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揮発性酸遊離反応を解説します!(そもそも揮発性酸遊離反応とは何か、塩化水素HClの発生、フッ化水素HFの発生、揮発性酸遊離反応は弱酸遊離の一種?についても解説します)【化学反応式の王道】

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(2)解説授業の原稿

揮発性酸遊離反応とは?

今回は、揮発性酸遊離反応について解説します。

揮発性酸遊離反応とは、

揮発性の酸の塩 + 不揮発性酸 → 揮発性酸↑ + 不揮発性酸の塩

このように、揮発性の酸の塩に不揮発性の酸を加えると、揮発性の酸が発生する反応のことです。

揮発性とは蒸発しやすい性質、つまり、気体になりやすい性質のことで、不揮発性の酸は主に濃硫酸を使います。また、この反応をさせるときは、基本的に加熱します。

よって、この反応を簡単に言うと、蒸発しやすい酸を含む物質に濃硫酸を加えて加熱すると、その蒸発しやすい酸が気体となって発生するという反応なのです。

ポイントは、濃硫酸を加えて加熱することで、揮発性の酸を気体として追い出しているということです。つまり、問題文に「濃硫酸を加えて加熱する」と書いてあれば、この揮発性酸遊離反応ではないかと疑ってみてください。

揮発性酸遊離反応の代表例

それでは、揮発性酸遊離反応の例を確認しましょう。高校の無機化学の範囲で知っておかないといけない揮発性酸遊離反応は、以下の2つです。

塩化水素の発生:NaCl + H2SO4 → HCl↑ + NaHSO4

まずは、塩化水素の発生を確認します。塩化ナトリウムに濃硫酸を加えて加熱すると、塩化水素が気体となって発生します。

塩化水素は沸点が非常に低く揮発性を持っています。その揮発性の酸である塩化水素の塩の塩化ナトリウムに、濃硫酸を加えて加熱すると、揮発性の酸である塩化水素が発生します。

この反応で少し注意したいのが、右辺の不揮発性の酸の塩が、硫酸ナトリウムNa2SO4ではなく、硫酸水素ナトリウムNaHSO4になるということです。

フッ化水素の発生:CaF2 + H2SO4 → 2HF↑ + CaSO4

続いて、フッ化水素の発生を確認します。フッ化カルシウムに濃硫酸を加えて加熱すると、フッ化水素が気体となって発生します。

フッ化水素は常温では気体となっているので、揮発性があると言えます。よって、揮発性の酸であるフッ化水素の塩のフッ化カルシウムに、濃硫酸を加えて加熱すると、揮発性の酸であるフッ化水素が気体となって発生します。

参考書によっては、フッ化カルシウムのところにホタル石と書いてあることがあります。ホタル石とはフッ化カルシウムを主成分に持つ鉱物のことです。こちらも覚えておきましょう。

以上が、大学受験に関して揮発性酸遊離反応で知っておかないといけない知識です。これらを押さえておけば、大学受験の揮発性酸遊離反応に関しては問題ありません。

揮発性酸遊離反応は弱酸遊離反応?

ただ今回は、より理解を深めるためにもう少しだけ補足しておきます。

特にフッ化水素の発生の反応を見たときに、「この反応は弱酸遊離の反応ではないのか」と考えた方はいないでしょうか。

フッ化水素の発生:CaF2 + H2SO4 → 2HF↑ + CaSO4

そうなのです。実は、揮発性酸遊離反応は、弱酸遊離で説明することもできるのです。

フッ化水素は弱酸で、硫酸は強酸です。つまり、弱酸であるフッ化水素の塩のフッ化カルシウムに、強酸である硫酸を加えることで、弱酸のフッ化水素が遊離していると、この反応を考えることもできます。

実際に、この反応は加熱しなくても、反応が続きます。それはつまり、フッ化水素の揮発性という性質を利用しなくても反応が続くということなので、揮発性酸遊離反応は、実際は、弱酸遊離の理論で反応が進行しているということなのです。

ちなみに、塩化水素の発生の方も弱酸遊離の理論で反応が起きています。

塩化水素の発生:NaCl + H2SO4 → HCl↑ + NaHSO4

塩化水素は水に溶けると強酸(塩酸)となり、硫酸と同程度の強さの酸となります。しかし、水が少ない濃硫酸という状態であれば、硫酸は塩酸よりも強い酸となります。

よって、より弱いほうの酸の塩に、より強いほうの酸を加えることで、弱いほうの酸が遊離するという弱酸遊離の理論でこの反応が起きていると考えることができます。

この塩化水素の発生の反応が、弱酸遊離の理論によって起きていることを考えると、右辺の不揮発性の酸の塩が、硫酸ナトリウムNa2SO4ではなく、硫酸水素ナトリウムNaHSO4であるということが理解しやすくなると思います。

つまり、硫酸は、以下のように2段階の電離をするわけですが、

H2SO4 → H+ + HSO4
HSO4 ⇄ H+ + SO42-

1段階目の電離は起きやすく、2段階目の電離はとても起きにくいので、塩酸という強酸を相手にする反応においては、2段階目の電離がほとんど起きず、硫酸水素塩となるのです。

以上をまとめると、揮発性酸遊離反応は、結局のところ、弱酸遊離の理論によって起きている反応で、揮発性酸遊離反応は、弱酸遊離の一種であるということになります。

では、なぜわざわざ「揮発性酸遊離反応」のように名前がついているのでしょうか。

ポイントはやはり、濃硫酸で加熱するということです。つまり、水が少ない濃硫酸を使うことで、発生する気体が水に溶けることがなく、さらに揮発性の酸は加熱することで気体になりやすいので、捕集がしやすいのです。

したがって、揮発性の酸を発生させるときは、濃硫酸を加えて加熱すれば、弱酸遊離の理論で反応を起こすことができ、かつ、捕集しやすくなるのです。

いかがだったでしょうか。揮発性酸遊離反応について理解できたでしょうか。ただ化学反応式だけを覚えるのではなく、なぜこの反応が起きているのかを知れば、より理解が深まると思います。

ちなみに、弱酸遊離の原理は別の動画で詳しく解説しているので、ぜひそちらもご覧になってください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

揮発性酸遊離反応の化学反応式テスト

(4)化学反応式の王道(中和と塩)の解説一覧

【塩の加水分解の化学反応式一覧】

塩の加水分解と弱酸遊離の原理(弱酸の性質によって起きる現象)

塩の水溶液の液性(硫酸水素カリウムの水溶液の液性が酸性になる理由についても解説しています)

【弱酸遊離反応・弱塩基遊離反応の化学反応式】

塩の加水分解と弱酸遊離の原理(弱酸の性質によって起きる現象)

【揮発性酸遊離反応の化学反応式】

揮発性酸遊離反応を解説します!(そもそも揮発性酸遊離反応とは何か、塩化水素の発生、フッ化水素の発生、揮発性酸遊離反応は弱酸遊離の一種?についても解説します)

(5)参考

無機化学の解説動画・授業動画一覧

無機化学知識一覧

化学反応式の王道(理論化学・無機化学)

化学反応式一覧(理論化学・無機化学)

化学計算の王道(化学基礎・理論化学)

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化学の語呂合わせ(化学基礎・理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物)

化学学習に必要な参考書・問題集

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