(1)解説授業動画
- 次:漸化式をマスターしよう(3)応用パターン②(式変形の発想が難しい漸化式、この漸化式が自力で解けたら漸化式マスターです)
- 前:漸化式をマスターしよう(2)基本パターン⑧(最も重要なパターン、これが理解できたら漸化式の基本はマスターしたと言えます)
☆YouTubeチャンネルの登録をよろしくお願いします→大学受験の王道チャンネル
(2)解説授業の原稿
隣接3項間漸化式とは何か
これからは応用パターンの漸化式の解説をします。まずは隣接3項間漸化式の解説をします。
隣接3項間漸化式とは、an+2−5an+1+6an=0のようにan+2とan+1とanで表される漸化式のことです。
このパターンの漸化式は特性方程式を使って解きます。後ほど解説しますが、隣接3項間漸化式の特性方程式は二次方程式になります。そのため隣接3項間漸化式の解法は2つのパターンがあります。なぜなら二次方程式が実数解を持つときは、実数解が2つのときと、1つのときがあるからです。
特性方程式が異なる2つの実数解をもつパターン
まず実数解が2つになるパターンを確認します。実際に
a1=1、a2=4、an+2−5an+1+6an=0
を解きながら解法の流れを確認していきましょう。
まずan+2=x2、an+1=x、an=1とした特性方程式
x2−5x+6=0
を作ります。そして、この特性方程式を解くと実数解はx=2, 3となります。ここで2をα、3をβとして、
an+2−α・an+1=β(αn+1−αan)
のαとβに2と3を入れてみると
an+2−2an+1=3(an+1−2an)
のようになります。
次に、先ほど代入した式のαとβを入れ替えた式
an+2−β・an+1=α(αn+1−αan)
にα=2とβ=3を代入してみると、
an+2−3an+1=2(an+1−2an)
のようになります。
特性方程式を利用して作ったこれらの2つの式
an+2−2an+1=3(an+1−2an)
an+2−3an+1=2(an+1−2an)
は元の漸化式an+2−5an+1+6an=0と同じものになっています。実際にこれらを展開して整理してみると、元の漸化式an+2−5an+1+6an=0に戻ります。つまり、このx2−5x+6=0の特性方程式は、隣接3項間漸化式をan+2−α・an+1=β(αn+1−αan)やan+2−β・an+1=α(αn+1−αan)のような形にするための方程式なのです。
そして、これらの式の左辺と右辺を比べみると、対応する項数の部分が1つずつずれた形になっています。an+2−2an+1=3(an+1−2an)の式で言えば、n+2はn+1の次の項であり、n+1はnの次の項になっています。an+2−3an+1=2(an+1−2an)の式も同様になっています。つまり、これらの形というのは、左辺がn+1、右辺がnの形になっていると言うことができます。
よって、このan+1−2anをbnとすれば、この漸化式an+2−2an+1=3(an+1−2an)はbn+1=3bnとなり、これはbnが公比が3の等比数列であるということを表しています。したがって
bn=an+1−2an=(a2−2a1)・3n−1
となり、b1とはa2−2a1なので、これを計算すると、
an+1−2an =2・3n−1
となります。
an+2−3an+1=2(an+1−2an)の式も同様に、an+1−3anは公比が2の等比数列なので、初項×2n−1を計算すれば、
an+1−3an=(a2−3a1)・2n−1=2n−1
となります。
あとはan+1−2an=(a2−2a1)・3n−1=2・3n−1からan+1−3an=(a2−3a1)・2n−1=2n−1を引き算すれば、an=2・3n−1−2n−1となり、これが答えとなります。
いかがでしょうか。隣接3項間漸化式はこのような流れで解きます。
特性方程式が実数解を1つしかもたないパターン
それでは次は隣接3項間漸化式の特性方程式の実数解が1つになるパターンを確認します。実際に問題を解きながら確認していきましょう。
a1=1、a2=5、an+2−6an+1+9an=0
先ほどと同様にan+2=x2、an+1=x、an=1として特性方程式を作ります。そして、x2−6x+9=0の二次方程式を解くと、実数解は3だけの重解になります。先ほどは実数解が2つあったのでα、βと置きましたが、今回は実数解は1つしかないので、とりあえずαとして、
