動詞(古文)で注意すべきこと(活用の種類、活用を覚える動詞、ア行・ヤ行・ワ行の区別の方法)【古文文法のすべて】

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今回は古文文法における動詞の解説をします。

古文の動詞の活用9種類

古文の動詞には9種類の活用があるので、まずそちらを確認します。

9種類の活用とは、四段活用・上一段活用・下一段活用・上二段活用・下二段活用・ナ行変格活用・ラ行変格活用・カ行変格活用・サ行変格活用の9種類の活用のことです。

それぞれどのように活用するか確認していきます。未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形の順番で、

四段活用は「a・i・u・u・e・e」
上一段活用は「i・i・iる・iる・iれ・iよ」
下一段活用は「e・e・eる・eる・eれ・eよ」
上二段活用は「i・i・u・uる・uれ・iよ」
下二段活用は「e・e・u・uる・uれ・eよ」
ナ行変格活用は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」
ラ行変格活用は「ら・り・り・る・れ・れ」
カ行変格活用は「こ・き・く・くる・くれ・こ(こよ)」
サ行変格活用は「せ・し・す・する・すれ・せよ」

と活用します。これらの活用は何回か声に出して覚えるようにしましょう。

特にナ変・ラ変・カ変・サ変の4つは変格活用と呼ばれており、特殊な活用をするので覚えるしかありません。

四段活用・上一段活用・下一段活用・上二段活用・下二段活用の覚え方

ただ、四段活用・上一段活用・下一段活用・上二段活用・下二段活用の5つの活用は名前の意味を知っておけば、活用が覚えやすくなります。

四段活用の「四」は、「a・i・u・e」の4つの音という意味なので、「a・i・u・e」の4つの音を使った活用となっています。

上一段活用の「上」とは、「u」の上の音つまり「i」のことなので、「i」の音だけを使った活用となっています。

下一段活用の「下」とは、「u」の下の音つまり「e」のことなので、「e」だけを使った活用となっています。

また、上二段活用の「上二」とは、「i」の音と「u」の音の2つの音という意味なので、「i」と「u」の2つの音を使った活用となっています。

そして、下二段活用の「下二」とは、「e」の音と「u」の2つの音という意味なので、「e」と「u」の2 つの音を使った活用となっています。

このように言葉の意味を知っておけば活用が覚えやすくなると思います。

活用の種類の判別方法

それでは次は、その動詞がどの活用の種類なのかの判別の仕方を確認します。

まずはどの活用になるのかを覚えておかないといけない動詞がいくつかあります。具体的にどの動詞を覚えなくてはいけないのかは後で確認しますが、下一段活用・上一段活用・ナ行変格活用・ラ行変格活用・カ行変格活用・サ行変格活用の動詞は基本的に覚えておかなくてはいけません。

四段活用と上二段活用と下二段活用の判別方法

そのため、これらの活用は動詞を見ることで判断することができますが、四段活用と上二段活用と下二段活用は動詞を見ただけでは判別することができない場合もあります。

そういった場合は「ず」を使って判別してみます。

「ず」は「~ない」という打消の意味の助動詞であり、未然形接続、つまり上の単語が未然形であることを要求する助動詞なので、動詞に「ず」を付けてみることで、その動詞の未然形がどのような形なのか分かるようになります。

「思ふ」「起く」「数ふ」の活用を判別する

例えば、「思ふ」という動詞に「ず」を付けてみると「思はず」となり、「思は」の「は」が「a」の音に変化しているので、「思ふ」は四段活用であると判断することができるようになります。

さらに「思ふ」の「ふ」の部分が変化しているので、「ふ」の部分が活用語尾であると判断することができ、活用語尾がハ行なので「思ふ」はハ行四段活用動詞となります。

同様に「起く」の場合は、「ず」を付けてみると「起きず」となり、「起き」の「き」が「i」の音となっているので上二段活用と判断することができ、活用語尾がカ行なので、「起く」はカ行上二段活用動詞となります。

そして「数ふ」の場合は「ず」をつけてみると「数へず」となり、「数へ」の「へ」が「e」の音となっているので下二段活用と判断することができ、活用語尾がハ行なので、「数ふ」はハ行下二段活用動詞となります。

