質量欠損と結合エネルギー

(1)例題

原子核がもつエネルギーは、ばらばらの状態にある核子がもつエネルギーの和よりも小さい。このエネルギー差ΔEを結合エネルギーという。原子番号Z、質量数Aの原子核の場合、原子核の質量をM、陽子と中性子の質量をそれぞれmp, mnとするとき、ΔEを表せ。ただし、真空中の光の速さをcとする。

(2017年センター試験本試物理第6問問2)

(2)答案

原子番号Z、質量数Aの原子核をばらばらにした場合の核子のもつエネルギーは、陽子の数がZ個、中性子の数がA-Z個なので、E=mc2より

Z・mpc2+(A-Z)・mnc2

また、質量Mの原子核がもつエネルギーは

Mc2

したがって、求める結合エネルギーΔEは

ΔE={Z・mpc2+(A-Z)・mnc2}-Mc2={Z・mp+(A-Z)・mn-M}c2

(3)解法のポイント

まず、E=mc2が意味することを理解しましょう。

この式が意味しているのは、「質量をもつ」ということは「エネルギーをもつ」ことである、という意味です。つまり、質量とエネルギーは等価であると言っているのです。

そのため、質量が大きい物体の方が、もっているエネルギーが大きくなる、ということになります。

核子がばらばらの状態のほうが原子核の状態(結合している状態)よりも、エネルギーは高い状態なので、質量は大きくなります。ゆえに、原子核をばらばらにすると、質量は大きくなります。また逆の、ばらばらの核子を結合させて原子核にすると質量は小さくなります(質量欠損といいます)

つまり、結合エネルギーとは、ばらばらの状態にある核子を結合させて原子核にするためのエネルギーではなく、その逆の、原子核を分解してばらばらの状態の核子にするために加えなければならないエネルギーなのです。

(4)必要な知識

①質量とエネルギーの等価性

②原子核の結合エネルギー