(1)解説授業動画
- 次:漸化式をマスターしよう(3)応用パターン③(一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン、数学的帰納法の流れについても解説しています)
- 前:漸化式をマスターしよう(3)応用パターン①(隣接3項間漸化式、特性方程式の解が2つ出るパターン、特性方程式の解が1つのパターン)
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(2)解説授業の原稿
次は式変形の発想が難しい漸化式をいくつか解いてみます。基本のパターンではないので、式変形の方法が簡単には思いつきませんが、それでも「左辺をn+1、右辺をnの形にする」ということを発想の基本にします。
発想が難しい漸化式パターン1
a1=1、nan+1=3(n+1)an
この漸化式は、このままの形では置き換えができません。なぜなら項数は確かに左辺がn+1、右辺がnの形になっていますが、係数の部分が左辺がn、右辺がn+1の形になっているので、置き換えをすることができないからです。それではどのようにすればよいのでしょうか。
このような場合は、両辺をn(n+1)で割ります。そうすることで
an+1/n+1=3・an/n
となり、左辺がn+1、右辺がnの形になるのです。こうなれば置き換えをすることができます。an/n=bnとおくと、
bn+1=3bn
となるので、bnは公比が3の等比数列となります。初項はa1/1なので、これを計算すると、
bn=a1/1・3n−1=3n−1
となり、bn=an/nなのでanで解けば、an=n・3n−1となります。
この両辺をn(n+1)で割るという発想が出るのは、nan+1=3(n+1)anの式の左辺のnを消してn+1とし、右辺のn+1を消してnとしたいという考え方が元になっています。
発想が難しい漸化式パターン2
それでは次の漸化式ではどうでしょうか。
a1=1/3、an+1=(2n−1)an/(2n+3)
とりあえずまず左辺に大きいもの、右辺に小さいものをもっていくという発想で両辺を2n+3でかけてみて、
(2n+3)an+1=(2n−1)an
となるところまでは、すぐに思いつくと思います。
しかし、ここからが進まなくなります。確かに項数だけを見れば、左辺がn+1、右辺がnの形になっているのですが、係数が対応していません。なぜなら、2n−1のnにn+1をいれてみると2n+1となり、2n+1のnにn+1をいれてみると2n+3となるので、2n−1と2n+3は1つ飛んでしまっているのです。よって、このままでは置き換えができません。
例えば、2n+3が2n+1なら置き換えができます。あるいは2n−1が2n+1でも置き換えができます。このように、この漸化式(2n+3)an+1=(2n−1)anを解くためには、間の2n+1が必要なのです。それではどうすればよいのでしょうか。
2n+1が足りなくて困っているのであれば、両辺に2n+1をかければいいのです。すると
(2n+3)(2n+1)an+1=(2n+1)(2n−1)an
のようになります。この式は対応する部分がそれぞれ1つずれた形になっています。2n+1の次は2n+3であり、2n−1の次は2n+1であり、nの次はn+1になっています。
このように両辺の対応する部分が全て1つだけずれた形にできれば、置き換えをすることができます。(2n+1)(2n−1)an=bnとすると、左辺はbn+1になるので、この(2n+3)(2n+1)an+1=(2n+1)(2n−1)anは
bn+1=bn
となります。このbn+1=bnという漸化式が意味することは、ずっと同じ数が並んでいる数列であるということなので、bn=b1になり、b1=3・1・a1なので、bn=1となります。よってbn=(2n+1)(2n−1)anなので、an=1/(2n+1)(2n−1)となります。
ちなみに、bn+1=bnの漸化式を解くときに初項がb1、公差が0の等差数列と考えてもいいですし、初項がb1、公比が1の等比数列と考えてもいいです。
いかがでしょうか。このように、「間が抜けているのであれば、その間を埋めてあげる」という発想は数学において重要な発想です。
発想が難しい漸化式パターン3
それでは次の漸化式を解いてみます。
a1=1、a2=2、an+2−2an+1+an=6n
