(1)打消の助動詞「ず」
①活用表(特殊型、形容詞の活用に似ている)
※右を基本活用(または本活用)、左を補助活用という。下に助動詞が接続するときは補助活用を用いる。
- 補助活用が文法的に重要な理由を解説します!
- 「ぬ」「ね」の識別についてはこちら→「ぬ」「ね」の識別(打消の助動詞「ず」、完了・強意の助動詞「ぬ」)
②接続
→未然形接続
※「弱い助動詞」の分類。
③意味
→打消(~ない)
☆解説授業
→打消の助動詞「ず」の解説(補助活用が文法的に重要である理由についても解説しています)
(2)過去の助動詞「き」「けり」
①活用表(「き」:特殊型、「けり」:ラ変型)
※「き」の未然形「せ」は反実仮想の構文「~せば……まし」(もし~ならば……なのに)でのみ用いる。
- 反実仮想の構文についてはこちら→反実仮想の助動詞「まし」の意味と訳し分け(反実仮想・ためらいの意志・反実の願望の訳し分けについて解説しています)
※「けり」の未然形「けら」は上代(奈良以前)にのみ見られる。
②接続
→連用形接続(「き」はカ変とサ変には未然形にも接続)
※「過去・完了の助動詞」の分類。
③意味
→「き」:過去(~した)
→「けり」:過去(~した)、詠嘆(~だったなあ)
※詠嘆は和歌の中でよく使われる。
- 「き」は直接体験した過去を表しており、「けり」は伝聞して聞いた過去を表している。
☆解説授業
→過去の助動詞「き」「けり」の解説(「~せば……まし」の構文についても解説しています)
(3)完了・強意の助動詞「つ」「ぬ」
①活用表(「つ」:下二段型、「ぬ」:ナ変型)
- 「ぬ」「ね」の識別についてはこちら→「ぬ」「ね」の識別(打消の助動詞「ず」、完了・強意の助動詞「ぬ」)
- 「に」の識別についてはこちら→「に」の識別(完了・存続の助動詞「ぬ」の連用形、断定の助動詞「なり」の連用形、格助詞「に」、接続助詞「に」、単語の一部)
②接続
→連用形接続
※「過去・完了の助動詞」の分類。
③意味
→完了(~した、~してしまった)、強意(きっと~、~してしまう)、並列(~たり)
※強意になるパターン8つは覚える→「てむ・なむ・つべし・ぬべし・つらむ・ぬらむ・てまし・なまし」
※命令形のときも強意(~してしまえ)の意味になりやすい。
※「~つ……つ」または「~ぬ……ぬ」の形で「~したり……したり」と訳す。並列の意味が載っていない参考書もあるが、知っておいたほうがよい。
☆解説授業
→完了の助動詞「つ」「ぬ」「たり」「り」の接続と意味(「つ」「ぬ」が強意の意味になるパターン、「たり」「り」が存続の意味になりやすいとき、「つ」「ぬ」の並列の意味についても解説しています)
(4)完了・存続の助動詞「たり」「り」
①活用表(ラ変型)
- 「ら」「る」「れ」は識別に注意→「る」「れ」「らむ」の識別(受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」、完了・存続の助動詞「り」、現在推量の助動詞「らむ」)
②接続
→「たり」:連用形接続
※「過去・完了の助動詞」の分類。
→「り」:サ変には未然形・四段には已然形(「サミシイ」という語呂合わせがある)
※「e」の音に接続すると知っておくと識別がしやすくなる。詳しくはこちら→「る」「れ」「らむ」の識別(受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」、完了・存続の助動詞「り」、現在推量の助動詞「らむ」)
③意味
→完了(~した、~してしまった)、存続(~している)
※体言に接続するとき、存続の意味になりやすい。
☆解説授業
→完了の助動詞「つ」「ぬ」「たり」「り」の接続と意味(「つ」「ぬ」が強意の意味になるパターン、「たり」「り」が存続の意味になりやすいとき、「つ」「ぬ」の並列の意味についても解説しています)
(5)推量の助動詞「む」「むず」
①活用表(む:四段型、むず:サ変型)
②接続
→未然形接続
※「弱い助動詞」の分類。
③意味
→推量(~だろう)、意志(~しよう)、適当・勧誘(~したほうがよい)、婉曲(~のような)、仮定(もし~なら)
※「スイカカエテ」という語呂合わせがある。
※主語が一人称なら意志、主語がニ人称なら勧誘・適当、主語が三人称なら推量の意味になりやすい。
※下に体言がつくときは、婉曲の意味になることがほとんど。
☆解説授業
→推量の助動詞「む・むず・じ・らむ・けむ・べし・まじ」の活用・接続・意味(訳し分けのポイント、婉曲の意味についても解説しています)
