気体の内部エネルギーの表し方(内部エネルギーの増加量の3つの表し方、熱力学の第1法則、定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化、マイヤーの関係についても解説しています)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

気体の内部エネルギーの2つの表し方

気体の内部エネルギーの表し方について解説します。

まず、気体の内部エネルギーは2通りの表し方があるということを知っておきましょう。

1つ目が単原子分子で理想気体のとき、

①U=3/2×nRT

となり、2つ目は定積モル比熱を使って

②U=nCvT

となります。

1つ目の式は単原子分子のときにしか使えない式なので注意しましょう。今回は省略しますが、この式の導出はとても重要なのでぜひ自分で導いてみましょう。

そして意外と知られていないのが、2番目の定積モル比熱を使った内部エネルギーの表し方です。こちらは単原子分子のとき以外でも使える式なので、問題文に単原子分子と書いていない場合は2番目の式を使うようにしましょう。

なぜU=nCvTなのか

それでは、なぜ2番目のnCvTで内部エネルギーを表すことができるかを確認してみます。

まず、そもそも定積モル比熱とは、1molの気体が定積変化において1K温度を上げるのに必要な熱量のことです。これを踏まえてこの式を考えてみます。

まず物質量がnで体積がvで温度が0[K]の気体があったと仮定してみます。0[K]つまり絶対零度においては気体分子は熱運動をしないので、内部エネルギーは

U=0[J]

となります。そして、この気体の物質量と体積を変えずに温度をT[K]にすると、内部エネルギーはどうなるでしょうか。

体積が変わっていないので、この変化は定積変化となります。そのため、0[K]からT[K]への変化では気体は外部に仕事をしていませんし、外部から仕事もされていません。よって内部エネルギーの変化は吸収した熱量(ΔU=Qin)となります。

今回は定積変化なので定積モル比熱を使い、吸収した熱量は、

n×Cv×温度変化の(Tー0)

となり内部エネルギーの変化量はnCvTとなります。

ΔU=Q=nCv(Tー0)= nCvT

したがって、元の内部エネルギーが0[J]なので、温度をT[K]にしたときの内部エネルギーは

U=nCvT[J]

となり、2番目の式を導くことができました。

内部エネルギーは温度によって決まる

このように気体の内部エネルギーの表し方は2通りあるので問題に合わせて使い分けるようにしましょう。

また、この2つの式を見てもらったら分かる通り、内部エネルギーは温度によって決まるということは重要なので必ず知っておきましょう。

内部エネルギーの変化量の3つの表し方

それでは次に、内部エネルギーの増加量の表し方を確認してみます。内部エネルギーの増加量の表し方は3通りあります。

ⅰ)ΔU=3/2×nRΔT
ⅱ)ΔU=nCvΔT
ⅲ)ΔU=Qin+Win

ⅰ)とⅱ)は先ほど確認した内部エネルギーの式のTの部分をΔT(温度変化)としたものです。内部エネルギーは温度によって決まるので、温度が変化することで内部エネルギーも変化するということになります。

ⅲ)熱力学の第1法則

そして、内部エネルギーの増加量を考えるときは、3番目の

(内部エネルギーの増加量)=(吸収した熱量)+(気体が外部からされた仕事)

の式で表すこともできます。この式のことを熱力学の第1法則とよんでいます。熱力学の第1法則は以下の形で表されることもあります。

Qin= ΔU+Wout

こちらは

(吸収した熱量)=(内部エネルギーの増加量)+(気体が外部にした仕事)

となります。

このように熱力学の第1法則を使うときは、気体が「された」なのか、「した」なのかを、inとoutを書くことで区別するようにしましょう。Qinであれば吸収した熱量、Qoutであれば放出した熱量、Winは気体が外部からされた仕事、Woutは気体が外部にした仕事となります。

このように、気体が「された」なのか、「した」なのかはややこしくなりやすく、プラスマイナスの符号のミスをよく引き起こします。そういったミスを防ぐためにも、毎回ちゃんとinとoutを書いて区別するようにしましょう。

状態変化と内部エネルギーの変化量

熱力学の第1法則を使って、定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化における内部エネルギーの増加量を表してみると以下のようになります。

