/2つまり「弦の長さ=波長の半分」となり、波長は2ℓとなります。2倍振動の場合は、ℓ=λとなり弦の長さがちょうど波長となっています。3倍振動の場合は腹が3個なので弦の長さは半波長の3倍となり(ℓ=λ/2×3)、波長は2ℓ/3となります。
したがって、弦に発生する定常波のm倍振動の波長を求めてみると、m倍振動とは腹の数がm個あるということなので、ℓ=λ/2×mとなり、λ=2ℓ/mとなります。
また、弦が振動すると、そのまわりの空気も振動し、音が発生します。それがギターなどの弦楽器で音が鳴る仕組みです。
弦楽器は、弦が基本振動やm倍振動などをして、それらが組み合わさることで特有の音が発生します。
気柱に発生する定常波
それでは最後に、気柱に発生する定常波を解説します。
気柱とは、試験管のように片方が開いており片方が閉じているものや、両端が開いている筒のようなものを気柱とよびます。
これらは開いている部分を口で吹くと音が発生することがあります。そのことからも、気柱では定常波が発生しているということを確認できます。
片方が開いていて片方が閉じている気柱を閉管、両端が開いている気柱を開管とよびます。
閉管で発生する定常波
まずは閉管で発生する定常波を確認します。
閉管のポイントは、開いている側には空気があるので自由端となっており、定常波は必ず腹となります。そして閉じている側は壁となっているので固定端となり、必ず節となります。
この点に注意して閉管でできる定常波を考えてみると、下図のようになります。
最も節と腹の数が少なくなる基本振動は、左のような定常波となり、このとき、閉管の長さをℓとすれば、ℓ=λ/4となり、定常波の波長はλ=4ℓとなります。
次にできる定常波は3倍振動となります。3倍振動はλ/4が3つとなっており、ℓ=λ/4×3となり、λ=4ℓ/3となります。ちなみに、左端を腹、右端を節とするという条件のもとでは、2倍振動の定常波はつくることができません。
続いてできる定常波は、4倍振動ではなく、5倍振動です。5倍振動は、λ/4が5つということなので、ℓ=λ/4×5となり、λは4ℓ/5となります。
したがって、m倍振動のときの波長を求めてみると、ℓ=λ/4×mとなるので、λ=4ℓ/mとなります。ただし、m=1, 3, 5, 7…といった奇数になります。
開管で発生する定常波
続いて、両端が空いている開管です。
開管のポイントは、両端が空気、つまり自由端となっているので、両端はともに定常波の腹となります。
そのため、節や腹の数が最も少なくなる基本振動は上図の左ような定常波となります。
基本振動では、開管の長さをℓとした場合、ℓは定常波の波長の半分となり、定常波の波長は2ℓとなります。
また、λ/2の2つ分となる2倍振動では、ℓ=λ/2×2となり、λ=ℓとなります。
そしてλ/2の3つ分となる3倍振動では、ℓ=λ/2×3となり、λ=2ℓ/3となります。
したがって、m倍振動の波長を求めてみると、ℓ=λ/2×mとなるので、λ=2ℓ/mとなります。
このように弦や気柱に発生する定常波を考えるときは図を書いてみることで波長が分かるようになり、波長が分かれば振動数なども分かるようになります。
固有振動
また、弦や気柱に発生する定常波に関して補足しておくことがあります。
弦や気柱で定常波ができるm倍振動のことを固有振動とよびます。
固有振動は弦や気柱だけではなく、全ての物体で起き、そのときの振動数のことを固有振動数といいます。その固有振動数は材質や形状で決まっています。
気柱で最も音が大きくなる場所
また、気柱に関してもう1点だけ補足しておくことがあります。
図では横波表示でかいてあります。しかし、実際は気柱の中の媒質は空気なので、縦波となっています。
つまり媒質である空気の分子は気柱に対して垂直に振動しているのではなく、気柱に対して水平に振動しているということになります。
そして、この2倍振動の定常波を縦波で考えてみます。
まず、節の部分は媒質が動くことはありません。しかし、腹の部分の媒質を縦波でかいてみると上図の右ように振動をします。
そのため、節の部分において密度の変化が最大となるので、音が最も大きくなります。
横波のイメージで考えてしまうと、腹の部分で最も音が大きくなるように考えてしまいがちですが、空気の振動は縦波なので、定常波となっているときは腹ではなく節の部分で最も音が大きくなるということに注意しましょう。
(3)解説授業の内容を復習しよう
(4)波の伝わり方(物理基礎、物理)の解説一覧
③波の正体は媒質の単振動である(y-xグラフとy-tグラフ、縦波についても解説しています)
④定常波についてのまとめ(定常波とは何か、固定端反射と自由端反射、弦で発生する定常波、気柱で発生する定常波、固有振動とは、音(縦波)の大きさ(密度の変化)が最大になるときについても解説しています)
⑤正弦波の式y=Asin{2π/T(t-x/v)+α}の原理(位相とは何かについても解説しています)
(5)参考
☆物理の解説動画・授業動画一覧(力学・熱力学・波動・電磁気・原子)
☆物理に関する現象や技術(力学、熱力学、波動、電磁気、原子)