和歌の解釈の3つのポイント(「難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき」の解釈)【古文文法のすべて】

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

和歌を解釈するときの3つのポイント

和歌を解釈するときは、次の3つのポイントに注目します。

1つ目のポイントは、「全ての単語を訳す」ということです。特に、助詞や助動詞は適切な意味に絞り込んで訳すようにしましょう。

※和歌の解釈をするときは必ず品詞分解をしましょう。そして、すべての単語の意味と文法事項(特に助動詞と助詞)の理解を解釈に入れるようにしてください。これをおろそかにしたり、あいまいに訳すと減点されます。

また、和歌には掛詞がよく使われます。掛詞がある場合は、なるべく掛けられている言葉を両方とも訳すようにしましょう。

2つ目のポイントは、「言葉を補う」ということです。和歌は字数が限られているので、よく省略が起きます。特に、主語や目的語などは必ず補うようにしましょう。

3つ目のポイントは、和歌に2つの文脈が込められている場合は、「~のように」や~ではないが」といった言葉でつなぐようにしましょう。2つの文脈を持っている和歌を解釈するときは、基本的に2つの文脈の両方ともを解釈に入れるようにしてください。

※多く和歌では、情景描写(自然や地名に関する文脈)と主題(恋愛などの文脈)の2つの文脈が含まれています。

実際に和歌を解釈しよう

それでは具体例で確認してみましょう。

難波江の 葦のかりねの ひとえゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき

という和歌を解釈してみます。

文法的に重要な単語の確認①:比喩の格助詞「の」

まずは文法的に重要な単語の確認をしてみましょう。

「かりねの」の「の」は、比喩の格助詞「の」となっているので、「~のように」と訳します。

この「の」が比喩の「の」であると見分けるポイントは、「難波江の葦のかりねの」が「ひとよ」を導く序詞となっているということです。

和歌の中で序詞の最後についている格助詞「の」は比喩の格助詞「の」になりやすいということは知っておきましょう。

文法的に重要な単語の確認②:係助詞「や」

次に、文法的に重要なポイントは、「みをつくしてや」の「や」が係助詞の「や」であるということです。

係助詞の「や」は疑問と反語の意味を持っており、今回は文脈上、疑問になります。

文法的に重要な単語の確認③:動詞「わたる」

続いて、動詞の「わたる」は、上に動詞を伴う補助動詞になった場合、「~し続ける」と訳します。

文法的に重要な単語の確認④:助動詞「べし」

そして、「べき」は係り結びによって、「べし」が連体形になったものですが、推量・意志・可能・当然・命令・適当・予定・義務の8つの意味の中から、文脈に会う意味を絞り込みます。

今回は、推量か義務のどちらかが文脈に合います。

3つの掛詞

続いて、掛詞を考えてみましょう。この和歌の中に掛詞は3つあります。

まず1つ目は「かりね」です。「かりね」には、刈り取った根という意味の「刈り根」と、一晩限りの関係という意味の「仮寝」の2つの意味がかけられています。

2つ目は「ひとよ」です。「一節」と書いて「ひとよ」と読む「一節」と、一晩という意味の「一夜」の2つの言葉がかけられています。

3つ目は、「みをつくし」です。「みをつくし」には、船の進路を示す「澪標」と、「身を尽くし」が掛けられています。

これで1つ目のポイントである、全ての単語の確認ができました。

言葉を補う

次に、2つ目のポイントとして言葉を補っていきましょう。

「葦のかりねの一節」というのは短いことの比喩として使っているので、「短い」という言葉を補いましょう。

そして、「身を尽くしてや恋ひわたるべき」の主語(わたし)と目的語(あなた)が省略されているので、それらを補いましょう。

2つの文脈を確認して、つなぐ

そして最後のポイントも確認します。この和歌には2つの文脈が込められています。

1つ目は、難波江の情景を表した文脈であり、2つ目の文脈は、その裏に隠れている恋愛の苦悩です。

この2つの文脈が込められているので、「~のように」や「~ではないが」といった言葉を使って、2つの文脈をつなぐようにします。

解釈をする

以上の3つのポイントに注意してこの和歌を解釈してみると、次のようになります。

「難波江に生えている葦の刈り取った根の一節のように短い一晩限りの逢瀬のために、澪標を目印に船が渡るではないが、私はあなたのことをこの身を尽くして恋し続けなければいけないのでしょうか。」

このように解釈することができます。

(3)解説授業の内容を復習しよう

①「難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき」の枕詞・序詞・掛詞を指摘し、助動詞と助詞を文法的に説明し、何句切れかを答え、現代語訳をしましょう→「難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき」の解説

②百人一首を解釈することで文法力・和歌の知識・古文常識を鍛えよう→百人一首の解釈

(4)和歌に関する解説

掛詞の3つのパターンを解説します!(「大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天橋立」の解釈もします)

序詞の3つのパターン(「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」「みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ」「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとしきかば今帰り来む」)

隠し題の3つのパターン(①物名、②折句、③沓冠、「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」「夜も涼し寝覚めの仮庵手枕も真袖も秋に隔てなき風」)

和歌の句切れを文法的に見つけよう! ポイントは文末表現を探すことです!

和歌の解釈の3つのポイント(「難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき」の解釈)

(5)参考

和歌(古文)の解説・テスト一覧

和歌の修辞法一覧(句切れ・枕詞・序詞・掛詞・縁語・隠し題・本歌取り)

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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