コンデンサーに導体板(金属板)と誘電体を挿入したときの考え方(隙間がないときと隙間があるときの両方解説しています)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

コンデンサーに導体板と誘電体を挿入したらどうなるかについて解説します。

導体板を電場の中に置くと

まずそもそも、導体板と誘電体を電場の中に置いた場合何が起きるかについて確認します。

導体とは、金属などよく電気を通す物質のことです。

金属などを電場の中に置くと静電誘導が起き、外部の電場と大きさが同じで逆向きの電場が導体内で発生するので、結果として導体内の電場は0となります。

誘電体を電場の中に置くと

また、誘電体とは不導体のことです。

不導体には自由電子がないので、電場の中に置いた場合、誘電分極が起きます。そして誘電分極によって誘電体内に電場が発生し、結果として電場を弱めるはたらきがあります。

それぞれの詳しい原理は静電誘導と誘電分極の解説を確認してください。

今回はこれらの現象が起きる導体板や誘電体をコンデンサーに挿入したとき、どのように考えればよいかを解説します。

コンデンサーに導体板を挿入する

それではまず、コンデンサーに導体板を挿入したらどうなるか考えてみます。

結論から言うと、コンデンサーに導体板を挿入すると、コンデンサーの極板間の距離が導体板の距離だけ短くなると考えます。

例えば下図のように、極板間の距離がdでQの電荷を蓄えているコンデンサーに、厚さDの金属板を挿入します。

コンデンサーの片方の極板には+Qの電荷が蓄えられており、もう片方の極板には-Qの電荷が蓄えられています。そのためコンデンサーだけであれば正電荷から負電荷へ電場が発生しています。今回この電場の大きさをEとします。

金属板の内部の電場は0となる(導線とみなす)

そして、この電場の中にある金属板は静電誘導が起き、金属板の上側の表面には-Qの電荷が、下側の表面には+Qの電荷が移動をします。

そして金属板の内部で大きさがEで向きが逆向きの電場が生じ、結果打ち消しあって金属板内部の電場は0となります。

すると金属板内部は電場が0であるので、導線とみなすことができます。

上側と下側の2つのコンデンサーに分かれる

そうなると、もともと1つであったコンデンサーが、上側と下側の2つのコンデンサーに分かれたと考えることができます。

このとき上側のコンデンサーの極板間に発生している電場の大きさは、電荷の大きさが元のコンデンサーと同じなので、元のコンデンサーと同じEとなります。そして、下側のコンデンサーの極板間に発生している電場の大きさも、同様にEとなります。

分かれたコンデンサーをくっつけてみる(コンデンサー間の距離が短くなる)

そして上側のコンデンサーと下側のコンデンサーをくっつけてみると、くっつけた極板のプラスマイナスが打ち消し合うので、結果として下図のようなコンデンサーとなり、このくっつけた後のコンデンサーの極板間に発生している電場の大きさも当然Eとなります。

そして、このくっつけた後のコンデンサーの極板間の距離はもともとdだったところをDの分だけ縮めたので、d-Dとなります。

よってコンデンサーに金属板などの導体板を挿入した場合は、コンデンサーの極板間の距離が金属板の厚さの分だけ短くなったと考えればよいということになります。

コンデンサーに誘電体を隙間なく挿入する

それでは次にコンデンサーに誘電体を挿入してみるとどうなるか考えてみます。まずは分かりやすくするためにコンデンサーに誘電体を隙間なく挿入する場合を考えます。

こちらも結論から言うと、コンデンサーに誘電体を挿入すると電気容量が変化します。

なぜそうなるのか確認していきます。

例えば下図のように、極板間の距離がdのコンデンサーに起電力がVの電源をつないでみます。そして、そのときコンデンサーに蓄えられる電荷がQで、このコンデンサーの電気容量をCとすると、Q=CVの式が成り立ちます。この状態のコンデンサーに隙間なく誘電体を挿入します。

誘電分極が起きるが、極板間の電場はEのまま

すると誘電体は電場の中では誘電分極を起こすので、もともとあった電場よりも小さく向きが逆向きの電場を生じます。

すると、このままでは極板間の電場はE-E’となります。しかし、E-E’とはなりません。

なぜなら電源につながれているため、電圧を変えることができないからです。電圧はV=Edで表される通り、電圧と極板間の距離を変えないのであれば極板間の電場はEになっていないといけません。

