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以下の枕詞が導く語を答えよ。
①あかねさす
→日・昼・紫・君
※「茜色に美しく照り輝く」という意味。「茜色」は「赤根色」のことで、ややくすんだ赤色。
②あきつしま
→大和
※漢字にすると「秋津島」で大和(日本)のことを指す。
③あさつゆの
→消え、おく、命
※朝露は消えやすく、はかないことから「命」を連想させる。
③あしひきの
→山・峰
※語義には「青繁木(あをしみき)」「足をひきつつ登る」「山すそを長くひく」などの説がある。
④あづさゆみ
→引く・張る・射る・音・末
※梓の木で作った弓のこと。「梓」とは木の名前で、古来神聖な木とされた。
⑤あまざかる
→日・鄙(ひな)・向かひ
※漢字では「天離る」と書く。「日」を連想させ、その音から「鄙」なども導く。
⑥あまとぶや
→雁・軽・領巾(ひれ)
※漢字にすると「天飛ぶや」。「領巾」は女性が襟から肩にかけた細長い白布のこと。
⑦あらがねの
→土・地
※「あらがね(粗金)」は鉱石のこと。
⑧あらたまの
→年・月・日・春
※漢字では「新玉の」「荒玉の」と書く。年が「改まる」ということからの連想とする説がある。
⑨あをによし
→奈良
※漢字にすると「青丹よし」。「青丹」は染料に用いられる青黒い土(緑青(ろくしょう))のこと。奈良は「青丹」の産地であった。
⑩いさなとり
→海・浜・灘・湖
※漢字は「鯨取り」。
⑪いそのかみ
→古・降る・振る
※「石上(いそのかみ)」は大和の国石上・布留(ふる)一帯(現在の奈良県天理市石上付近)の地名。
⑫いはばしる
→垂水(たるみ)・近江(あふみ)・滝
※「水が岩の上をしぶきを上げて激しく流れる」の意味。
⑬うつせみの
→命・世・人・身・空し(むなし)・殻
※「現せみ(うつせみ)」は「この世の人」「現世」という意味から転じ、「空蝉」「虚蝉」という字を当て「セミの抜け殻」の意味にも用いられるようになった。
⑭うばたまの
→黒・闇・夜・夢・月
※「うばたま(鳥羽玉)」は「ひあふぎ」という植物の実のこと。ひあふぎの実の色は黒い。「ぬばたま(射干玉)」とも言う。
⑮うまさけ(の・を)
→三輪(みわ)・三室(みむろ)・かみ
※漢字は「旨酒」。神酒のことを古くは「みわ」と言っていたので地名の「三輪」にかかる。「みむろ」は「神の宿る所」という意味もあるため「三室」という地名にもかかる。
⑯おきつもの
→なばり・なびく
※漢字は「沖つ藻の」。沖の海藻が波になびくことから「なびく」にかかる。
⑰おほともの
→御津(みつ)・見つ・高師(たかし)
※漢字は「大伴の」。大伴の地(現在の大阪府あたり)の地名「御津」から「見つ」にかかる。「高師」は現在の大阪府高石市一帯のこと。
⑱かきつばた
→にほふ・さき沼(ぬ)
※「かきつばた」は植物の名前。水辺に自生し、初夏に紫・白の花を開く。美しく咲くことから「にほふ」「さき」を導く。
⑲からころも
→着る・裁つ・袖・裾・紐
※漢字は「唐衣」。唐風の衣装のこと。
⑳くさまくら
→旅・結ぶ・結ふ・仮
※草を結んで枕にして野宿することを意味する。
㉑くれたけの
→節(よ)・ふし・世・夜
※漢字は「呉竹の」。「呉」は中国伝来のものの意を表す。
㉒ささなみの
→近江(おうみ)・大津・志賀
※「さざなみ」のこと。琵琶湖周辺の地名を導く。「近江」は現在の滋賀県のこと。
㉓さねかづら
→のちも逢ふ
※山野に自生する常緑つる性低木の名前。つるが分かれて再び会う意から「のちも逢う」にかかる。
㉔さねさし
→相模(さがむ)
※「相模」は地名(現在の神奈川県)。「相武」とも書く。
㉕しきしまの
→大和
※「敷島(しきしま)」は大和の地名(現在の奈良県桜井市)。
㉖しろたへの
→衣・袖・袂(たもと)・雲・雪
※「白栲(しろたへ)」は白い布のこと。
㉗そらにみつ
→大和
㉘たたなづく
→青垣
※「畳なづく」は「幾重にもうねり重なる」の意味。
㉙たたみこも
→へ・隔て・平群(へぐり)
※漢字は「畳薦」。「薦(荒く織ったむしろ)を幾重にも重ねる」の意味。「重」は「へ」とも読み、そこから「へ」の音を含む言葉を導く。「平群」は奈良県北西部の地名。
㉚たまくしげ
→ふた・箱・み・明く
※漢字は「玉櫛笥」。「たま」は接頭語で、櫛を入れる箱の美称のこと。
㉛たまだすき
→懸け・畝火(うねび)
※「たま(玉)」は接頭語で、「襷(たすき)」の美称。たすきをうなじにかけるところから「かく」や「うなじ」と類音の「畝」にかかる。「畝」は、 畑で作物を作るために細長く直線状に土を盛り上げた所のこと。
㉜たまづさの
→使(つかひ)・妹(いも)・言(こと)・通ふ
※「玉梓(たまあづさ)」から転じた。言付けをする使いが、梓の木を杖に持ったことから「使ひ」「妹」などにかかる。
㉝たまのをの
→長き・短き・絶ゆ
※「玉の緒」は玉を貫いた緒(=ひも)のこと。
㉞たまぼこの
→道・里人・手向けの神
※漢字は「玉鉾の」。鉾(矛)は武器の一種。
㉟たまもかる
→敏馬(みぬめ)・沖
※漢字は「玉藻刈る」。「玉藻」は「藻」の美称。「敏馬」は現在の神戸市灘区の地名。
㊱たらちねの
→母・親
※漢字は「垂乳根」。母親のこと。