(6)打消推量の助動詞「じ」
①活用表(特殊型)
②接続
→未然形接続
※「弱い助動詞」の分類。
③意味
→打消推量(~ないだろう)、打消意志(~すまい、~しないようにしよう)
※「む」を打ち消したものが「じ」
☆解説授業
→推量の助動詞「む・むず・じ・らむ・けむ・べし・まじ」の活用・接続・意味(訳し分けのポイント、婉曲の意味についても解説しています)
(7)現在推量の助動詞「らむ」、過去推量の助動詞「けむ」
①活用表(四段型)
- 「らむ」の識別についてこちら→「る」「れ」「らむ」の識別(受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」、完了・存続の助動詞「り」、現在推量の助動詞「らむ」)
②接続
→「らむ」:終止形接続(ラ変には連体形接続)
※「強い助動詞」の分類。
→「けむ」:連用形接続
※「過去・完了の助動詞」の分類。
③意味
→「らむ」:現在推量(~しているだろう)、現在の婉曲(~しているような)、現在の伝聞(~しているという)
※下に体言がつくときは、婉曲の意味になることがほとんど。
→「けむ」:過去推量(~ただろう)、過去の婉曲(~たような)、過去の伝聞(~したという)
※下に体言がつくときは、婉曲の意味になることがほとんど。
☆解説授業
→推量の助動詞「む・むず・じ・らむ・けむ・べし・まじ」の活用・接続・意味(訳し分けのポイント、婉曲の意味についても解説しています)
(8)推量の助動詞「べし」
①活用表(形容詞型)
※右の活用を基本活用(または本活用)、左の活用を補助活用という。下に助動詞が接続するときは、補助活用を使う。
②接続
→終止形接続(ラ変には連体形接続)
※「強い助動詞」の分類。
③意味
→推量(~だろう)、意志(~しよう)、可能(~できる)、当然(~のはずだ)、命令(~しなさい)、適当(~するのがよい)、予定(~することになっている)、義務(~しなければならない)
※「スイカトメテ」や「カイスギトメテヨ」といった語呂合わせがある
※「べし」には婉曲の意味はないので注意。
※「べし」は当然の意味になることが多い。
☆解説授業
→推量の助動詞「む・むず・じ・らむ・けむ・べし・まじ」の活用・接続・意味(訳し分けのポイント、婉曲の意味についても解説しています)
(9)打消推量の助動詞「まじ」
①活用表(形容詞型)
※右の活用を基本活用(または本活用)、左の活用を補助活用という。下に助動詞が接続するときは、補助活用を使う。
②接続
→終止形接続(ラ変には連体形接続)
※「強い助動詞」の分類。
③意味
→打消推量(~ないだろう)、打消当然(~なずがない)、禁止(~するな)、不適当(~しないほうがよい)、打消意志(~しないようにしよう、~すまい)、不可能(~できない)
※「べし」を打消が「まじ」。
☆解説授業
→推量の助動詞「む・むず・じ・らむ・けむ・べし・まじ」の活用・接続・意味(訳し分けのポイント、婉曲の意味についても解説しています)
(10)推定の助動詞「らし」
①活用表(特殊型)
②接続
→終止形接続(ラ変には連体形接続)
※「強い助動詞」の分類。
③意味
→推定(~らしい)
☆解説授業
→推定の助動詞「らし・なり・めり」の解説(撥音便・撥音便無表記についても解説しています!)
(11)伝聞・推定の助動詞「なり」
①活用表(ラ変型)
- 「なり」の識別についてはこちら→「なり」の識別(四段活用動詞「なる」の連用形、伝聞・推定の助動詞「なり」、断定の助動詞「なり」)
②接続
→終止形接続(ラ変には連体形接続)
※「強い助動詞」の分類。
③意味
→伝聞(~だそうだ、~という)、推定(~のようだ)
※「なり」の語源は「音あり」。つまり、音を聞いて推定している。
※人づてに聞いたら伝聞、その場で音を聞いたら推定の意味になる。
☆解説授業
→推定の助動詞「らし」「なり」「めり」の解説(撥音便・撥音便無表記についても解説しています!)
(12)推定の助動詞「めり」
①活用表(ラ変型)
②接続
→終止形接続(ラ変には連体形接続)
※「強い助動詞」の分類。
③意味
→推定(~のようだ)、婉曲(~のような)
※「めり」の語源は「見あり」。つまり、目で見たもので推定している。
※下に体言がつくときは、婉曲の意味になることがほとんど。
☆解説授業
→推定の助動詞「らし」「なり」「めり」の解説(撥音便・撥音便無表記についても解説しています!)
