「何如(いかん)」と「如何(いかんセン)」の違いの文法的説明(漢文文法)

☆動画による解説はこちら→「何如(いかん)」と「如何(いかんセン)」の意味の違いは文法的に考えると簡単に理解できる

(1)漢文で、よく混同してしまう「何如」と「如何」について説明します。

何如(いかん):どうであるか、どうなるか
如何(いかんセン):どうしたらよいのか(疑問・反語)

漢字が反対になるだけで意味が変わり、訓読も微妙に変わってしまいややこしいです。

こういうときは、漢字の意味自体を考えてみるといいです。

何:疑問を表す漢字、主にwhatに相当するが、他の5W1Hにもなれる。
如:「従う」が原義。英語のfollowに相当。

それぞれの漢字の意味を確認しましたので、「何如」と「如何」を考えてみましょう。

何如→what follow
如何→follow what

「何如」はwhatがfollowの主語ですね。対して、「如何」はwhatはfollowの目的語になっています。

つまり、

「何如」は、「何が続くのだろうか」→「何が起こるのか」→「どうなるか」
「如何」は「何を続けるのか」→「どうしたらよいのか」

となります。

「どう『した』らよいのか」と意味に『する』が入っているので、「如何」は訓読に「せん」つまり「サ変動詞『す』+推量の助動詞『む』」となっています。

(2)また「何如」は「~をすればどうなるか」という意味ですが、英語で言えば、

What will happen if ~

といった形で使うことが多く、「何如」の前の節は、ifに相当する接続詞が省略された条件節となります。

【例】

以子之矛陥子之楯何如(子の矛を以つて、子の盾を陥さば何如)

→「以子之矛陥子之楯」が条件節となり、ifに相当する接続詞が省略されている。接続詞が省略されていることを助詞の「ば」で訓読では表現している。

(3)「如何」は目的語を間にはさむことがあります。

【例】

如我民何(我が民を如何せん)

→主語は「我」で省略されている。「如」が動詞、「我民」と「何」が目的語。つまり、SVOOの第4文型である。

→直訳すると、「私は私の民を何に従わせればよいのか」となり、「私の民をどうしたらよいのか」という意味になる。