㊲ちはやぶる
→神・社・氏(うぢ)・宇治
※上二段動詞「ちはやぶ」の連体形で、「霊力の盛んな」「勢いの強い」の意味。
㊳つがのきの
→つぎつぎに
※「つが」はマツ科の常緑高木のことで、類似音を重ねて「つぎつぎ」にかかる。
㊴つゆじもの
→消ゆ・おく
※漢字は「露霜の」。
㊵とりがなく
→東(あづま)
※「東国人の言葉が鶏が鳴くように聞こえたことから」「鶏が鳴いた後、東の空から太陽が昇ることから」という説がある。
㊶なつくさの
→しげき・ふかく・野
※夏草が生い茂る様子を表す。
㊷にほどりの
→かづく・なづさふ・葛飾
※「にほ(鳰)」は水鳥の名前。「かづく」は「潜る」の意味、「なづさふ」は「水に浮かぶ」の意味、「葛飾」は下総国(しもふさのくに)(現在の千葉県北部)の地名。
㊸ぬえどりの
→片恋・のどよふ
※「ぬえ(鵺)」は「とらつぐみ」という小鳥の異名。悲しげに鳴く様子から「片恋」「のどよふ」を導く。「のどよふ」は「細々と鳴く」の意味。
㊹ぬばたまの
→黒・闇・夜・夢・髪・月
※「むばたま(射干玉)」は「ひあふぎ」という植物の実のこと。ひあふぎの実の色は黒い。「うばたま(鳥羽玉)」とも言う。
㊺はるがすみ
→立つ・春日
※「かすみ(霞)」と同音を含む「春日」も導く。「春日」は現在の奈良市春日野町の平城京東方一体の地名。
㊻ひさかたの
→光・天・空・雨・月・雲
※漢字は「久方の」。天に関係のある言葉を導く。
㊼ふゆごもり
→春・張る
※冬の寒さの厳しい間、動植物が活動をやめ、人が家に閉じこもること。
㊽みづぐきの
→岡・跡・かき・流れ
※漢字は「水茎の」。
㊾みづどりの
→鴨・浮き・立つ・憂き
㊿むらぎもの
→心
※漢字は「村肝の」「群肝の」。心の働きは内臓によるとされたことから「心」にかかる。
51 むらさきの
→匂ふ・名高し・心
※紫草という野草のこと。根を乾かして赤紫色の染料をとる。
52 もののふの
→氏・八十・宇治川・矢田
※「物部(もののふ)」は朝廷に仕えた役人のこと。「武士(もののふ)」はさむらいのこと。物部の氏が多いことから「氏」「八十」「宇治川」を導き、武士が持つ矢から「矢田」を導く。「宇治川」は京都府伏見の南を流れる川。
53 ももしきの
→宮・大宮
※漢字は「百敷の」。「多くの石や木でできた」という意味。
54 ももづたふ
→八十・五十(いそ)・渡る・津・石
※漢字は「百伝ふ」。「数えていって百に至る」という意味。
55 やくもたつ
→出雲
※漢字は「八雲立つ」。「雲が幾重にも立ちのぼる」という意味。
56 やすみしし
→わが大君・わが大王(おおきみ)
※漢字は「八隅知し」「安見知し」。「八方をお治めになる」または「安らかにお治めになる」の意味。
57 やまかはの
→たぎつ・おと・はやし
※山川の流れの様子を表す。「たぎつ(滾つ・激つ)」は「水が激しい勢いで流れる」の意味。
58 やまのゐの
→飽く・浅き
※「山の井」は湧水がたまって、山中に自然にできた井戸のこと。
59 ゆふづくよ
→暁闇(あかときやみ)・小暗し(をぐらし)・小倉山
※漢字は「夕月夜」。夕方に出ている月は夜中に沈んで、暁(夜明け)は闇になる。「小暗し」と同音の小倉山にもかかる。「小倉山」は京都市右京区嵯峨にある山で、紅葉の名所。
60 わかくさの
→妻・夫(つま)・新(にひ)・若
※「若草」は春に芽を出したばかりの草。
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【和歌(古文)の解説授業一覧】
①掛詞の3つのパターンを解説します!(「大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天橋立」の解釈もします)
②序詞の3つのパターン(「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」「みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ」「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとしきかば今帰り来む」)
③隠し題の3つのパターン(①物名、②折句、③沓冠、「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」「夜も涼し寝覚めの仮庵手枕も真袖も秋に隔てなき風」)
④和歌の句切れを文法的に見つけよう! ポイントは文末表現を探すことです!
⑤和歌の解釈の3つのポイント(「難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき」の解釈)
~参考~
☆和歌の修辞法一覧(句切れ・枕詞・序詞・掛詞・縁語・隠し題・本歌取り)
☆古文文法の解説動画・授業動画一覧(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)
☆古文文法のすべて(基礎知識、用言、係り結びの法則、助動詞、助詞、識別、敬語、和歌、主体の判別)
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