(1)解説授業動画
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(2)解説授業の原稿
媒質の単振動を考える
波を考えるときは媒質の単振動を考えることで理解しやすくなることが多いです。
そもそも媒質とは波を伝える物質のことです。例えばひもに波が伝わる場合は、ひもが媒質であり、空気中を波が伝わる場合は空気、もっといえば空気の分子が媒質であり、水中であれば水あるいは水分子が媒質となります。
それでは波が媒質の単振動であるということを具体的に確認してみます。
例えば、下図の点線の丸の位置にあった媒質の粒子が、上下に単振動をしているとします。そして、振動の中心から、黒丸の位置まで移動したとします。
隣の媒質の粒子も上下に同じ様に単振動をしており、振動の中心から黒丸の位置まで移動し、その隣も同様に上下に単振動しており、振動の中心から黒丸の位置まで移動しています。
このように媒質の粒子がそれぞれ単振動をしている途中の位置に移動しており、その移動した媒質の粒子をつないだものが波なのです(正確には媒質が単振動をしている波のことを正弦波といいます)。
このように波とは、媒質自体が波を描くような動きをしているのではなく、媒質がそれぞれ単振動をすることで作られているのが波なのです。
まずはこの点を理解しましょう。ちなみに媒質が振動の中心からどれだけずれているかを変位といいます。
y-xグラフをy-tグラフに変換
それでは、この考え方を使ってy-xグラフをy-tグラフに変換してみます。
yとは媒質の変位[m]のことを表し、xとはどの媒質のことなのか、つまり媒質の位置[m]を表しています。そしてtは、時間[s]を表しています。
右向きに進行する波のt=0におけるy-xグラフが下図のようになっているとします。
縦軸を変位、横軸を位置としたy-xグラフはある瞬間における波の形を表しています。よくy-xグラフを説明するときに使われる例えとして、ロープで波を発生させて、そのロープの波を写真で撮ったとき、その写真に写るものがy-xグラフと説明されます。
では、この波の原点におけるy-tグラフを考えてみましょう。
ポイントは、媒質の単振動を考えることです。つまり、原点における媒質がどのように単振動するかを考えて、それをグラフにすればよいのです。
上図の少し後に媒質がどのように単振動するかを知るためには、上図の波を進行方向に少し動かしてみます。下図の赤で書いたものが元々の波を少し右側にずらしたグラフです。
すると、原点にあった媒質はこの後上方向つまり正の方向に移動することが分かります。よって原点の媒質は時間が経つにつれてまず上方向に移動するということが分かります。
それさえ分かればあとは続きを書くことでy-tグラフを書くことができます。
このようにy-tグラフとは、ある媒質に注目してその媒質の単振動が時間とともにどのように行われているかを表したグラフなのです。ちなみに同じ波なので、振幅は同じものになります。
原点以外の位置にある媒質のy-tグラフ
この考えが理解できていれば、原点以外の位置にある媒質のy-tグラフもかけるようになります。
先ほどと同様に少し進行方向にずらした波を考えて、媒質がこの後どのように単振動するかを確認します。すると、下図のx1の媒質はこの後下に移動することが分かります。
よって、x1の媒質のy-tグラフは、最初の位置から時間が経つにつれて下に移動し、あとは続きを書けばx1の位置における媒質のy-tグラフが書けます。
y-tグラフをy-xグラフに書き換える
それでは今度は逆にy-tグラフをy-xグラフに書き換えてみます。
やり方は先ほどのやり方の逆をすれば良いのですが、例えば右向きに進行するある波の原点における媒質のy-tグラフが下図のようになっているとします。
このような波のy-xグラフを考えてみましょう。
y-tグラフは右向きにたどればその位置における媒質がどのように単振動しているかを読み取ることができます。つまり、この媒質はこの後上方向に移動するということが分かります。
t=0のときは媒質は原点にあるのでまず原点に点を打ち、そして時間が経つと上方向に移動する波を考えます。ここで注意したいのが、上方向に移動するからといって、グラフを右上がりに続けてかいてはいけません。なぜなら、波は右向きに進行しているので、波自体を右に動かしたときに、この媒質が上に来るような波、つまり下図のような形になる波でないといけません。