三項間漸化式ですが、右辺が0になっていないので特性方程式を使って解くことはできません。ではどうしたらよいのでしょうか。
正直、この漸化式は解いたことがあるか、誘導がないと自力で解くことは非常に困難だと思います。ヒントとしては、−2an+1を−an+1−an+1と分けてみることです。そうすれば、
an+2−an+1−an+1+an=6n
となり、このようにしてから「左辺にn+1と右辺にnを作って置き換えをする」という発想で考えてみてください。さらにヒントを与えると、−an+1+anをマイナスでくくって−(an+1−an)とします。
an+2−an+1−(an+1−an) =6n
とすれば、もうどのように置き換えをすればいいか分かると思います。
an+2−an+1−(an+1−an) =6n
のようにすると、an+2−an+1とan+1−anの対応する場所がそれぞれ1つずつズレた形になっています。つまり、n+1の次はn+2であり、nの次はn+1となっています。よってan+1−anをbnとおくと、an+2−an+1−(an+1−an) =6nは
bn+1−bn=6n
となり、この式はある項からその前の項を引くと6nという数列になっているということを表しているので、この6nはbnの階差数列であるということが分かります。
したがって、階差数列の公式を使えばbnを求めることができます。ただし、階差数列の公式はn−1を扱うので、n≧2のときとしてから階差数列の公式を使うようにします。今回は計算を省略して、
bn=3n2−3n+1
となり、bn=an+1−anなので、
an+1−an=3n2−3n+1
となります。
そしてさらに、
an+1−an=3n2−3n+1
の式を見ると、右辺の3n2−3n+1はanの階差数列ということがわかるので、もう一度階差数列の公式を使います。そしてこれを計算すると
an=n3−3n2+3n
となります。
そして、ここまではn≧2のときの話をしていたので、この式an=n3−3n2+3nがn=1でも成り立つことを確認します。この式の右辺にn=1を代入し計算してみると1となり、問題文で与えられていたa1の値と一致するので、この式an=n3−3n2+3n はn=1のときも成り立つことが分かります。したがって、全ての自然数nにおいてan=n3−3n2+3nとなります。
いかがでしょうか。発想が難しい漸化式ではありましたが、「左辺をn+1、右辺をnにする」つまり「1つだけずれた形を作り、置き換えをすると解くことができる漸化式になる」という基本の考え方を元にして取り組むことで、解くことができます。
(3)解説授業の内容を復習しよう
(4)漸化式応用パターン解説一覧
①漸化式をマスターしよう(3)応用パターン①(隣接3項間漸化式、特性方程式の解が2つ出るパターン、特性方程式の解が1つのパターン)
②漸化式をマスターしよう(3)応用パターン②(式変形の発想が難しい漸化式、この漸化式が自力で解けたら漸化式マスターです)
③漸化式をマスターしよう(3)応用パターン③(一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン、数学的帰納法の流れについても解説しています)
(5)漸化式をマスターしよう(数学B)の解説一覧
②漸化式をマスターしよう(1)基本中の基本(等差数列の漸化式、等比数列の漸化式、そもそも漸化式とは何か)
④漸化式をマスターしよう(3)応用パターン解説(隣接3項間漸化式、発想が難しい漸化式、一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン)
(6)参考
☆漸化式(数学B)をマスターしよう(漸化式全パターンの解説・授業・演習問題一覧)
☆数学の解説・授業・公式・演習問題一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)
「漸化式をマスターしよう」シリーズは、『細野真宏の数列と行列が面白いほどわかる本 Version2.0』(細野真宏著、(株)中経出版発行、現在は絶版)を参考にしています。
細野真宏先生が現在発行している出版物はこちら(小学館HP)→https://www.shogakukan.co.jp/author/5885
中経出版の参考書・問題集はこちら(学参ドットコム)→https://www.gakusan.com/