定積変化:ΔU= Qin
定圧変化:ΔU= Qin+ Win
等温変化:ΔU=0
断熱変化:ΔU= Win

定積変化と内部エネルギーの変化量

定積変化は体積が変わっていないため、気体が外部からされる仕事も、気体が外部にする仕事も0になるので、内部エネルギーの増加量は吸収した熱量と等しくなります。

ΔU= Qin

定圧変化と内部エネルギーの変化量

次に、定圧変化ですが、定圧変化は圧力が変わらないということなので、熱の出入りはありますし、体積が変化して気体が外部に仕事をされたり外部に仕事をしたりします。

そのため、定圧変化において内部エネルギーの増加量を求める場合は、熱量と仕事の両方を求めないといけません。

ΔU= Qin+ Win

等温変化と内部エネルギーの変化量

また、等温変化は温度の変化がないということであり、温度が変わらないということは内部エネルギーも変化しないということなので、内部エネルギーの増加量は0となります。

ΔU=0

断熱変化と内部エネルギーの変化量

そして最後に断熱変化では熱の出入りがないので、内部エネルギーの増加量は気体が外部からされた仕事と等しくなります。

ΔU= Win

マイヤーの関係式

それでは、今まで出てきた式を使ってマイヤーの関係式

Cp=Cv+R

を示してみます。

(定圧モル比熱)=(定積モル比熱)+(気体定数)という関係のことをマイヤーの関係といいます。定圧モル比熱とは、定積モル比熱と同様に、1molの気体が定圧変化において1K温度を上げるために必要な熱量のことです。

マイヤーの関係の導出は以下です。

熱力学第1法則より
Qin=ΔU+Wout
定圧変化であれば、Qin=nCpΔTとなる。また、ΔU=nCvΔT、Wout=pΔVより
nCpΔT=nCvΔT+pΔV
状態方程式よりpΔV=nRΔTなので
nCpΔT=nCvΔT+nRΔT
両辺をnΔTで割って
Cp=Cv+R

まず定圧変化であるとし、熱力学第1法則の式を使います。定圧変化における吸収された熱量は、定圧モル比熱を使ってnCpΔTと表すことができ、内部エネルギーの増加量は先ほど確認した通りnCvΔTと表すことができ、気体が外部にした仕事は、定圧変化で圧力が一定なので体積変化だけを考えればよく、p・ΔVとなります。

そして、状態方程式pV=nRTを使ってpΔVをnRΔTに書き換えます。今回、気体の物質量は変化しないと考えており、Rは定数なのでnRTのうち変化するのはTだけであるため、TをΔTとします。

そして、この式の両辺をnとΔTで割ると

Cp=Cv+R

となり、マイヤーの関係式を導くことができました。

単原子分子のときのCvCp

また、単原子分子のとき最初に確認した通り、内部エネルギーの表し方は2通りあり、それらをイコールでつなぎ、

nCvT=3/2×nRT

両辺をnとTで割ると定積モル比熱が

Cv=3/2・R

となります。そしてマイヤーの関係式から定圧モル比熱は

Cp=5/2・R

となります。単原子分子のときのCvとCpの値は知っておいてもよいでしょう。

いかがだったでしょうか。今回の解説で内部エネルギーの表し方と考え方を網羅できたと思います。あとはこれらを実践で試しながら使いこなせるようになりましょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

気体の状態変化(熱力学)問題演習(2018年センター試験本試物理第4問B)

気体の状態変化(熱力学)問題演習(2017年センター試験本試物理第3問B)

気体の状態変化(熱力学)問題演習(2016年センター試験本試物理第5問)

(4)気体の状態変化(熱力学)の解説一覧

気体の状態変化(熱力学)公式

気体の性質は気体分子で考えることで理解しやすくなります(気体の圧力、混合気体、ドルトンの分圧の法則、気体の運動エネルギー、気体の内部エネルギー、ボイルの法則、シャルルの法則、気液平衡、飽和蒸気圧)

理想気体の状態方程式の使い方(理想気体とは何か、混合気体の考え方、計算の工夫の仕方についても解説しています)

気体の内部エネルギーの表し方(内部エネルギーの増加量の3つの表し方、熱力学の第1法則、定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化、マイヤーの関係についても解説しています)

気体が吸収した熱量の求め方(定積モル比熱、定圧モル比熱、熱力学の第1法則、定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化、熱効率)

気体が外部にする仕事(pΔVになるわけ、p-Vグラフ、熱機関のサイクル、定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化、断熱自由膨張)

定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化におけるp-VグラフとV-Tグラフ(ポアソンの法則についても解説しています)

(5)参考

気体の状態変化(熱力学)の解説・授業・公式・演習問題一覧

熱力学(物理基礎、物理)の解説動画・授業動画一覧

熱力学(物理基礎、物理)公式一覧

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