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理想気体の状態方程式の使い方(理想気体とは何か、混合気体の考え方、計算の工夫の仕方についても解説しています)【化学計算の王道】

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

今回は、理想気体の状態方程式の使い方について解説します。

理想気体の条件

そもそも理想気体とは、

ⅰ)いくら温度を下げても液体にも固体にもならない気体のことであり、
ⅱ)また、気体分子どうしの分子間力がないものとみなし、
ⅲ)さらに気体分子自身の大きさは無視できるものとした気体のことです。

理想気体の条件は、この3つであるということは知っておきましょう。

理想気体の状態方程式

そして、この3つの条件を満たした理想気体は必ず

PV=nRT

の状態方程式を満たします。理想気体であれば、種類に関係なくこの式が成り立ちます。

Pは圧力であり、Vは体積です。ただし、体積というのは容器の容積を表しているということに注意しましょう。そしてnは気体分子の物質量、Rは気体定数でTは気体の絶対温度となります。

Vは容器の体積

このVについて補足すると、気体というものは容器の大きさに関わらず、その容器全体に広がっていきます。そのため小さい容器から大きい容器に同じ気体を移し替えたとしても、気体は容器全体に広がっていきます。

結局、気体の体積というものは、気体が入っている容器の大きさによって決まるのです。

容器に混合気体を入れた場合

さらに付け加えるならば、容器の容積をVとしたとき、この容器の中にAという気体とBという気体を混ぜた、いわゆる混合気体を容器の中に入れます。

すると、先ほど確認した通り、Aという気体は容器全体に広がっていきます。そして同様に、Bの気体の方も容器全体に広がっていきます。

ここでポイントとなるのは、AもBも理想気体であるので、分子間力がはたらかず、気体自身の大きさは無視できます。そのため、AとBは互いに影響し合うことがありません。

よって、AとBはお互い邪魔になることなく容器全体に広がっていきます。

したがって、Aの分圧をPA、Aの物質量をnA、Bの分圧をPB、Bの物質量をPBとしたとき、
PAV= nART
という状態方程式と、
PBV= nBRT
という状態方程式の2つを立てることができます。

このとき、このVはどちらも容器の容積なので、同じ値となります。

混合気体において、このVをAの占める体積と考え、「容器の一部分がAの体積で、残りをBの体積」といったように考えてしまうと、間違えてしまうので注意しましょう。

さらに、気体の種類に関係なく、この状態方程式は成り立つので、AとBを混ぜた混合気体を1つの気体と考えて状態方程式を立てることもできます。圧力はPA+PBつまり全圧とし、物質量はAとBを足したものとし、
(PA+PB)V=(nA+nB)RT
といった状態方程式を作ることができます。そして、このときも当然Vは容器の容積となります。

いかがでしょうか。状態方程式とは何か理解できたでしょうか。

ちなみに、実際の気体は理想気体の3つの条件を満たしません。そのような気体は実在気体と呼ばれています。

実在気体はこれらの条件を満たさないため、理想気体の状態方程式は成り立たないことに注意してください。

例題①:気体の状態変化

それでは、理想気体の状態方程式を計算でどのように使うかを確認します。

理想気体の状態方程式は、気体の状態が変わるときに使います。例題で確認してみましょう。

容積5.0Lの容器に圧力が1.0×105Paの気体を7.5Lつめると、同じ温度で容器内の圧力は何Paとなるかを求めてみます。

変化前と変化後の状態方程式を立てる

このように、気体の状態が変化する問題は変化前と変化後の状態方程式をそれぞれ立てることで解くことができます。

まずは容器につめる前の気体の状態方程式は、圧力が1.0×105で、体積が7.5L、そしてそれ以外の条件は、変化前と変化後で変わらないので、nRTとしておきます。

1.0×105[Pa]×7.5[L]= nRT

これが変化前の状態方程式です。

そして変化後の状態方程式は、変化後の圧力を求める問題なので、求めるものをPとおき、容器の容積は5.0Lです。そしてnRTは変化しないのでそのまま書きます。

P[Pa]×5.0[L]= nRT

これで変化後の状態方程式を立てることができました。

計算の工夫:辺々を割る

そして、この2つの方程式の辺々を割ります。

「辺々を割る」とは、左辺どうしを割ったものを左辺に書き、右辺どうしを割ったものを右辺に書くという計算方法です。イメージとしては、2つの方程式を並べた後に、分数の線を引いた式を書くといったイメージです。この「辺々を割る」という計算方法は、同種類の方程式が2つ並んだときに使うと計算が楽になることが多いので知っておきましょう。