an+2−α・an+1=α(an+1−αan)
の式にα=3を代入していきます。この式は先ほどβだった部分がαになっています。そしてこの特性方程式を使って作った式
an+2−3・an+1=3(an+1−3an)
は元の漸化式an+2−6an+1+9an=0と同じものになっています。実際にこの式を展開して整理してみると、元の漸化式に戻ります。
ただ今回は1つしか式ができていないので、
an+2−3・an+1=3(an+1−3an)
だけでanを求めないといけません。この式は項数の対応する部分が1つだけズレている形になっているので、an+1−3anをbnと置くと、
bn+1=3bn
と置き換えることができます。今回はもう置き換えは使っていませんが、an+1−3an をまとめて1つの数列と見る考え方は同じです。初項はa2−3a1で、公比3つまり
an+1−3an=(a2−3a1)・3n−1
となります。これを計算すると、
an+1−3an=2・3n−1
となります。
繰り返しとなりますが、式はこれだけしかないので、先ほどのように連立させてan+1を消すということはできません。そこで、とりあえずこの式の左辺をan+1の形にしてみます。すると
an+1=3an+2・3n−1
の漸化式は基本パターンの漸化式の1つになっています。つまりan=pan+qnのようにn乗を含むパターンの漸化式になっているのです。よって、このパターンの漸化式の解法を使って漸化式を解いていきます。
n乗を含む場合は両辺をn+1乗で割るのでした。つまり今回は両辺を3n+1で割ります。すると
an+1/3n+1=3an/3n+1+2・3n−1/3n+1
のようになります。そしてここからは基本の流れ通り、左辺がn+1、右辺がnの形になるように式変形をして、今回も置き換えは使っていませんが、an/3nをかたまりで見ると、式変形をした漸化式
an+1/3n+1=an/3n+2/9
は、
bn+1=bn+2/9
のように等差数列になっています。よって
an/3n=a1/31+(n-1)・2/9
となります。右辺を整理すると、2/9n+1/9となるので、anについて解くために両辺を3n倍します。1/9は3−2なので、答えはan=(2n+1)・3n−2となります。
このように、隣接3項間漸化式の特性方程式の実数解が1つしか出ないパターンでも、基本パターンの解法が理解できていれば解くことができます。ちなみに隣接3項間漸化式は頻出の漸化式という訳ではありませんが、解法の流れは知っておくと良いでしょう。
(3)解説授業の内容を復習しよう
①隣接3項間漸化式(特性方程式の解が2つ出るパターン、特性方程式の解が1つのパターン)
(4)漸化式応用パターン解説一覧
①漸化式をマスターしよう(3)応用パターン①(隣接3項間漸化式、特性方程式の解が2つ出るパターン、特性方程式の解が1つのパターン)
②漸化式をマスターしよう(3)応用パターン②(式変形の発想が難しい漸化式、この漸化式が自力で解けたら漸化式マスターです)
③漸化式をマスターしよう(3)応用パターン③(一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン、数学的帰納法の流れについても解説しています)
(5)漸化式をマスターしよう(数学B)の解説一覧
②漸化式をマスターしよう(1)基本中の基本(等差数列の漸化式、等比数列の漸化式、そもそも漸化式とは何か)
④漸化式をマスターしよう(3)応用パターン解説(隣接3項間漸化式、発想が難しい漸化式、一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン)
(6)参考
☆漸化式(数学B)をマスターしよう(漸化式全パターンの解説・授業・演習問題一覧)
☆数学の解説・授業・公式・演習問題一覧(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)
「漸化式をマスターしよう」シリーズは、『細野真宏の数列と行列が面白いほどわかる本 Version2.0』(細野真宏著、(株)中経出版発行、現在は絶版)を参考にしています。
細野真宏先生が現在発行している出版物はこちら(小学館HP)→https://www.shogakukan.co.jp/author/5885
中経出版の参考書・問題集はこちら(学参ドットコム)→https://www.gakusan.com/