古文に可能動詞は存在しない

ただし注意点として、古文には可能動詞は存在しません。

可能動詞とは「思へる」や「言へる」といった動詞のことで、現代語では「思える」や「言える」といった可能動詞はありますが、古文では存在しません。

そのため「思ふ」の未然形が「思へず」となることはありません。このことには注意しておきましょう。

活用を覚えておかないといけない動詞

それでは活用を覚えておかないといけない動詞を確認します。

下一段活用動詞

まずは、「蹴る」です。「蹴る」は唯一の下一段活用動詞となります。「蹴る」以外に下一段活用動詞はありません。

下一段なので「け・け・ける・ける・けれ・けよ」と活用します。

上一段活用動詞

次に、「干る・射る・着る・似る・見る・居る」です。これらは上一段活用動詞となります。この他にも上一段活用動詞はいくつかありますが、よく出るこの6つを覚えておきましょう。

よく「ひいきにみゐる」といった語呂合わせで覚えます。また、「きみにいゐひ」といった語呂合わせもあります。

上一段活用なので、例えば「見る」であれば「み・み・みる・みる・みれ・みよ」と活用します。

ナ行変格活用動詞(ナ変)

次は、「往(去)ぬ」「死ぬ」です。この2つはナ行変格活用動詞となります。ナ変はこの2つ以外にありません。

活用は、例えば「往ぬ」であれば「往な・往に・往ぬ・往ぬる・往ぬれ・往ね」となります。

ラ行変格活用動詞(ラ変)

次は、「あり・をり・はべり・いますがり」です。この4つはラ行変格活用動詞となります。ラ変動詞はこの4つ以外にありません。「いますがり」は「いまそがり」と読むこともあります。

ラ変動詞の注意点として、終止形の語尾が「u」の音ではなく、「り」になっていることに注意しましょう。

活用は、例えば「あり」の場合は、「あら・あり・あり・ある・あれ・あれ」となります。

カ行変格活用動詞(カ変)

そして、「来」はカ行変格活用動詞です。カ変動詞は「来」しかありません。

カ変の活用は「こ・き・く・くる・くれ・こ・こ(こよ)」となります。

注意点としては命令形が2種類になることもあるということと、「こ」と「き」と「く」は一文字なので漢字にすると全て同じ表記(「来」)になってしまうということです。

サ変格活用動詞(サ変)

続いて、「す」「おはす」です。この2つはサ行変格活用動詞となります。サ変動詞はこの2つしかありません。

例えば「おはす」の活用は「おはせ・おはし・おはす・おはする・おはすれ・おはせよ」となります。

ここまでの6種類の動詞を覚えれば、下一段・上一段・ナ変・ラ変・カ変・サ変の判別をすることができるようになります。

現代語の感覚だと活用を間違えやすい動詞

続いて、現代語の感覚だと活用を間違えやすい動詞です。

「飽く」「借る」「足る」

まず「飽く」「借る」「足る」の3つは四段動詞です。

この3つの動詞に現代語の感覚で「ず」をつけてみると「飽きず」「借りず」「足りず」となり、上二段活用動詞と考えてしまいがちですが、古文ではこのようにはならず、「飽かず」「借らず」「足らず」となるので、上二段活用ではなく四段活用となります。

「恨む」

次に「恨む」ですが、これは上二段活用動詞となります。

現代語の感覚で「恨む」に「ず」をつけると「恨まず」となってしまい、四段活用動詞と思ってしまいますが、古文では「恨まず」ではなく「恨みず」となるので、「恨む」は四段動詞ではなく上二段動詞となります。

四段活用と下二段活用の両方の活用を持つ動詞

また注意点として、四段活用と下二段活用の両方の活用を持っている動詞もあります。

例えば、「立つ」という動詞は「ず」をつけたときに「立たず」となるときと、「立てず」となるときがあります。「立たず」の場合は四段活用で、「立てず」の場合は下二段活用となります。

