①「何」は英語でいうところの5W1Hの全ての疑問を表すことができる。つまり、文脈によって品詞と意味が変わる。
【例】
何憂
→「何」は他動詞「憂」の目的語なので名詞。SVOの第3文型だが主語が省略され、倒置がおきてOVの形になっている。
吾何畏彼哉(吾何ぞ彼を畏れんや)
→「吾」は主語、「畏」は他動詞で「彼」が目的語、哉は「?」を表す漢字。よって「何」はwhyの意味の副詞。
→訓読に推量の助動詞「む(ん)」がついている場合は、反語となる。
今是何世(今は是れ何の世ぞ)
→「今」は主語、「是」はbe動詞、「何世」は名詞句で補語。よって、「何」は形容詞である。
→「いったい今はどんな時代なのだ」といったような意味。
②何以:by what, with what
→「どんな理由で~」「どんな方法で~」といった意味
③何為:for what, by what
→「どんな目的で~」「どんな理由で~」「どんな方法で~」といった意味
④烏・悪:ともに「いずくンゾ~」と訓読すると、反語を表す。「いずくニカ」と訓読するとwhereとなる。
→烏(カラス)が紛らわしいものの例えとして使われていたので、疑問を表すようになり、やがて反語となった、という説がある。
→「烏(音読み:ウ)」と音の似ている「悪(音読み:オ)」が「烏」と同じ意味を持つようになった。
⑤焉・安:ともに「いずくンゾ~」と訓読すると、反語を表す。「いずくニカ」と訓読するとwhereとなる。
→「焉」という漢字が「烏」と似ているところから、疑問を表すようになり、やがて反語となった、という説がある。
→「焉(音読み:エン)」と音の似ている「安(音読み:アン)」が「焉」と同じ意味を持つようになった。
⑥寧:「いずくンゾ」「なんゾ」と訓読し反語を表す。
⑦豈:「あニ」と訓読し反語を表す。
→「何以(音読み:カイ)」と音が似ている「豈(音読み:ガイ)」が疑問の意味を持ち、やがて反語となった。
☆「豈」を使った構文
豈~哉(あに~んや):どうして~であろうか、いやない。
豈独~哉(あにひとり~のみならんや):どうして~であろうか、いやない。
豈唯~哉(あにただに~のみならんや):どうして~であろうか、いやない。
⑧盍・蓋:「なんゾ~ざル」と訓読(再読文字)し反語を表す。
→「何不(音読み:カフ)」と音が似ている「盍・蓋(音読み:カフ)」が疑問の意味を持ち、やがて反語となった。
※この他にも疑問を表す漢字は多数あるが、音読みに注目すると、「何(音読み:カ)」「何以(音読み:カイ)」「何不(音読み:カフ)」「寧(音読み:ネイ)」に音が似ているものが多い。
⑨如何:「~ヲいかんセン」と訓読し、「どうしたらよいのか(疑問・反語)」を意味する。
※詳しくはこちら→「何如(いかん)」と「如何(いかんセン)」の違いの文法的説明(漢文文法)
⑩何如:「~ハいかん」と訓読し、「どうであるか、どうなるか」を意味する。
※詳しくはこちら→「何如(いかん)」と「如何(いかんセン)」の違いの文法的説明(漢文文法)
⑪若何=如何≒奈何
→「若」は「選択する」が原義で「従う(follow)」の意味になった。「奈」は「処理する(deal with)」という意味の他動詞。
⑫何若=何如
※「何奈」は存在しない。なぜなら「奈」は他動詞の用法しかないから。
※比較形で使う「若(ごとシ・しク)」「如(ごとシ・しク)」についてはこちら→比較形
※仮定形で使う「若(もシ)」についてはこちら→仮定形
⑬孰・誰
→「たれ(だれ)」だけでなく「なに」「いずれ」と訓読することもある。