気体の状態変化(熱力学)問題演習(2016年センター試験本試物理第5問)

(1)問題

図のように熱をよく通す二つの容器A, Bが、コックのついた容積の無視できる細い管でつながれ、大気中におかれている。容器A, Bの容積はそれぞれVA, VBである。コックが閉じた状態で、同じ分子からなる理想気体を、容器A, Bにそれぞれ物質量nA, nBだけ閉じ込める。大気の温度は常に一定であるものとする。

①容器A, B内の気体の圧力をそれぞれpA, pBとしたとき、pA:pBを求めよ。

②次に、コックを開ける。十分に時間がたったとき、容器内の気体の圧力pをVA, VB, pA, pBで表せ。

③コックを開ける前の気体の内部エネルギーの和U0と、コックを開けて十分に時間がたった後の内部エネルギーU1の差、U0-U1を求めよ。

(2016年センター試験本試物理第5問)

(2)答案

①大気の絶対温度をT、気体定数をRとする。二つの容器は熱をよく通すので、容器内の気体の絶対温度はTとなる。よって、容器A, B内の気体の状態方程式より
pAVA=nART ・・・(ア)
pBVB=nBRT ・・・(イ)
したがって
pA:pB=nAVB:nBVA

②コックを開けて十分に時間がたったとき、容器AとBをあわせた気体全体における状態方程式より
p(VA+VB)=(nA+nB)RT
p(VA+VB)=nART+nBRT
(ア)(イ)より
p(VA+VB)=pAVA+pBVB
∴ p=(pAVA+pBVB)/(VA+VB)

③気体の内部エネルギーは温度と気体の物質量に比例するので、コックを開けた前後で、温度と気体の物質量の総和は変わらないので、気体の内部エネルギーも変化しない。
よって
U0-U1=0

※定積モル比熱をCVとすると
U0=nACVT+nBCVT
U1=(nA+nB)CVT

(3)解法のポイント

気体の状態変化の問題は、まず理想気体の状態方程式を立てるところから始めましょう。ただし、Vは容器の体積であることに注意してください。

また、今回は問題文に「単原子分子」と書いていないので、U=3/2nRTが使えないことに注意しましょう。

気体の内部エネルギーの表し方として、定積モル比熱を使ったU=nCVTもあるということは、必ず知っておきましょう。

(4)必要な知識

①理想気体の状態方程式

②等温変化

(5)理解すべきこと

①理想気体の状態方程式の使い方と計算の工夫の仕方を確認しましょう→理想気体の状態方程式の使い方解説動画(理想気体とは何か、混合気体の考え方、計算の工夫の仕方についても解説しています)

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