仮定形を文法的に考える(漢文文法)

①如・若:「もシ~バ」と訓読する。「如」「若」は本来動詞であるが、解釈上は接続詞と考えてもよい。

→「如」「若」は「従う」という意味で、「如(若)S’+V’、S+V」は「S’V’が起きるに従って、SVとなる」と言う意味であり、「もしS’V’ならば、SV」という意味になった。

②使・令・為・信・如令・如使・若使:「もシ~バ」と訓読する。

→「如」「若」は動詞であり、「如(若)S’+V’、S+V」とは実は、英語でいうところの「命令文, and……(~しなさい、そうすれば……)」の構文なのである。よって、使役を表す漢字が仮定形で使われるようになる。

③将・且・当・當:「もシ~バ」と訓読する。

→未来を表す助動詞。英語の仮定法でも未来を表す助動詞が使われるように、未来を表す助動詞が仮定形として使われた。

④今・適・設・還・或・仮:「もシ~バ」と訓読する。

→現在や未来を表す副詞が仮定形で使われた。

⑤設令・設使・仮使・仮令・仮如・設如・設若・仮設:「もシ~バ」と訓読する。

→①~④合わせたもの。

⑥縦・縦令・縦使:「たとヒ」と訓読する。

→「縦」の意味は「思いのまま」「自由に」という意味。

→「縦S’V’、SV」は「自由にS’V’すればよい、しかしSV」という意味であり、「もし~であっても」という意味になった。

※「縦」は動詞のとき「ほしいままにス」と訓読する。

⑦設・設使・設令・仮使・仮如・設如・仮説:「たとヒ」と訓読する。

→2つの文を順接でつなげば「もシ」、逆接でつなげば「たとヒ」となる。

⑧正・正使:「たとヒ」と訓読する。

→「正」も「縦」も音読みは「ショウ」である。

⑨借・藉:「たとヒ」と訓読する。

→「借」が仮定の意味を持っており、「借(音読み:セキ)」と音の似ている「藉(音読み:ゼキ)」も仮定の意味を持った。

⑩任:「たとヒ」と訓読する。

→「~するに任せる」という意味から生じた(「縦」と同様)

⑪就・就使・就令

→「就」は「如(follow)」と同意語。

⑫雖:「いへどモ」と訓読する。

【例】

雖千万人吾往矣(千万人と雖も吾往かん)

※「雖」が挟まれている場合は、確定条件(~だがしかし……)となる。

【例】

門雖設而常関(門は設くと雖も常に関(とざ)せり)

→門は作ったけど、(来客がないので)いつも閉じている。

⑬苟:「いやしくモ」と訓読する。

→「苟」は「かりそめの」と言う意味の漢字であり、「仮」「借」と類義語。

⑭微:「なカリセバ」と訓読する。

→「微」は「細かく分けて目立たないようにする」という意味。

→「もし~がなければ」の意味になる。