主体の判別演習問題(主語が変わりにくい接続助詞、主語が変わりやすい接続助詞、古文単語「うつくし」、敬意の方向についても解説しています)【古文文法のすべて】

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

今回は主体の判別の演習問題を解きます。

主体の判別の3つのポイントの確認

古文において主体を判別するポイントは3つあります。

詳しい説明は別の動画でしているので、まだご覧になっていない方はそちらの動画からご覧になってください。

今回は3つのポイントを簡単に確認します。

ポイント①:敬語

主体の判別をするための1つ目のポイントは、敬語です。

どの種類の敬語を使っているか、あるいは敬語を使っているかいないかで主体の判別をすることができます。

ポイント②:接続助詞

主体の判別をするための次のポイントは、接続助詞です。

特に「を・に・が・ど・ば」は主語が変わりやすい接続助詞で、「て・で」は主語が変わりにくい接続助詞として覚えておきましょう。

ポイント③:古文常識

主体の判別の3つ目のポイントは、古文常識です。

これは様々な知識がありますが、今回特に重要なのは、「うつくし」という古文単語は「美しい」という意味ではなく、「かわいらしい」という意味で、大人ではなく子どもに対して使う言葉であるということは重要なので覚えておきましょう。

演習問題

それでは問題を解いていこうと思います。今回の問題の出典は『紫式部日記』です。

登場人物の確認

問題文を読む前に、まず今回の問題の登場人物を確認しておきます。

「殿」というのは、藤原道長のことです。「若宮」というのは道長の孫です。また「上」というのは北の方つまり道長の妻のことです。そして「いと宮」とは、道長の孫で若宮の弟になります。

以上を踏まえて問題を解いていきます。

問題文

以下が今回の問題文です。

この文章の線が引いてある動詞の主体を考えていきましょう。

演習問題の解答・解説

それでは、最初に確認した3つのポイントを使って主体を考えていきます。特に今回は2番目の接続助詞と3番目の古文常識を使います。

「いだき出で奉りたまひ」の主体

まず1つ目の「いだき出で奉りたまひ」の主体ですが、これは文章から考えて主語は殿となります。そして客体は若宮となります。

つまり、「殿が若宮を抱きながら出て来なさった」ということになります。

ここで確認しておきたいのは、謙譲語の「奉る」と尊敬語の「給ふ」を使っているということです。

尊敬語は主体に対する敬意を表しているので、殿に対する敬意を表しています。それだけではなく、謙譲語も使っているので若宮に対しても敬意を表しています。

つまりこの文章の作者は殿と若宮の両方に敬意を持っているため、どちらにも敬語を使っているということになります。

「言はせたてまつり」の主体

そして次のポイントは、この接続助詞の「て」です。

接続助詞の「て」は前後で主語が変わりにくいので、この前の文の主語である殿がそのまま次の文の主語になっている可能性が高いです。よって「言わせた」のは殿が若宮に言わせたということになります。

ちなみに、「例のことども」というのは「いつもの挨拶」といったような意味です。「殿が若宮にいつもの挨拶などを言わせ申し上げ」といった意味になります。

「うつくしみきこえさせたまひ」の主体

そして次の動詞は「うつくしみきこえさせたまひ」となっており、敬語を外すと「うつくしむ」という動詞になります。

ここで3つ目のポイントを思い出してください。形容詞の「うつくし」は「かわいらしい」という子どもに対して使う言葉でした。

それの動詞形の「うつくしむ」は「かわいがる」あるいは「いつくしむ」という意味で、「大人が子どもをかわいがる」となるので、この動詞の主語は殿で客体は若宮であるということが分かります。

また先ほどの「いだき出で奉りたまひ」と同様に謙譲語の「聞こえさす」と尊敬語の「たまふ」を使っており、敬語の使い方に関しても一致しているのでやはり、主語は殿で客体は若宮と言えます。

「のたまふ」の主体

そしてやはり「て」の前後では主語が変わりにくいので、こちらの「のたまふ」の主語は殿となります。文章中に「上に」と書いてあるので、「のたまふ」の客体は上になります。