(13)断定の助動詞「なり」「たり」
①活用表(形容動詞型)
- 「なり」の識別についてはこちら→「なり」の識別(四段活用動詞「なる」の連用形、伝聞・推定の助動詞「なり」、断定の助動詞「なり」)
- 「に」の識別についてはこちら→「に」の識別(完了・存続の助動詞「ぬ」の連用形、断定の助動詞「なり」の連用形、格助詞「に」、接続助詞「に」、単語の一部)
②接続
→「なり」:体言または連体形に接続(助詞や副詞にも接続する)
→「たり」:体言にのみ接続
③意味
→「なり」:断定(~だ、~である)、存在(~にある、~にいる)
※場所を示す名詞の下に「なり」がついていたら存在の意味になる。
→「たり」:断定(~だ、~である)
☆解説授業
→断定の助動詞「なり」「たり」の意味と接続(「なり」の存在の意味、断定の「なり」の連用形「に」の使い方についても解説しています)
(14)受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」
①活用表(下二段型)
②接続
→未然形接続
③意味
→受身(~れる)、尊敬(~なさる)、自発(自然と~する、~せずにはいられない)、可能(~できる)
※「思ふ・思ひ出づ・泣く・笑う」など心の動きを表す動詞についたときに、自発の意味になりやすい。
※尊敬語を伴うときは、尊敬の意味にならない。
※鎌倉中期(徒然草)まで、「る」「らる」が可能の意味になるときは、打消を伴わないといけない(鎌倉中期以降は、打消を伴わずに単独で可能の意味を表すことができる)
※無生物が主体のときは、受身の意味になりにくい(なることもある)。
☆解説授業
→受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」の意味と訳し分けのポイント
(15)使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」
①活用表(下二段型)
②接続
→未然形接続
③意味
→使役(~させる)、尊敬(~なさる)
※「す」「さす」「しむ」が尊敬の意味になるときは、尊敬語を伴わないといけない(「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」などの形になる)。二重敬語(最高敬語)といい、その文章で最も身分が高い人に使われる。ただし、必ずしも天皇に使われるというわけではない。
☆解説授業
→使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」の意味と訳し分け(二重敬語(最高敬語)についても解説しています)
(16)反実仮想の助動詞「まし」
①活用表(特殊型)
②接続
→未然形接続
※「弱い助動詞」の分類。
③意味
→反実仮想(もし~ならば……だろうに)、ためらいの意志(~しようかなあ)、反実の願望(~ならいいのに)
※反実仮想の構文がなくて、疑問語(「誰」「何」「いづれ」「いかに」「いかが」「や」「か」など)を伴うときは、ためらいの意志の意味になる。
※反実仮想の構文がなく、疑問語もないときは、反実の願望の意味になる。
【反実仮想(もし~ならば……だろうに)の基本構文】
→「~ましかば……まし」「~ませば……まし」「~せば……まし」「未然形+ば……まし」
☆解説授業
→反実仮想の助動詞「まし」の意味と訳し分け(反実仮想・ためらいの意志・反実の願望の訳し分けについて解説しています)
(17)願望の助動詞「まほし」「たし」
①活用表(形容詞型)
※右の活用を基本活用(または本活用)、左の活用を補助活用という。助動詞に接続するときは左側の補助活用を使う。
※「まほし」は平安時代によく使われており、「たし」は鎌倉時代以降使われるようになる。
②接続
→「まほし」:未然形接続
※「弱い助動詞」の分類。
→「たし」:連用形接続
③意味
→願望(~したい)
☆解説授業
(18)比況の助動詞「ごとし」
①活用表(形容詞型)
②接続
→体言・連体形・格助詞「が」「の」に接続
※現代語と同じ感覚で接続できるので、そこまで気にする必要もない。
③意味
→比況(~のようだ)
※この他に、類似、同等、例示などの意味が書いてあることもあるが、すべて「~のようだ」と訳せば問題ないので、細かい分類は気にしなくてよい。
☆解説授業
~参考~
☆活用形の考え方の順番(①活用語の下を見る、②係り結び、③活用表)
☆動詞(古文)の活用表一覧(四段活用・上一段活用・下一段活用・上二段活用・下二段活用・ナ変・ラ変・カ変・サ変)
☆古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)
☆古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)
☆テーマ別に古文単語をまとめています→古文単語