そして意味も活用によって変わってきます。

四段活用の「立つ」は自分が立つという自動詞の意味となり、下二段活用の「立つ」は何かを立てるといった他動詞の意味となります

このような動詞はいくつかあるので重要なものは覚えるようにしましょう。

ア行・ヤ行・ワ行の区別の仕方

それでは最後に、活用の行がア行のときとヤ行のときとワ行のときの区別の仕方を解説します。

古文において

ア行は「あ・い・う・え・お」であり、
ヤ行は「や・い・ゆ・え・よ」であり、
ワ行は「わ・ゐ・う・ゑ・を」

となります。そのため「い」と「う」と「え」のときはどの行になっているのか判別しにくいときがあります。

ア行の見分け方

しかし、ア行で活用する動詞は「得(う)」と「心得」と「所得」の3つしかないということを知っておけば、動詞の活用におけるア行とヤ行とワ行の区別をすることができます。「心得」と「所得」は、「得」に「心」と「所」がついた複合動詞なので、実質的に覚えるのは「得」だけとなります。

ちなみに「得」はア行下二段動詞なので、活用は「え・え・う・うる・うれ・えよ」となります。

「老いず」の「老い」の活用は?

では、いくつかア行とヤ行とワ行の判別をやってみます。

まず、「老いず」の「老い」の活用を考えてみます。

活用語尾が「い」になっているので、ア行とヤ行の可能性がありますが、ア行ではないのでヤ行となり、「i」の音となっているのでヤ行上二段活用動詞となります。

よって終止形は「老ゆ」となります。

「絶えず」の「絶え」の活用は?

次に、「絶えず」の「絶え」の活用ですが、こちらもア行とヤ行の可能性がありますが、ア行ではないのでヤ行となり、「e」の音のなので、ヤ行下二段活用動詞となります。

よって終止形は「絶ゆ」となります。

「見えず」の「見え」の活用は?

続いて、「見えず」の「見え」の活用も考えてみます。

こちらも同様に活用語尾が「え」なのでヤ行とア行の可能でありますが、ア行ではないのでヤ行となり、「e」の音なのでヤ行下二段活用動詞となります。

終止形は「見ゆ」となります。

また、「見ゆ」に関しては「見る」と区別するようにしましょう。「見ゆ」は下二段活用動詞ですが、「見る」は「ひいきにみゐる」の1つなので、マ行下一段活用動詞となります。

意味も「見ゆ」と「見る」で違っており、「見る」は現代語の「見る」と同じ意味ですが、「見ゆ」は「見られる」あるいは「自然と目に入ってくる」という意味になります。

「据う」の活用は?

続いて、「据う」の活用ですが、活用語尾が「う」なので、ア行とワ行の可能性があります。

しかしア行ではないのでワ行となり、「ず」をつけてみると「据ゑず」となるので、ワ行下二段活用動詞となります。

「飢う」の活用は?

「飢う」も同様です。活用語尾が「う」なのでア行とワ行の可能性がありますが、ア行ではないのでワ行となり、「ず」をつけてみると「飢ゑず」となり、ワ行下二段活用となります。

いかがだったでしょうか。古文に関わらずほとんどの言語で動詞は最も重要な要素です。ぜひ今回ご紹介した知識を意識しながら古文を読むようにしてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

動詞(古文)文法事項テスト

②活用形を答える練習問題はこちら→活用形を答える練習問題

(4)用言(古文)の解説授業一覧

動詞(古文)で注意すべきこと(活用の種類、活用を覚える動詞、ア行・ヤ行・ワ行の区別の方法)

形容詞(古文)で注意すべきこと(補助活用が文法的に重要である理由、ク活用とシク活用の判別についても解説しています)

形容動詞(古文)で注意すべきこと(形容動詞か「名詞+なり」かの判別の仕方についても解説しています)

活用形の考え方の順番(①活用語の下を見る、②係り結び、③活用表)

補助活用が文法的に重要な理由を解説します!

(5)参考

動詞(古文)の活用表一覧(四段活用・上一段活用・下一段活用・上二段活用・下二段活用・ナ変・ラ変・カ変・サ変)

動詞(古文)解説・テスト一覧

古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)

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