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気体の燃焼(開放系)の計算の応用問題(複雑に見える問題でも1つの方程式にすることができます)【化学計算の王道】

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

開放系の気体の燃焼の計算問題のポイント

今回は開放系の計算の応用問題を解きます。開放系の気体の燃焼の基本的な考え方については理解できでいる前提で話を進めていきます。もし理解が不十分な場合は、まずそちらの解説をご覧になってください。

簡単に開放系の気体の燃焼の計算問題のポイントを確認します。ポイントは、化学反応式の係数の比は物質量の比になるという原則です。この原則を使って方程式を立てていきます。

今回解く問題

それでは早速問題を解いていきます。今回は以下の問題を解きます。

ある自動車は走行に伴って2.1g/kmの割合でNOを排出し、燃料1Lあたり10km走行できるとする。また、この自動車は燃料を完全燃焼するための空気(窒素と酸素の体積比は4:1)を外部から取り入れるものとする。ただし燃料はオクタンC8H18だけと仮定し、その密度を1.14kg/Lとする。以下の問いを有効数字3桁で答えよ。原子量をそれぞれH=1、C=12、N=14、 O=16とします。

1.まず1つ目の設問は、この自動車が100kmの距離を走行したとき、燃料を完全燃焼するのに何molの空気が必要か求めてみます。

2.次に2つ目の設問は、この自動車が100kmの距離を走行したとき、取り入れた空気中の窒素のうち何%が一酸化窒素へ変換されたか求めてみます。また、この窒素から一酸化窒素への変換のために余分に必要とする空気は何molか求めてみます。

以上が今回解く問題です。少し長めに感じるかもしれませんが、しっかりと順番に単位を変換していけば確実に方程式を立てることができます。

設問1の解説

それでは1つ目の答案を確認していきます。以下が設問1の答案になります。

設問1では、100km走行するときに自動車が取り入れる空気の物質量を求めます。とりあえずまずオクタンのモル質量を求めてみると、C8H18:12×8+18=96+18=114g/molとなります。

そして次に、オクタンの燃焼の化学反応式を書きます。そもそも自動車が空気を取り入れるのは、燃料つまりオクタンを燃焼するのに酸素が必要だからです。自動車は取り入れた空気中の酸素を使ってオクタンを燃焼させ、走行しているのです。したがって、100km走行するために必要な空気の物質量を求めるためには、どれだけの酸素がオクタンの燃焼で使われたかを求める必要があるので、オクタンの燃焼の化学反応式を作らないといけないのです。

それでは、オクタンの燃焼の化学反応式の作り方を簡単に確認すると、左辺にオクタンと酸素を書き、右辺に二酸化炭素と水を書きます。まず炭素の数をそろえて、次に水素の数をそろえて、最後に酸素の係数で調整すれば、オクタン燃焼の化学反応式は

C8H18+25/2O2 → 8CO2+9H2O

のようになります。このとき、酸素の係数が分数になっても構いません。

オクタンの燃焼の化学反応式ができたら、次は求める空気の物質量をnとし、今回自動車が100km走行するために必要な燃料を燃焼するために使った酸素の物質量で方程式を立てます。

まずは左辺から確認していきます。問題文よりこの自動車は1Lあたり10km走行できるとあるので、100km走行するためには100/10Lの燃料が必要となります。そして今回燃料は全てオクタンであるとしていたので、燃料つまりオクタンの体積にオクタンの密度をかけることでオクタンのkgとなります。それに103をかけることでオクタンのgになります。さらにモル質量で割ることでオクタンの物質量となります。そして燃焼の化学反応式を見るとオクタンと酸素の係数の比が1:25/2なので、×25/2をすることで酸素の物質量になります。

続いて右辺ですが、今回空気は窒素と酸素が4:1の体積比なので、空気の物質量に1/5倍することで酸素の物質量になります。

これで両辺が今回の燃焼で使った酸素の物質量の方程式となります。

あとはこの方程式を解いていきます。求めるものだけを左辺にして残りを全て右辺に集め、約分できるだけ約分をしていきます。そして、有効数字が3桁になるようにして答えると、答えは6.25×103molとなります。

設問2前半の解説

2つ目の設問を解きます。

もう一度問題を確認します。この自動車は1km走るごとに2.1gの一酸化窒素を排出し、燃料つまりオクタン1Lあたり10km走行できます。今回取り入れる空気は窒素と酸素が4:1で構成されています。その上で設問1と同じ距離走行したとき取り入れた空気中の窒素のうち何%が一酸化窒素へ変換されたか求めてみましょう。また、この窒素から一酸化窒素への変換のために必要とされる空気が何molかも求めてみましょう。

