「八重葎 茂れる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり」の解説

①枕詞・序詞・掛詞

・なし

②助動詞と助詞の文法的説明

・「る」は存続の助動詞の連体形

・「しげれる宿のさびしきに」の「に」は順接の接続助詞(~ので)、または、格助詞とする説もある。この「に」を格助詞と見る場合、「宿の」の「の」は同格の「の」と考える。今回は後者で訳した。

・「こそ」は係助詞(已然形結び)

・「ね」は打消しの助動詞の已然形(係り結び)

→今回この「こそ~ね」の係り結びは文末(句切れ)ではなく文中にあると考えられるので、逆接(~だけれども)を表す。

・「は」は係助詞

・「に」は完了の助動詞の連用形

・「けり」は詠嘆の助動詞の終止形

③句切れ

・句切れなし

④現代語訳

幾重にも葎が生い茂っている住まいで、荒れて寂しい住まいに、人は誰も訪ねてはこないけど、ここにも秋だけはやってきたなあ。

⑤その他解説

・「葎」:カナムグラやヤエムグラなど、つる性の雑草の総称。荒れた庭や住居を表すときに使われる。