完了の助動詞「つ」「ぬ」「たり」「り」の接続と意味(「つ」「ぬ」が強意の意味になるパターン、「たり」「り」が存続の意味になりやすいとき、「つ」「ぬ」の並列の意味についても解説しています)【古文文法のすべて】

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(2)解説授業の原稿

古文において、「~した」や「~してしまった」といった完了の意味を持つ助動詞は、「つ」「ぬ」「たり」「り」の4つがあります。

「つ」「ぬ」「たり」「り」の接続

まず、接続ですが、「つ」「ぬ」「たり」は連用形接続となりますが、「り」だけ特殊な接続となります。

「り」はサ変には未然形、四段には已然形に接続します。「サミシイ(サ未四已)」という語呂合わせが有名なので、それで覚えましょう。

また、このサ未四已は、エ段の音(-e)に接続していると知っておくことも重要です。例えば、「読む」という四段動詞に完了の「り」を接続した場合、「読めり」となります。このように「り」の上は、「読め」のように、eの音に接続するのです。

「つ」「ぬ」「たり」「り」の意味

続いて、「つ」「ぬ」「たり」「り」の意味も確認します。

「つ」「ぬ」「たり」「り」の4つは、「~した」や「~してしまった」といった完了の意味を持ちますが、それだけではなく、「つ」と「ぬ」には、「きっと~」や「~してしまう」といったような強意の意味もあり、「たり」と「り」は、「~している」といった存続の意味もあります。

「つ」と「ぬ」は決まったパターンのときにだけ強意の意味となるので、そのパターンを覚えてしまいましょう。まず、

「てむ・なむ・つべし・ぬべし・つらむ・ぬらむ・てまし・なまし」

といったように、「つ」と「ぬ」の下に、推量や反実仮想といった助動詞がくっついたときに「つ」と「ぬ」は強意の意味となります。基本的にこの8つの形で出てくるので、この8つは繰り返し音読するなどして覚えるようにしてください。

また、下に推量の助動詞がつくパターン以外にも、「つ」と「ぬ」が強意の意味を持つことがあります。それは、「つ」と「ぬ」が「てよ」や「ね」などのように命令形となったときです。命令しているときは、その動作はまだ終わっていないということなので、完了で訳すことができません。そのため、「てよ」や「ね」などのように命令形になっている場合は、「~してしまえ」といったように、強意の意味で訳すことになります。

また、「たり」と「り」は、下に体言を伴ったときに存続の意味になりやすいということは知っておきましょう。ただ、これは「そうなりやすい」というだけで、必ずそうなるわけではないので注意してください。

例文で確認

それでは完了の助動詞「つ・ぬ・たり・り」の例文をいくつか確認してみます。

①月出でにけり。(月が出てしまった。)

まずはこの例文です。

この例文を現代語訳してみると「月が出てしまった。」となります。

ポイントはこの「にけり」の部分で、「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形で、「けり」は過去の助動詞「けり」の終止形です。

このように「完了の助動詞+過去の助動詞」の形は「~してしまった」と訳します。「にけり」の他にも過去の助動詞「き」を使った「にき」も「~してしまった」と訳します。

②一口に食ひてけり。(一口に食べてしまった。)

続いて、この例文を現代語訳してみると「一口に食べてしまった。」となります。

この「てけり」は「て」が完了の助動詞「つ」の連用形で、「けり」が過去の助動詞「けり」の終止形となっています。

こちらも先ほどと同様に、「完了の助動詞+過去の動詞」となっているので「~してしまった」と訳します。「てけり」だけでなく「てき」でも同様に「~してしまった」と訳します。

③音にも聞きつらむ。(きっと噂に聞いているだろう。)

次に、この例文を現代語訳してみると「きっと噂に聞いているだろう。」となります。

ポイントはこの「つらむ」です。「つ」は完了・強意の助動詞「つ」の終止形で、「らむ」は現在推量の助動詞「らむ」の終止形となります。

このように、完了・強意の助動詞「つ」「ぬ」の下に推量を表す助動詞が来た場合は、「つ」や「ぬ」は強意の意味になります。

「てむ」「なむ」「つべし」「ぬべし」「つらむ」「ぬらむ」「てまし」「なまし」

この8つは「つ」「ぬ」が強意の意味になるパターンなので、必ず覚えておきましょう。

強意の助動詞「つ」「ぬ」は命令形でなければ「きっと~」と訳します。

また「音に聞く」は「噂に聞く」という意味の重要表現で、現在推量の助動詞「らむ」は「~しているだろう」と訳します。

④この浦を去りね。(この浦を去ってしまえ。)

続いて、この例文を現代語訳してみると「この浦を去ってしまえ。」となります。

この「ね」は完了・強意の助動詞「ぬ」の命令形です。

「つ」「ぬ」は命令形の場合は強意の意味になります。なぜなら「命令している」ということは、「まだしていない」ということなので、完了の意味では訳せないからです。

強意の助動詞「つ」「ぬ」の命令形は「~してしまえ」と訳します。

⑤今は降ろしてよ。(今は降ろしてしまえ。)

この例文を現代語訳してみると「今は降ろしてしまえ。」となります。

こちらも「てよ」が「つ」の命令形なので強意の意味になり、強意の命令形なので「~してしまえ」と訳します。

⑥わずらひて臥したるときに(病気になって横になっているときに)

最後に、この例文を現代語訳してみると「病気になって横になっているときに」となります。

ポイントは、「たる」の下に「とき」といったような体言が来ていることです。この「たる」は完了・存続の助動詞「たり」の連体形になるわけですが、完了・存続の助動詞「たり」「り」は下に体言が接続するときは、存続の意味になりやすいです。

存続の助動詞を現代語訳するときは「~している」と訳します。

ただし、注意したいのは「下に体言があるときは必ず存続になる」というわけではなく、「存続になりやすい」というだけなので、下に体言があっても存続の意味にならないこともあります。

また、重要単語として「わずらふ」は「病気になる」という意味で、「臥す」は「横になる」という意味であるということは知っておきましょう。

「つ」「ぬ」の並列の意味

また、「つ」「ぬ」の並列の意味について補足します。

完了・強意の助動詞「つ」「ぬ」には「~したり」と訳す並列の意味があります。

①舟に乗りては降りつ、降りては乗りつ。(舟に乗って降りたり、降りて乗ったりする。)

②浮きぬ沈みぬ。(浮いたり、沈んだりする。)

「つ」「ぬ」を並列の意味で使うときは「~つ……つ」「~ぬ……ぬ」の形で使い、「~したり……したり」といったような意味になります。

参考書によっては、「つ」「ぬ」の並列の意味が書かれていない場合もありますが、長文では「つ」「ぬ」の並列の意味が出てくることもあるので知っておきましょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

完了の助動詞「つ」「ぬ」「たり」「り」の文法事項テスト

(4)助動詞(古文)の解説授業一覧

助動詞(古文)の接続は、まず3つに分類すると覚えやすくなります!(未然形接続、終止形接続(ラ変には連体形接続)、連用形接続)

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(5)参考

助動詞(古文)一覧(活用表・接続・意味)

助動詞(古文)の解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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