「いだきたてまつらむ」の主体

また、このカギカッコの中の動詞である「いだきたてまつらむ」は、この発言をしているのが殿であることを考えると、「殿がいと宮を抱き申しあげよう」と言っていると分かります。

よって、この「む」は一人称が主語なので意志の助動詞であるということも分かります。

「ねたきことをしたまひ」の主体

そして、ここに接続助詞の「を」があります。接続助詞「を」の前後では主語が変わりやすいので、次の文の主語は殿ではない可能性が高くなります。

よって、この文の主語は若宮と考えることができます。

また、この「ねたきことにす」というのは、「妬ましくする」あるいは「やきもちをやく」といったような意味なので、やはり主語は子どもである若宮であると判断することができます。ただし若宮にも尊敬語が使われていることに注意しましょう。

「さいなむ」の主体

そして接続助詞の「て」なので、前後で主語が変わらず、「さいなむ」をしたのは若宮で、「さいなむ」というのは「責める」といった意味なので、「若宮が殿を責めた」といったような意味になります。

「うつくしがりきこえたまひ」の主体

また接続助詞の「を」がきたので、前後で主語が変わって、「うつくしがりきこえたまふ」の主語は殿で、また動詞の「うつくしがる」は「大人が子どもをかわいがる」という意味なので、そこからも主体が殿で、客体が若宮であると判断することができます。

「申したまへ」の主体

そして「て」で主語は変わりにくいので、「申したまふ」の主語は殿で、「なだめるために色々申しなさった」という意味になるので客体は若宮であると判断することができます。

「興じたまふ」の主体

さらに接続助詞の「ば」は前後で主語が変わりやすい接続助詞なので、ここで主語が変わって、最後の「興じたまふ」の主語は右大将などということになります。

いかがでしょうか。最初に確認した3つのポイント、特に今回は接続助詞と古文常識を使えば、主体の判別が容易にできることが分かったと思います。

敬意の方向も確認しよう

ついでに、敬語の敬意の方向についても確認しておきます。

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1つ目の「奉る」は地の文で謙譲語なので、作者から若宮への敬意を表しており、「たまふ」は地の文で尊敬語なので作者から殿への敬意を表しています。

次に2つ目の「奉る」では地の文で謙譲語なので作者から若宮への敬意を表しており、「聞こえさす」も地の文で謙譲語なので作者から若宮への敬意「たまふ」は地の文で尊敬語なので作者から殿への敬意、3つ目の「奉る」は会話文の中での謙譲語なので、発話者である殿からいと宮への敬意を表しています。

「のたまふ」は地の文で尊敬語なので作者から殿への敬意を表しており、「たまふ」は地の文で尊敬語なので作者から若宮への敬意「聞こゆ」は地の文で謙譲語なので作者から若宮への敬意で、「たまふ」は地の文で尊敬語なので作者から殿への敬意「申す」は地の文で謙譲語なので作者から若宮への敬意で、「たまふ」は地の文で尊敬語なので作者から殿への敬意、最後の「たまふ」は地の文で尊敬語なので作者から右大将などへの敬意となります。

これらの敬意の方向についての詳しい解説も別の動画でしていますので、ぜひそちらもご覧になってください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

主体の判別の知識テスト

主体の判別演習問題

(4)主体の判別の解説授業一覧

☆演習問題の解説授業はこちら→主体の判別演習問題(主語が変わりにくい接続助詞、主語が変わりやすい接続助詞、古文単語「うつくし」、敬意の方向についても解説しています)

☆主体の判別のための3つのポイントの解説授業→主体の判別の3つのポイントを解説します!(①敬語、②接続助詞、③古文常識、例文による解説もしています)

主体の判別を理解するために必要な知識

意味で注意すべき敬語「参る・奉る・侍り・候ふ・聞こゆ・給ふ」(二種類の意味を持つ敬語、謙譲語の「給ふ」を使うときの条件についても解説しています)

敬意の方向(誰から誰への敬意を表すか)の解説(二方面への敬意、二重敬語、絶対敬語、自敬表現についても解説しています)

接続助詞「ば・を・に・が・ど・ども・と・とも・て・して・で・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」の接続と意味(「ば」の訳し分けについても例文を使って解説しています)

(5)参考

主体の判別の解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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