あとは続きをかいてy-xグラフの完成です。実際にこのy-xグラフを進行方向に少し動かしてみると赤線のグラフのようになり、確かに原点の媒質はこの後上方向に移動しています。
このようにy-xグラフからy-tグラフにかき換えるときも、y-tグラフからy-xグラフに書き換えるときも、媒質が単振動をしているということを意識してかき換えるようにしましょう。
横波と縦波
それでは次に横波と縦波について確認します。
横波とは媒質の振動方向と波の進行方向が垂直になっている波のことです。波の形は下図のように表され、それぞれの媒質が進行方向に対して垂直に単振動することによって作られる波が横波です。
そして縦波とは、媒質の振動方向と波の進行方向が同じになる波のことです。例えば下図のようになる波のことで、それぞれの媒質がこのように移動する波のことで、媒質は進行方向と同じ向きに単振動をしています。
縦波において、媒質が集まっている場所を密、媒質がまばらになっている場所を疎といいます。このように、縦波は密と疎が移動するように見えるので、疎密波ともいいます。
簡単にいうと、横波は進行方向に対して媒質が横向きに単振動をしている波で、縦波は進行方向に対して縦方向に媒質が単振動をしている波といえます。
横波は媒質がずれることによって力を及ぼし合って伝わっていきます。そのため、ひもやロープなど固体でのみ伝えることができます。液体や気体などは媒質が横にずれても、その隣の媒質に力を及ぼすことがないので横波を伝えることができません。
また、縦波は圧縮に対して力を及ぼし合うものに伝わります。そのため、固体・液体・気体の全てで縦波を伝えることができます。よって、水中や空気中で伝えることのできる音波は縦波であるといえます。
ちなみに縦波の方が横波よりも早く伝わるので、地震が発生したときにまずやってくるP波は縦波で、その後に来るS波は横波ということになります。
このような縦波と横波の性質は知っておきましょう。
縦波の横波表示
最後に、縦波の横波表示について解説します。
縦波は実際には、左右に単振動をしているのですが、このままの表し方では考えにくい場合が多いので、考えやすくするために横波のように書き直すことがあります。そのことを縦波の横波表示といいます。
まずはそのルールを確認します。x軸方向の右向きを正とし、つまり左向きは負としてy軸方向にかき直します。例えば、右向きに変位している媒質であれば、y軸方向の正の向きに同じ分だけ変位した場所に媒質をかきます。そして、左向きに変位している媒質は、y軸方向の負の向きに同じ分だけ変位した場所に媒質をかきます。
後は、それらをつないでいけば、縦波の横波表示ができます。イメージとしては、それぞれの媒質の変位を反時計回りに動かしていくというイメージです。
どの部分が密で、どの部分が疎か
また、横波表示されている縦波のどの部分が密で、どの部分が疎になっているかを答える問題がよく出ます。そのような場合は、先ほどと逆の考え方、つまり横波で表されている波の媒質を縦波に変換していきます。
すると、正の方向に変位している媒質は、縦波においては右向きに変位しているということになります。そして、負の方向に変位している媒質は、左向きに変位しているということが分かります。
媒質が集まってきている場所が密となり、媒質が離れている場所は疎となります。
このように横波表示されている縦波を考えるときは、それぞれの媒質がどのように変位しているのかを確認するようにしましょう。
いかがだったでしょうか。今回確認した通り、波は媒質の単振動によってできているということを意識すれば、その原理が理解しやすくなったと思います。今後も波の問題で困ったときは、まず媒質の単振動を考えてみるようにしてください。
(3)解説授業の内容を復習しよう
(4)波の伝わり方(物理基礎、物理)の解説一覧
③波の正体は媒質の単振動である(y-xグラフとy-tグラフ、縦波についても解説しています)
④定常波についてのまとめ(定常波とは何か、固定端反射と自由端反射、弦で発生する定常波、気柱で発生する定常波、固有振動とは、音(縦波)の大きさ(密度の変化)が最大になるときについても解説しています)
⑤正弦波の式y=Asin{2π/T(t-x/v)+α}の原理(位相とは何かについても解説しています)
(5)参考
☆物理の解説動画・授業動画一覧(力学・熱力学・波動・電磁気・原子)
☆物理に関する現象や技術(力学、熱力学、波動、電磁気、原子)