「陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに」の解説

①枕詞・序詞・掛詞

・「陸奥のしのぶもぢずり」が「乱れ」を導く序詞

・「そめ」は「染め」と「初め」の掛詞

②助動詞と助詞の文法的説明

・「にし」は「に」が完了の助動詞の連用形、「し」は過去の助動詞の連体形

・「なら」は断定の助動詞の未然形

・「なくに」:「なく」は打消しの助動詞「ず」のク語法+「に」は逆接の接続助詞。「~ないのに」と訳す。

※ク語法とは、用言の語尾に「く」をつけて「~こと/もの」など名詞化させる文法のこと。

③句切れ

・句切れなし

④現代語訳

奥州のしのぶもじずりに染められた乱れ模様のように、私の心も乱れ初めているが、いったい誰のためにこのように思い乱れているのでしょうか。きっと私ひとりのせいではなく、あなたのせいに違いありません。

⑤その他解説

・「しのぶもぢずり」とは福島県信夫(しのぶ)で作られる、しのぶ草で染めた衣のこと。乱れも模様が特徴

・「そめ」「乱れ」は「もぢずり」の縁語