(1)例題
質量と大きさが等しい均等な3つの直方体系の物体A, B, Cを、図に示すように端をそろえて積み重ね、水平で滑らかな床の上に置き、中央の物体Bにひもをつけて一定の大きさの力で水平右向きに引っ張る。AとBの間およびBとCの間の摩擦係数は等しいとし、静止摩擦係数をμ、動摩擦係数をμ’とする。また、Cと床との間にはたらく摩擦力は無視する。各物体の質量をm、重力加速度をgとして以下の問いに答えよ。
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①大きさF1の力で引っ張ったところ、A, B, Cは一体となって運動した。
物体の加速度の大きさを求めよ。また、AとBの間、及びBとCの間にはたらいている摩擦力の大きさをそれぞれ求めよ。
②ある大きさF2の力で引っ張ったところ、BとCは一体となって運動したがAとBの間では滑り運動が生じた。F2の下限を求めよ。
③大きさF3の力で引っ張ったところ、AとB, BとCの間でそれぞれ滑り運動が生じた。ただし、3つの物体はそれぞれとなりあう物体と面を接して運動しているとする。A, B, Cのそれぞれの加速度の大きさを求めよ。
(首都大入試問題より)
(2)例題の答案
①
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②
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③
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(3)解法のポイント
積み重ねられた物体の運動を考えるときは、まとめて考えずに、それぞれの物体でつり合いの式と運動方程式を考えるようにしましょう。
※①でまとめて1つの物体と考えて、3ma=F1 とするのは間違いではありませんが、やはり基本通りにばらばらで考えないと、その後の問題が解けなくなります。
また、力の矢印を書くときは、常に、
①場の力、②接触力
この2つを考えるようにしましょう。そして、接触力には作用・反作用の法則が成り立つことが重要です。
さらに、式を立てるときは、水平方向と鉛直方向に分解して考え、つり合いの式や運動方程式を立てるようにしましょう。
最大静止摩擦力は垂直抗力に比例します(静止摩擦係数を使って表せる)が、最大ではない静止摩擦力は垂直抗力に比例しない(静止摩擦係数を使って表せない)、ということも注意が必要です。
(4)必要な知識
①2種類の力
ⅰ)遠隔力(場の力):その場にいるだけで受ける力
→例:重力、電磁気力
ⅱ)接触力:他の物体と接触しているところで受ける力
→例:垂直抗力、摩擦力、弾性力など
※接触力には必ず作用反作用の法則が成り立つ
②最大(静止)摩擦力
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③動摩擦力
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④運動方程式
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(5)理解すべきこと
①積み重ねられた物体に働く力の矢印の書き方を確認しましょう→力の矢印の書き方(場の力と接触力、作用・反作用の法則、積み重ねられた物体に働く力、浮力の反作用)
☆動画はこちら↓
②摩擦力は3つに分けて考えましょう→摩擦力は3種類あると考えましょう(静止摩擦力、最大摩擦力、動摩擦力)
☆動画はこちら↓
(6)参考
☆力の法則の勉強法はこちら→力の法則
☆力学の勉強法はこちら→力学の勉強法