ではどうすれば良いのかというと、誘電体に発生した電場と合わせて極板間の電場がEになるためには、電源が電荷をさらに移動させて極板間の電荷がE’を引いてもEになるようにするのです。

そうなるとコンデンサーに蓄えられる電荷の量が変化します。

電気容量が変化する

そして、誘電体を挿入したコンデンサーにおいてコンデンサーの基本式を立ててみると

Q’=C’V

となり電圧Vが変わらないのであれば変化した電気量の分だけ電気容量が変化することになるのです。

このようにコンデンサーに誘電体を挿入した場合は、極板間の電場を変えないようにコンデンサーはより多くの電荷を蓄えようとし、電気容量が変化するのです。

誘電率が変化している

またさらに補足すると、何も挿入されていないときの電気容量は以下の式で表されます。

C=ε0S/d

dは極板間の距離で、Sは極板の面積です。そしてε0は真空の誘電率とよばれています。

このことから分かるのが、極板間の距離とコンデンサーの面積を変えていないのに電気容量が変化したということは誘電率が変化したということです。

C’=εS/d

つまり、極板間の空間を埋めているのが真空から別の物質に変わったので、誘電率が変化して電気容量が変化したということなのです。ちなみに誘電率は物質によって決まっているので、どのような誘電体を挿入したかによって電気容量が決まります。

コンデンサーに誘電体を挿入する(隙間あり)

それでは最後にコンデンサーに誘電体を挿入し、隙間が出来たときを考えてみます。

このときの考え方の基本は、「分けて考える」ということです。具体的にどう分けるかというと、隙間になっている部分と誘電体の部分を分けて考えるということです。

例えば下図のように、上の極板から誘電体までの距離をd1、誘電体の厚さをD、誘電体から下の極板までの距離をd2とします。そして上の隙間の電場をE1、誘電体の部分の電場をE2とします。

下の隙間の電場は、上の隙間の電場と同じ

このとき下の隙間の電場はE1になります。

なぜかというと、誘電体によって電場が変わるのは誘電体の内部だけなので、それ以外の部分の電場は同じものになります。

上の隙間・誘電体・下の隙間の電位差を考える

よって上の隙間の電位差をV1とすると、V1=E1d1となります。また誘電体の部分の電位差をVdとすると、Vd=E2Dとなります。そして下の隙間の電位差をV2とすると、V2=E1d2となります。

今回コンデンサーは電源につながれているので、極板間の電圧の合計はVとなります。よって、

V=V1+Vd+V2=E1d1+E2D+E1d2

このように誘電体を挿入して隙間が出来たときは、隙間の部分と誘電体の部分で分けて考えるようにしましょう。

誘電体を挿入することによって変化した電気容量を求める

ちなみに今回は詳しく解説はしませんが、E=Q/εsの公式を使うと、今回の電荷はQ’で、E1は誘電体が挿入されていない部分の電場なのでE1=Q’/ε0s、E2は誘電体の部分の電場なのでE2=Q’/εsとなり、これらを代入して整理すると以下のようになります。

そしてコンデンサーの公式であるQ=CVより、V=1/C×Qなので、(d1+d20s+D/εs)の部分は誘電体を挿入することによって変化した電気容量の逆数となっているということがわかります。

いかがだったでしょうか。コンデンサーに導体板を誘電体に挿入したときの考え方が理解できたでしょうか。コンデンサーにこれらを挿入する問題は入試でよく出題されます。ぜひ今回の考え方をマスターして、そういった問題に対応するようにしてください。

(3)解説授業の内容を復習しよう

コンデンサーに金属板を挿入する問題演習

コンデンサーに誘電体を挿入する

(4)コンデンサー(電磁気)の解説一覧

コンデンサー(電磁気)公式

コンデンサーに導体板(金属板)と誘電体を挿入したときの考え方(隙間がないときと隙間があるときの両方解説しています)

(5)参考

コンデンサー(電磁気)の解説・授業・公式・演習問題一覧

電磁気(物理基礎、物理)の解説動画・授業動画一覧

電磁気(物理基礎、物理)公式一覧

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