☆問題のみはこちら→主体の判別・敬意の方向の演習問題(問題)
☆演習問題の解説授業はこちら→主体の判別演習問題(主語が変わりにくい接続助詞、主語が変わりやすい接続助詞、古文単語「うつくし」、敬意の方向についても解説しています)
以下の文の傍線部の主体(誰が)と客体(誰に)を(客体がいない場合は主体のみを)答えよ。また、傍線部に敬語が含まれている場合は、その敬意の方向を答えよ。
登場人物:殿(藤原道長)、若宮(道長の孫)、上(北の方、道長の妻)、いと宮(道長の孫、若宮の弟)
(饗宴の席に、殿は)若宮いだき出で奉りたまひて、例のことども言はせたてまつり、うつくしみきこえさせたまひて、上に、「いと宮いだきたてまつらむ」と、殿ののたまふを、いとねたきことにしたまひて、「ああ」とさいなむを、うつくしがりきこえたまひて、申したまへば、右大将など興じたまふ。
出典:紫式部日記
【答え】
①いだき出で奉りたまひ
▶主体と客体
殿が若宮に
※接続助詞「て」は主語が変わりにくい。
▶敬意の方向
奉り:作者→若宮
たまひ:作者→殿
※「奉る」は謙譲語、「たまふ」は尊敬語。
- 意味で注意すべき敬語「参る・奉る・侍り・候ふ・聞こゆ・給ふ」(二種類の意味を持つ敬語、謙譲語の「給ふ」を使うときの条件についても解説しています)
- 敬意の方向(二方面の敬意、二重敬語(最高敬語)、絶対敬語、自敬表現についても解説しています)
②いはせたてまつり
▶主体と客体
殿が若宮に
▶敬意の方向
たてまつり:作者→若宮
※「たてまつる」は謙譲語。
③きこえさせたまひ
▶主体と客体
殿が若宮に
※「うつくしむ」は「かわいがる、いつくしむ」という意味(大人が子供に対してする行動)。
※接続助詞「て」は主語が変わりにくい。
▶敬意の方向
きこえ:作者→若宮
させたまひ:作者→殿
※「きこゆ」は「申し上げる」という意味の謙譲語。
※「させたまふ」は、尊敬の助動詞「さす」の連用形+尊敬の動詞「たまふ」となっており、強い敬意を表す二重尊敬(最高敬語)と呼ばれる表現。
④いだきたてまつらむ
▶主体と客体
殿がいと宮を
▶敬意の方向
たてまつら:殿→いと宮
※「たてまつる」は謙譲語。
⑤のたまふ
▶主体と客体
殿が上に
※接続助詞「を」は主語が変わりやすい。
▶敬意の方向
のたまふ:作者→殿
※「のたまふ」は「おっしゃる」という意味の尊敬語。
⑥ねたきことにしたまひ
▶主体と客体
若宮が
※「ねたきことにす」は「妬ましくする、やきもちをやく」といった意味(殿がいと宮を抱いたことに対する嫉妬)
※接続助詞「て」は主語が変わりにくい。
▶敬意の方向
たまひ:作者→若宮
※「たまふ」は尊敬語。
⑦「ああ」とさいなむ
▶主体と客体
若宮が
※接続助詞「を」は主語が変わりやすい。
⑧うつくしがりきこえたまひ
▶主体と客体
殿が若宮を
※「うつくしがる」は「かわいがる」の意味(大人が子供に対してする行動)
※接続助詞「て」は主語が変わりにくい。
▶敬意の方向
きこえ:作者→若宮
たまひ:作者→殿
※「きこゆ」は「申し上げる」という意味の謙譲語、「たまふ」は尊敬語。
⑨申したまへ
▶主体と客体
殿が若宮に
※若宮をなだめるために、殿がいろいろと申し上げたということ。
※接続助詞「ば」は主語が変わりやすい。
▶敬意の方向
たまへ:作者→殿
※「たまふ」は尊敬語。
⑩興じたまふ
▶主体と客体
右大将などが
▶敬意の方向
たまふ:作者→右大将など
※「たまふ」は尊敬語。
【主体の判別の解説一覧】
☆演習問題の解説授業はこちら→主体の判別演習問題(主語が変わりにくい接続助詞、主語が変わりやすい接続助詞、古文単語「うつくし」、敬意の方向についても解説しています)
☆主体の判別のための3つのポイントの解説授業→主体の判別の3つのポイントを解説します!(①敬語、②接続助詞、③古文常識、例文による解説もしています)
【主体の判別を理解するために必要な知識】
①意味で注意すべき敬語「参る・奉る・侍り・候ふ・聞こゆ・給ふ」(二種類の意味を持つ敬語、謙譲語の「給ふ」を使うときの条件についても解説しています)
②敬意の方向(誰から誰への敬意を表すか)の解説(二方面への敬意、二重敬語、絶対敬語、自敬表現についても解説しています)
③接続助詞「ば・を・に・が・ど・ども・と・とも・て・して・で・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」の接続と意味(「ば」の訳し分けについても例文を使って解説しています)
~参考~
☆古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)
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