(1)解説授業動画
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(2)解説授業の原稿
一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターンの漸化式
それではついに最後のパターンです。最後のパターンは最終手段になります。
つまり今までのパターンの解法では解くことができない漸化式を解く方法です。その方法は、「一般項を予想して数学的帰納法で証明する」というやり方です。
一般項を予想するとはどういうことかというと、与えられた漸化式にn=1やn=2やn=3などを代入して、anがどのような式になるかを予想します。だいたい3つくらい代入すれば、予想できることが多いです。
しかし、それはあくまでも予想なので、それを答えとしてはいけません。そこで数学的帰納法を使って、自分の予想が正しかったことを証明します。
実際にやってみましょう。
a1=3、an2=(n+1)an+1+1
この漸化式は今までのパターンの解法では解くことができません。
まずは一般項を予想する
そういった場合は、とりあえずまずn=1を代入してみます。すると
a12=(1+1)a2+1
となるので、a1=3を代入して、a2で解くと
a2=4
となります。次にn=2も代入してみます。同様に計算すると
a3=5
となります。さらにn=3も代入して計算してみると
a4=6
となります。つまりこの漸化式が表す数列はn=1のときは3、n=2のときは4、n=3のときは5、n=4のときは6となっていることが分かります。よって
an=n+2
であると推測することができます。
しかしこれはあくまでも予想に過ぎないので、これを答えとすることはできません。確かにn=4までは、an=n+2が成り立つことは確認できていますが、nが5以上のときもan=n+2が成り立つことは示されていません。
よって、ここからは全ての自然数nにおいてan=n+2となることを、数学的帰納法を使って証明します。
予想した一般項を数学的帰納法で証明する
それでは、an=n+2を数学的帰納法で証明します。数学的帰納法を使って証明するときは、しっかりとフォーマットに沿って証明していきましょう。
n=1のとき成り立つことを示す
まずは、n=1のときこのan=n+2が成り立つことを示します。
ここで注意したいのが、an=n+2の両辺にn=1を代入したa1=1+2と書いてしまってはいけないということです。
なぜならa1=1+2を今から証明しないといけないからです。つまり証明するということは、まだこのan=n+2が成り立っているかどうか分かっていない状態ということなので、an=n+2を証明にそのまま使ってはいけません。
そのため、証明したい式an=n+2の左辺にn=1を代入したもの
(左辺)=a1=3
を計算し、そして証明したい式an=n+2の右辺にn=1を代入したもの
(右辺)=1+2=3
を計算し、それぞれの計算結果が等しくなるから、(左辺)=(右辺)が成り立つといった流れで答案を書かないといけません。
ちなみに右辺のnに1を代入すると1+2となるので右辺は3となりますが、左辺のnに1を代入したa1が3となるのは、問題文にそう書いてあるからです。このように、問題文で与えられている式は成り立つことが分かっている式、つまり証明で使っていい式ということになります。
n=kで成り立つと仮定して、n=k+1のときを示す
これでn=1のときan=n+2が成り立つことが証明できたので、次はn=kでan=n+2が成り立つと仮定した上で、n=k+1のときもan=n+2が成り立つことを証明します。
つまり、an=n+2のnにkを代入したak=k+2は成り立つと仮定しているので、証明で使ってよい式ということになります。
そして、an=n+2にn=k+1を代入したak+1=(k+1)+2という式は今から証明する式です。よって、この等式ak+1=(k+1)+2はまだ成り立つかどうか分かっていない等式なので、証明では使うことができません。
このように、何を証明で使ってよくて、今何を証明しているのかを明らかにすることが、数学的帰納法を理解するカギとなります。
それでは、ak+1=(k+1)+2を証明します。まずは証明したい式の左辺から始めます。
今、証明で使ってよい式は仮定の式ak=k+2と、問題文で与えられている式のan2=(n+1)an+1+1です。先ほども確認した通り、an2=(n+1)an+1+1は問題文で与えられているので、成り立つことが分かっている式です。そして今回は漸化式なので、an2=(n+1)an+1+1のnは自然数です。つまり、全ての自然数nにおいてan2=(n+1)an+1+1が成り立っているとされているので、an2=(n+1)an+1+1のnにkを代入した
ak2=(k+1)ak+1+1
も成り立っていると言えます。
よって、この式ak2=(k+1)ak+1+1をak+1で解くと、
ak+1=(ak2−1)/(k+1)
となり、次は仮定でak=k+2は成り立つとしているので、ak2を(k+2)2とします。そうすると、
ak+1={(k+2)2−1}/(k+1)
となり、そして分子を計算して因数分解すると、
ak+1=(k+1)(k+3)/(k+1)
となるので、約分をすると
ak+1=k+3=(k+1)+2
となります。
これで証明したい等式ak+1=(k+1)+2の左辺から始めて、右辺と同じ形になったので、ak+1=(k+1)+2は成り立つことが証明できました。よって数学的帰納法により、全ての自然数nにおいてan=n+2が成り立つことが証明できました。
いかがだったでしょうか。これでほぼ全ての漸化式のパターンを解説できたと思います。今回の解説を全て理解できれば漸化式はマスターできます。ぜひ自分でできるようになるまで復習してください。以上で漸化式をマスターするための解説を終わります。
(3)解説授業の内容を復習しよう
(4)漸化式応用パターン解説一覧
①漸化式をマスターしよう(3)応用パターン①(隣接3項間漸化式、特性方程式の解が2つ出るパターン、特性方程式の解が1つのパターン)
②漸化式をマスターしよう(3)応用パターン②(式変形の発想が難しい漸化式、この漸化式が自力で解けたら漸化式マスターです)
③漸化式をマスターしよう(3)応用パターン③(一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン、数学的帰納法の流れについても解説しています)
(5)漸化式をマスターしよう(数学B)の解説一覧
②漸化式をマスターしよう(1)基本中の基本(等差数列の漸化式、等比数列の漸化式、そもそも漸化式とは何か)
④漸化式をマスターしよう(3)応用パターン解説(隣接3項間漸化式、発想が難しい漸化式、一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン)
(6)参考
☆漸化式(数学B)をマスターしよう(漸化式全パターンの解説・授業・演習問題一覧)
☆数学の解説・授業・公式・演習問題一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)
「漸化式をマスターしよう」シリーズは、『細野真宏の数列と行列が面白いほどわかる本 Version2.0』(細野真宏著、(株)中経出版発行、現在は絶版)を参考にしています。
細野真宏先生が現在発行している出版物はこちら(小学館HP)→https://www.shogakukan.co.jp/author/5885
中経出版の参考書・問題集はこちら(学参ドットコム)→https://www.gakusan.com/