(1.0×105×7.5)/(P×5.0)=nRT/nRT

このように辺々を割って分数の形にすると、約分がしやすくなります。そしてPで解くと、答えは1.5×105Paとなります。

状態方程式は、このように使います。

ボイルの法則と状態方程式

しかし、「この問題はボイルの法則を使って解くのではないか」と考えた人がいると思います。

ボイルの法則とは、温度が一定であれば「PV=一定」が成り立つという法則です。この問題では温度が変わらないとしてあるので、もちろんボイルの法則を使って解くこともできます。

解き方としては、(変化前のPV)=(変化後のP’V’)として、Pを求めるというやり方で解きます。

1.0×105×7.5=P×5.0

教科書やほとんどの問題集は、この問題の解き方はこのように書いてあると思います。

しかし、そもそも状態方程式は、ボイルの法則、シャルルの法則、そしてボイル・シャルルの法則を統合することで作られました。ゆえに、ボイルの法則が成り立っているときは、当然、状態方程式も成り立っており、シャルルの法則やボイル・シャルルの法則が成り立っているときも状態方程式は使えます。

そのため、この3つの法則のどの法則を使えばよいかすぐに判断できるときは、そちらを使ってもいいですし、判断するのが面倒であれば、状態方程式を2つ並べて書き、辺々を割って計算するというやり方で解いても構いません。

例題②:液体から気体への状態変化

それではもう1問例題を解いてみます。

1.0Lの液体のベンゼン(分子量78)があり、それを加熱して全て蒸気にします。そして、その気体のベンゼンの体積は1.0×105Pa、100℃のもとで何Lとなるかを求めてみましょう。ただし、液体のベンゼンの密度は0.88g/mlとし、気体定数R=8.3×103[Pa・L/K・mol]とします。

変化後の状態方程式を立てる

今回は気体の状態が変化するのではなく、液体から気体への変化となります。このような場合は、変化後の気体の状態方程式しか立てることができないので、求める体積をVとおき、変化後の状態方程式を立てます。

ポイントとしては液体から気体に状態変化をしたとしても、その物質量が変化することはないということです。そのため、状態方程式のnのところには、液体の状態の物質量を書きます。

この物質量を求めるときには、単位に注意しましょう。ベンゼンの分子量が78なので、今回のベンゼンのmol質量が78g/molとなります。そして密度がg/mLなので、1Lを103mLとし、密度とかけることで液体のベンゼンの質量が出ます。そして、その質量つまり[g]を、モル質量[g/mol]で割ることで、物質量[mol]を求めることができます。

このように理科の計算をするときは、そこまででどの単位になっているかをメモしながら計算するようにすると、正確に式を立てることができます。

そしてTは[℃]ではなく[K]であることに注意すれば、このベンゼンの気体となったときの状態方程式を立てることができます。

工夫しながら方程式を解く

あとはこれを計算するのですが、こういった方程式を計算するときのポイントは、まず求めるものだけを左辺にし、残りを全て右辺に分数の形で書きます。そして約分できるだけ約分をしていきます。

このような計算をするときは、まずできるだけ約分をしてから掛け算をして、最後に割り算をするようにしましょう。

1.0×105×V=(0.88×103)/78×R×(100+273)

V=(0.88×103×8.3×103×373)/(78×105)=349…≒3.5×102L

すると、有効数字2桁で答えると、答えは3.5×102Lとなります。

いかがだったでしょうか。今回ご紹介した理想気体の状態方程式の考え方や使い方を理解するだけではなく、計算のやり方も真似をするようにしてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

理想気体の状態方程式を使った計算

気体の性質(理論化学)知識テスト

(4)理想気体の状態方程式の解説一覧

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(5)気体の状態変化(熱力学)の解説一覧

気体の状態変化(熱力学)公式

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(6)参考(化学)

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