受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」の意味と訳し分けのポイント【古文文法のすべて】

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

る」「らる」は未然形接続なのですが、意味が受身・尊敬・可能・自発の4つあり、どう訳し分けていくかがポイントとなります。それぞれの意味で使うときの条件や、逆に、使ってはいけない条件があるので、それを知っておけば、訳し分けがしやすくなります。

「る」「らる」の受身の意味

る」「らる」が「~される」という受身の意味になるときは、無生物が主体になりにくいです。しかし、これは「なりにくい」だけなので、無生物が主体で受身の意味になっていることもあるので注意してください。

「る」「らる」が受身の意味になっているときは、「る」「らる」を含む文が、「〇〇が~に……される」といった文になっているので、「〇〇が」と「~に」を確認すれば、受身の意味であると判断することができます。

  • 「〇〇が」(主体)や「~に」(客体)は省略されることがあるので注意。

「る」「らる」の尊敬の意味

次に、「~なさる」という尊敬の意味ですが、「る」「らる」が尊敬の意味になるときは、「れ給ふ」あるいは「られ給ふ」といったように、「給ふ」を伴わない、ということは知っておきましょう。

尊敬の「る」「らる」に二重敬語の用法はないので、「れ給ふ」「られ給ふ」の形になっているときは、この「る」「らる」は、尊敬の意味になることはありません。そのため、この形になっていたら、残りの3つのうちのどれかの意味になっているということになります。

併せて知っておきたいのは、使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」には二重敬語の用法があるので、「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」の形で使役と尊敬のどちらの意味にもなることができます。

また、「る」「らる」が尊敬の意味になるかどうかを判断するときは、主体に注目しましょう。「る」「らる」が尊敬の意味になっているときは、身分の高い人が主体になっていることが基本です。

「る」「らる」の可能の意味

続いて、「る」「らる」の「~できる」という可能の意味は、打消を伴うのが原則ということも重要です。つまり、「る」「らる」が可能の意味になるときは、「れず」「られず」のような形になるのが原則であるということです。

ただし注意したいのが、打消を伴ったとき「る」「らる」は可能の意味になることができるということなので、打消しを伴った場合、必ず可能の意味になるというわけではなく、他の意味にもなることがあるということに注意してください。

そして、もう1点可能の原則で注意したいことは、この打消しを伴ったとき、「る」「らる」は可能の意味になることができるというルールは、鎌倉中期ごろまでのルールなので、鎌倉時代後期以降に使われる「る」「らる」は、打消しを伴わなくても、可能の意味になることがあります。

そのため、作品が成立した時代が鎌倉中期以前と分かる場合は、この原則を用いて、鎌倉後期以降つまり新しめの作品だとわかれば、この原則を使わないようにしましょう。しかし、作品が成立した時代が分からない場合も多いと思います。そういった場合は、とりあえず、打消を伴っていなかったら他の3つの意味から当てはめてみて、おかしい場合は可能の意味にすると言った順番で考えるようにしましょう。

「る」「らる」の自発の意味

る」「らる」の「自然と~される」と訳す自発の意味は、「思う」「笑う」「泣く」など心の動きを表す動詞や、感情を表す動詞と一緒に使うことが多いです。

例文で確認

それでは、受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」の例文をいくつか確認してみます。

「る」「らる」でポイントとなるのは、受身・尊敬・可能・自発のどの意味になるのかという訳し分けです。

今回は、それぞれなぜその意味になるのかを考えていきます。

①悲しくて、人知れず泣かれぬ。(悲しくて、人知れず自然と泣いてしまった。)

まずはこの例文です。

この例文の現代語訳では、この「れ」は自発の意味で訳しており、「自然と~」や「~せずにはいられない」と訳します。

ポイントは「れ」の上が「泣か」と四段動詞「泣く」の未然形になっていることです。このように「る」「らる」の上に「泣く」「笑う」「思ふ」など心の動きを表す動詞が使われているときは、自発の意味になりやすいです。

ちなみに、この「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形で「~した」や「~してしまった」と訳します。「ぬ」は連用形接続なので、「ぬ」の上は「る」の連用形の「れ」になっています。

②少将に笑はれ給ひけむ。(少将に笑われなさったのだろう。)

続いてこの例文です。

この例文でも「る」は連用形の「れ」になっています。それは下に「給ふ」という動詞つまり用言が接続しているからです。活用語の下に用言(動詞、形容詞、形容動詞)が接続する場合は、その活用語は連用形になるということは知っておきましょう。

今回「る」は受身の意味になっており「~される」と訳します。

この「る」が受身の意味になる根拠は2つあります。

1つ目は「る」の下に「給ふ」という尊敬語が使われていることです。「る」「らる」は尊敬語を伴ったときには尊敬の意味にはなりません。なぜなら、「る」「らる」には二重敬語の用法がないからです。

二重敬語とは、尊敬語を2つ重ねて、より強い敬意を表す表現ですが、「る」「らる」にはその用法がないので、もし「る」「らる」を尊敬の意味で使いたい場合は、下に尊敬語を伴ってはいけません。

ちなみに、使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」には、二重敬語の用法があるので注意しましょう。

そして、この「る」が受身の意味になる2つ目の根拠は、上に「少将に」とあるからです。基本的に受身の意味になるときは「〇〇は~に……される」の構造になっているので、「~に」と書いてあれば受身の意味であると判断することができます。

③寝られ給はず。(お休みなさることができない。)

次にこの例文です。

この例文の「らる」も「給ふ」という動詞の上なので連用形になっています。今回この「らる」は可能の意味になっており、「ず」と合わせて「~できない」と訳します。

今回この「らる」が可能の意味になる根拠は2つあり、1つ目は先ほどと同様に、下に「給ふ」という尊敬語を伴っているので、尊敬の意味にはならないということです。

そして、2つ目は打消を伴っているということです。「る」「らる」が可能の意味になるときは、基本的に打消を伴うということは覚えておきましょう。

ただし、このことには2つ注意点があり、1つ目は打消を伴えば必ず可能の意味になるわけではない、ということです。つまり、打消を伴えば可能の意味になることができるということなので、打消を伴ったときに別の意味になることもあります。

そして2つ目の注意点は、「る」「らる」が可能の意味になるときに必ず打消を伴うというルールは、鎌倉時代中期までのルールであるということです。そのため鎌倉末期以降は、打消を伴わずに「る」「らる」が可能の意味になることができます。

この2点に注意しましょう。

ちなみに、この「寝」という漢字は、古文では下二段動詞「寝(ぬ)」であり、今回は未然形の「ね」になっています。

④大将、福原へこそ帰られけれ。(大将は福原へお帰りなさった。)

そして最後にこの例文です。

この例文の「る」は過去の助動詞「けり」の上に接続しているので、連用形になっています。過去の助動詞「けり」は連用形接続です。

そして、この「る」は尊敬の意味になっており、「~なさる」と訳しています。

この「る」が尊敬の意味になるポイントは、まず下に「給ふ」などの尊敬語が伴っていないので、「る」が尊敬の意味になることができるということと、この文の主語が身分の高い人物であるということです。

身分の高い人物が主語のときに尊敬語を使わないということは基本的にありえないので、この「る」が尊敬の意味になっていると判断することができるのです。

このように「る」「らる」の訳し分けは、根拠もって判断するようにしましょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」の確認テスト

(4)助動詞(古文)の解説授業一覧

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(5)参考

助動詞(古文)一覧(活用表・接続・意味)

助動詞(古文)の解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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