推定の助動詞「らし」「なり」「めり」の解説(撥音便・撥音便無表記についても解説しています!)【古文文法のすべて】

(1)解説授業動画

YouTubeチャンネルの登録をよろしくお願いします→大学受験の王道チャンネル

(2)解説授業の原稿

推定とは、推量と似ている言葉ですが、根拠があるときに使うのが推定の助動詞です。そして、推定のように根拠があり、強めの意味を持つ助動詞は、終止形接続(ラ変には連体形接続)となるということは知っておきましょう。

推定の助動詞は、「らし」「なり」「めり」の3つあります。

推定の助動詞「らし」

まず、「らし」ですが、「らし」は「~らしい」と訳すだけの簡単な助動詞です。

伝聞・推定の助動詞「なり」

続いて「なり」ですが、「なり」はもともと「音(ね)あり」が変化してできた助動詞です。そのため、耳で聞いた音を根拠とした助動詞となり、推定「~のようだ」だけではなく、「~だそうだ」といった伝聞の意味も持ちます。

「なり」の伝聞と推定の訳し分けは、人づてに聞いている場合は伝聞、その場で音を聞いている場合は推定で訳すようにしましょう。

推定の助動詞「めり」

続いて「めり」です。「めり」はもともと「見あり」が変化してできた助動詞です。そのため、目で見た視覚情報を根拠とした推定の助動詞となります。

「めり」には、「~のようだ」といった推定の意味だけでなく、「~のような」といった婉曲の意味も持ちます。他の婉曲(む・むず・らむ・けむ)の助動詞と同様に、「めり」も下に体言が来た場合は、基本的に婉曲の意味になるということは知っておきましょう。

撥音便・撥音便無表記

次に、撥音便と撥音便無表記について解説します。

推定の助動詞の「なり」と「めり」、そして強い推量の「べし」は、上にラ変が接続したとき、撥音便あるいは撥音便無表記といった変化を起こします。

例えば、伝聞推定の助動詞「なり」の上にラ変動詞の「あり」が接続したとき、「あるなり」となるところを「あんなり」(撥音便)「あなり」(撥音便無表記)といったように書いてあることがあります。

「めり」であれば、「あるめり」となるところを「あんめり」「あめり」と書いたり、「べし」であれば、「あるべし」となるところを「あんべし」「あべし」と書いてあったりします。

「る」が「ん」になることを撥音便と言い、その「ん」を書かなくなったのが撥音便無表記と言います。

特に、伝聞・推定の助動詞「なり」が撥音便あるいは撥音便無表記を起こすということは重要です。なぜなら、断定の助動詞「なり」は撥音便あるいは撥音便無表記を起こさないので、「なり」の識別に使えるからです。

例文で確認

それでは伝聞・推定の助動詞「なり」の例文を3つと、推定の助動詞「めり」の例文を1つ確認します。

①ほとどぎす鳴くなり。(ほとどぎすが鳴いているようだ。)

②猫またといふものありて人を食ふなり。(猫またというものがいて人を食うそうだ。)

まずは1番目と2番目の例文を見てみます。

伝聞・推定の助動詞「なり」は伝聞なのか推定なのか訳し分けがポイントになります。

①の例文のように、その場で音を聞いている場合は推定の意味になり、「~ようだ」と訳します。

それに対して②の例文のように、人づてに聞いている場合は、伝聞の意味になり「~そうだ」と訳します。

ちなみに「猫また」というのは、妖怪の名前なので②の例文は人づてに話を聞いていると判断することができます。

③信濃にあんなる木曽路川(信濃にあるという木曽路川)

3番目の例文では「あんなる」となっており、撥音便になっています。つまり、もともと「あるなる」で「ある」の「る」が「ん」に変化しています。

伝聞・推定の助動詞「なり」は基本的に終止形接続ですが、ラ変には連体形接続なので、この「あん」はラ変動詞「あり」の連体形ということになります。

この「なる」も伝聞で「~という」と訳すとよいでしょう。

④いと苦しと思ひためり。(たいそう苦しいと思っているようだ。)

最後に4番目の例文です。

この「ためり」は撥音便無表記となっています。つまり、もともと「たるめり」だったのが、「る」が「ん」になり、その「ん」が省かれて「ためり」となっています。

推定の「めり」も基本的には終止形接続ですが、ラ変には連体形接続なので、この「た」は完了・存続の助動詞「たり」の連体形ということになります。

今回は、この「たり」は存続で訳し、「めり」は下に体言がなければ推定の意味になるので、今回の「ためり」は「~しているようだ」と訳します。

(3)解説授業の内容を復習しよう

推定の助動詞「らし」「なり」「めり」の確認テスト

(4)助動詞(古文)の解説授業一覧

助動詞(古文)の接続は、まず3つに分類すると覚えやすくなります!(未然形接続、終止形接続(ラ変には連体形接続)、連用形接続)

打消の助動詞「ず」の解説(補助活用が文法的に重要である理由についても解説しています)

過去の助動詞「き」「けり」の解説(「~せば……まし」の構文についても解説しています)

完了の助動詞「つ」「ぬ」「たり」「り」の接続と意味(「つ」「ぬ」が強意の意味になるパターン、「たり」「り」が存続の意味になりやすいとき、「つ」「ぬ」の並列の意味についても解説しています)

推量の助動詞「む・むず・じ・らむ・けむ・べし・まじ」の活用・接続・意味(訳し分けのポイント、婉曲の意味についても解説しています)

推定の助動詞「らし」「なり」「めり」の解説(撥音便・撥音便無表記についても解説しています!)

断定の助動詞「なり」「たり」の意味と接続(「なり」の存在の意味、断定の「なり」の連用形「に」の使い方についても解説しています)

受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」の意味と訳し分け

使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」の意味と訳し分け(二重敬語(最高敬語)についても解説しています)

反実仮想の助動詞「まし」の意味と訳し分け(反実仮想・ためらいの意志・反実の願望の訳し分けについて解説しています)

願望の助動詞「まほし」「たし」の解説(意味・接続・活用)

比況の助動詞「ごとし」の解説(意味・接続・活用)

補助活用が文法的に重要な理由を解説します!

(5)参考

助動詞(古文)一覧(活用表・接続・意味)

助動詞(古文)の解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

☆テーマ別に古文単語をまとめています→古文単語

古文学習に必要な参考書・問題集