それでは2つ目の設問の前半を解きます。一酸化窒素のモル質量は30g/molで、窒素が燃焼して一酸化窒素ができる化学反応式は

N2+O2 → 2NO

です。今回の問題では、窒素の一部が一酸化窒素に変換しています。これは燃料を燃焼させるために取り入れた空気のうちの窒素の一部が燃焼して、一酸化窒素になったということなのです。そのため、設問2は窒素の燃焼を考えて問題を解かないといけません。

以上を踏まえて、求める百分率をa(%)として、100km走行したときに排出した一酸化窒素の物質量で方程式を立てます。

まずは左辺を確認します。先ほど求めた取り入れた空気の物質量に4/5をかけることで取り入れた窒素の物質量とします。空気は窒素と酸素が4:1の体積比なので、空気の物質量に4/5をかけることで窒素の物質量となります。そして、取り入れた窒素が全て一酸化窒素になったわけではないので、その割合をかけます。つまり今回はa/100をかけることで、一酸化窒素に変化した窒素の物質量となります。そして化学反応式をみると、窒素と一酸化窒素の係数の比が1:2になっているので、×2をすることで排出された一酸化窒素の物質量となります。

続いて右辺ですが、こちらは問題文にこの自動車は1kmあたり2.1g一酸化窒素を排出すると書いてあるので、2.1g/kmに今回走行した100kmをかけます。すると今回排出した一酸化窒素の質量となり、一酸化窒素のモル質量(30g/mol)で割ることで、一酸化窒素の物質量となります。

これで方程式が出来たので、あとはこの方程式を解いていきます。

求めたいものものだけを左辺にして、残りを全て右辺に集めます。約分できるだけ約分していくと、0.7/1.25×4×2となり、1.25×8は10なので0.7×10−1となります。1.25×8が10になることは覚えておきましょう。あとは有効数字3桁になるようにすると、答えは7.00×10−2%となります。

つまりこれは、自動車が走行するための燃料を燃焼するために取り入れた空気のなかの窒素の0.07%が一酸化窒素となり、排出されているということになります。

設問2後半の解説

それでは設問2の後半を解きます。設問2の後半は、取り入れた窒素の一部が一酸化窒素になるときに、必要となる空気の物質量を求めます。

先ほども確認したとおり、取り入れた窒素の一部は燃焼して一酸化窒素に変化しています。そのため、今回求めるのはこの燃焼に必要な空気の物質量ということになります。

それでは求める空気の物質量をnとして、この窒素の燃焼に必要な酸素の物質量で方程式を立てます。

まずは左辺を確認します。問題文よりこの自動車は1km走行するごとに2.1gの一酸化窒素を排出するので、2.1g/kmに100kmをかけることで、今回排出した一酸化窒素のgになります。それを一酸化窒素のモル質量で割ることで、今回排出した一酸化窒素の物質量となります。そして化学反応式を見ると、一酸化窒素と酸素の係数の比は2:1なので、×1/2をすることで今回窒素を燃焼するのに必要な酸素の物質量となります。

そして右辺ですが、窒素と酸素の体積比が4:1なので、今回窒素の燃焼するために余分に取り入れた空気の物質量に1/5をかけることで、窒素の燃焼に必要な酸素の物質量となります。

これで方程式ができたので、あとはこの方程式を解いていきます。左辺を求めたいものだけにして残りを全て右辺に集め、約分して整理すると3.5/2×10となり、有効数字が3桁になるように答えると、答えは17.5molとなります。

つまり設問1で物質量を求めた空気のうちの酸素は、全て燃料であるオクタンの燃焼に使い、そのときに取り入れた窒素を燃焼するために、余分に17.5mol空気を取り入れなければいけないということになります。

いかがだったでしょうか。今回はあえて1つの方程式になるように答案を作りました。もちろん何段階かに分けて求めてもいいのですが、単位の変換をマスターするためにもぜひ1つの方程式で解くという答案の作り方を練習してみてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

気体の燃焼の計算

(4)気体の燃焼の解説一覧

気体の燃焼(開放系)の計算(化学反応式を使った計算の仕方、燃焼の化学反応式の作り方についても解説しています)

気体の燃焼(開放系)の計算の応用問題(複雑に見える問題でも1つの方程式にすることができます)

気体の燃焼(閉鎖系)の計算(気液平衡とは何か、飽和蒸気圧の使い方、液体が存在するかどうかの判断の方法についても解説しています)

気体の燃焼後に生じる水の質量を求める問題の解法

(5)参考

化学変化と化学反応式(化学基礎)の解説・授業・知識・演習問題一覧

気体の性質(理論化学)の解説・授業・知識・演習問題一覧

化学計算の王道(化学基礎)

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「化学計算の王道」シリーズは『思考訓練の場としての体系化学』(GHS予備校)を参考にしています。

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