数学的帰納法の分かりやすい答案の書き方(不等式バージョン)

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今回は不等式を数学的帰納法を使って証明するときの分かりやすい答案の書き方を解説します。

数学的帰納法が分かりにくくなる2つの原因

数学的帰納法を使って証明をするときに、「教科書のマネをして答案を書いてみたものの、いまいち何をやっているのか分からない」という方も多いと思います。そこで今回は、教科書の答案の書き方にいくつか改良を加えた、分かりやすい答案の書き方をご紹介します。

そもそも数学的帰納法がいまいち分かりにくくなるには2つの原因があります。

①「今何を証明しているのか」を見失ってしまう。
②「何を証明に用いてよいのか」つまり「何が仮定になっているのか」を見失ってしまう。

この2つが原因で、数学的帰納法が分かりにくくなっていると思います。

そのため、この2つを明らかにした答案を書けば、分かりやすい答案を書くことができるようになります。

数学的帰納法の分かりやすい答案フォーマット(不等式バージョン)

それでは、不等式を数学的帰納法を使って証明するときの分かりやすい答案のフォーマットを確認します。

「(ⅰ)n=1のとき」の書き方

まず数学的帰納法はn=1が成り立つことを証明するところから始めます。そのため、証明したい不等式にn=1を代入したものを書くようにすると分かりやすくなります。

つまり、「【証明したい不等式にn=1を代入したもの】が成り立つことを証明する」と記述すると、(ⅰ)で証明しようとしているのは、この【証明したい不等式にn=1を代入したもの】であるということが明らかになります。

そして、この【証明したい不等式にn=1を代入した不等式】を証明したいので、この【証明したい不等式にn=1を代入した不等式】の左辺を計算し、この【証明したい不等式にn=1を代入した不等式】の右辺を計算すると、この【証明したい不等式にn=1を代入した不等式】を証明することができます。

この不等式を証明する部分では、(左辺)-(右辺)を計算してもいいのですが、n=1を代入した不等式を証明するときは、左辺と右辺をそれぞれ計算した方が早いことが多いです。

「(ⅱ)n=kのとき」の書き方

続いて、【証明する不等式にn=kを代入したもの】が成り立つと仮定します。

この【証明する不等式にn=kを代入した不等式】は仮定なので、これから証明するものではありません。仮定というのは、証明するものではなく、証明で使うものであるということに注意しましょう。

「n=k+1のときの~」の書き方

そして、【証明したい不等式にn=k+1を代入したもの】を書きます。つまり、「【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】が成り立つことを証明する」と記述すると、(ⅱ)で証明しようとしているのは、この【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】であるということが明らかになります。

ここからは、この【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】を証明します。繰り返しになりますが、【証明する不等式にn=kを代入した不等式】を証明するのではありません。

【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】の(左辺)-(右辺)を計算します。計算のポイントとしては、仮定つまり【証明したい不等式にn=kを代入した不等式】が使える形に式変形するということです。仮定は不等式なので、仮定を使ったときに不等号が現れることに注意してください。

そして、計算を進めていき0よりも大きくなれば、(左辺)-(右辺)>0となるので、この【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】が成り立つことが証明できます。

結論の書き方

したがって、(ⅰ)n=1のときが証明されて、(ⅱ)n=kのとき成り立つと仮定したときに、n=k+1のときも成り立つと証明できたので、数学的帰納法により、全ての自然数nにおいて問題の不等式が成り立つと証明されます。

このように数学的帰納法の答案を作るときは、「今何を証明しているのか」、そして、「何を仮定にしているのか」つまり「何を証明で使っていいのか」、これらを明らかにすることで、分かりやすい答案となります。

数学的帰納法の分かりやすい答案フォーマット(不等式バージョン)を使ってみる

それでは、実際に先ほどのフォーマットを使って証明をしてみます。

自然数nについて、2n≧n2-n+2が成り立つことを証明します。

n=1のときの証明

まずは、n=1のとき、この不等式が成り立つことを証明します。そのため、【2n≧n2-n+2にn=1を代入した不等式】を書き、「【2n≧n2-n+2にn=1を代入した不等式】が成り立つことを証明する」と記述します。

そして、n=1を代入した不等式の左辺を計算し、n=1を代入した不等式の右辺を計算します。すると、(左辺)≧(右辺)となるので、この【2n≧n2-n+2にn=1を代入した不等式】は成り立つことが示されました。

n=kのときの仮定

続いて、【証明したい不等式にn=kを代入した不等式】を書き、それが成り立つと仮定します。

これは、仮定なので証明する不等式ではなく、後ほど証明で使う不等式であるということに注意しましょう。

n=k+1のときの証明

そして、【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】を書き、「【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】が成り立つことを証明する」と記述します。つまりここからは、【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】を証明します。

そのため、【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】の(左辺)-(右辺)を計算して、0以上となることを導きます。

式変形のポイントとしては、仮定が使える形を作ります。つまり今回で言えば、2k+1を2・2kとすれば、仮定の左辺の形となります。このようにしてから、2kの部分をk2-k+2(仮定の右辺)にします。このとき、仮定は不等式なので、=ではなく≧を使うことに注意しましょう。

そして、仮定を使って式変形した後の式を整理して、因数分解すると、0以上となることが分かります。なぜなら、kは自然数なので、(k-2)(k-1)に最小の自然数である1を代入してみても0となり、kがそれ以上の自然数であれば、0以上となるからです。

よって、【証明したい不等式にn=k+1を代入した不等式】を証明することができました。

結論

したがって、(ⅰ)n=1のとき問題の不等式が成り立つことを証明し、(ⅱ)n=kのとき【証明したい不等式にn=kを代入した不等式】が成り立つと仮定したら、n=k+1のときも問題の不等式が成り立つと証明できたので、数学的帰納法により、すべての自然数nにおいて、問題の不等式が成り立つことが証明されました。

いかがでしょうか。このように「今何を証明しているのか」、そして、「何が仮定なのか」を明らかにすることで、数学的帰納法の答案が分かりやすくなったと思います。もちろん、これらが意識できるようになれば、わざわざ記述しなくても構いません。しかし、慣れるまでは、これらを記述しておいた方が理解しやすくなると思います。ぜひ試してみてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

数学的帰納法(不等式)の基本問題

(4)数学的帰納法(数学B)の解説一覧

数学的帰納法の分かりやすい答案のフォーマット(等式・不等式)

数学的帰納法の分かりやすい答案の書き方(等式バージョン)

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漸化式をマスターしよう(3)応用パターン③(一般項を予想して数学的帰納法で証明するパターン、数学的帰納法の流れについても解説しています)

(5)数列(数学B)の解説一覧

数列(数学B)公式一覧

複利計算の解説(そもそも複利とは何か、積み立て預金の計算について解説しています)

階差数列の公式の原理(答案の書き方、なぜn≧2にするのか、そもそもなぜこの公式が成り立つのかについて解説しています)

数列を理解できているか試すことができる良問の解説(2015年センター試験本試数学ⅡB第3問を記述問題に改題しています)

(6)参考

数学的帰納法(数学B)の解説・授業・公式・演習問題一覧

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