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力のモーメントの問題の考え方(質点と剛体の違い、剛体がつり合っているときに立てるべき3つの式、力のモーメントを考えるときの注意点)

(1)解説授業動画

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(2)解説授業の原稿

力のモーメントの問題を解くために理解するべき3つのこと

力のモーメントの問題を正しく解くためには、3つのことが理解できていないといけません。

ⅰ)質点と剛体の違い
ⅱ)剛体のつり合いを考えるときの式の立て方
ⅲ)力のモーメントのつり合いの式の立て方

この3つを理解するようにしましょう。

今回はそれぞれ順番に解説していきます。

質点と剛体の違い

まずは質点と剛体の違いを理解しましょう。

質点とは、物体を「質量をもつ点とみなしたもの」のことです。また、剛体とは、「質量と大きさをもつ変形しない物体」のことです。

例えば以下のように、丸で書いた物体や台車などは実際は大きさを持っているのですが、問題を考える上ではその大きさは無視して点とみなして考えており、そのことを質点というのです。

これらは点とみなしているので、たとえどの方向に力がはたらいていたとしてもその作用点は全て同じであると考えます。

そして、以下のような板や棒などは力の作用点の位置によって運動が変わるため、物体の大きさや形を無視することができません。

こういったものを剛体と言います。

このように、大きさを考えなくていいときと、大きさを考えなければいけないときの違いは、力の作用点の位置を考えなくてよいのか、考えなければいけないのかというところにあります。

質点と剛体の運動の違い

また、質点と剛体は考えるべき運動も違います。

質点の方は点なので、できる運動は並進運動だけです。並進運動とは平行移動のことで、質点は平行移動だけを考えればよいのです。

しかし剛体は大きさがあるので、並進運動だけではなく、この剛体自体が回転をします。つまり力の作用点の位置によって、剛体自体の回転も考えないといけないのです。

例えば、質点の場合、逆向きで大きさが同じ力を加えると並進運動をせず静止します。

しかし、剛体の場合、逆向きで大きさが同じ力を加えても、以下のように作用線がずれていた場合、並進運動つまり平行移動はしないけど、その場で回転することになります。

このように、剛体の場合は並進運動だけではなく回転も考えないといけないのです。

ちなみに、以下のようにモーメントがつり合うように同じ向きで力を加えた場合は、回転することはないけど右向きに平行移動します。

したがって、質点のつり合いを考えるときは、力のつり合いだけを考えればよく、剛体のつり合いを考えるときは、力のつり合いと力のモーメントのつり合いの両方を考えないといけないということになります。

まずはこのように、考えている物体が質点なのか剛体なのかを区別して、それぞれに必要な考え方をするようにしましょう。

剛体のつり合いを考えるときに立てるべき3つの式

それでは次に、剛体のつり合いを考えるときに立てるべき3つの式を確認します。

剛体のつり合いを考えるときは、

①力のつり合いの式
②力のモーメントのつり合いの式
③図形を利用して立てた式

この3つを連立させて問題を解くことになります。

3番目の図形の利用とは、三角比を使ったり、三平方の定理を使ったり、相似や合同などを使ったりします。ほとんどの問題は上の2つの式だけで解けるのですが、2次試験など応用問題を解くときは3番目も意識するようにしましょう。

例:①②を使った立式

例えば、以下のように天井から2つのばねで棒を吊り下げ、その棒のある場所Aを下向きにFの力で引っ張ったとします。2つのばねは、それぞればね定数が違うのですが、自然長とばねの伸びは同じであるとし、棒の質量は無視できるものとします。

この剛体がつり合っているとした場合、立てることのできる式は以下の2つとなります。

①k1x+k2x=F
②k2x・ℓ2=k1x・ℓ1

①フックの法則より、ばねが棒に及ぼす力はk1xとk2xとなります。そのため、力のつり合いの式は、上方向の力の合力であるk1x+k2x=下方向の力のFとなります。

②また、剛体がつり合っているということは力のモーメントもつり合っているということなので、力のモーメントのつり合いの式も成り立ちます。

つまり点Aまわりの力のモーメントを考えてみると、反時計回りにはたらく力はk2xなので、k2x・ℓ2が反時計回りの力のモーメントです。そして時計回りにはたらく力はk1xなので、k1x・ℓ1が時計回りの力のモーメントとなります。そしてつり合っているので、k2x・ℓ2=k2x・ℓ2が成り立ちます。

このように立式して剛体のつり合いの問題は解くようにしましょう。

例:②③を使った立式

また、3番目の図形を利用して式を立てるパターンも確認しておきます。

例えば、以下のように天井から自然長とばね定数が同じ2つのばねで棒を吊るし、ばねが自然長となる位置で左端を留め具で固定します。その状態で下方向にFで引っ張って静止させます。この状況で立てることができる式を考えてみましょう。ただし、弾性力は本来少し角度がついているのですが、今回は棒に対して垂直にはたらいているものとします。

今回はこの留め具の部分ではたらいている力が分からないので、力のつり合いの式は立てずに、②力のモーメントのつり合いの式と③図形を利用した式を立てます。

②まずは力のモーメントのつり合いの式を考えます。左端を点Aとしたとき、点Aまわりの力のモーメントのつり合いを考えます。

点Aを中心として反時計回りにはたらく力は2つの弾性力なので、kx1・ℓ1+ kx2・(ℓ1+ℓ2+ℓ3)が反時計回りにはたらく力のモーメントです。

そして、点Aを中心として時計回りにはたらく力はFなので、時計回りの力のモーメントはF・(ℓ1+ℓ2)となります。今回この棒はつり合っているので、反時計回りの力のモーメント=時計回りの力のモーメントとなります。

kx1・ℓ1+ kx2・(ℓ1+ℓ2+ℓ3)=F・(ℓ1+ℓ2)

③そして次に、この4点をB, B’, C, C’とすると、△ABB’と△ACC’は相似となります。よってx1: x2=ℓ1: (ℓ1+ℓ2+ℓ3)となります。

このように、図形を利用して式を立てることもあるので注意してください。

力のモーメントを考えるときの2つの注意点

それでは最後に、力のモーメントを考えるときの注意点を2つ確認します。

①そもそも力のモーメントとは、剛体を回転させる能力を表す量のことです。そしてこの力のモーメントの求め方は、

(力のモーメント)=(力の大きさ)×(回転の中心から作用線までの距離)

となります。「作用点」ではなく、「作用線」であることに注意してください。

②また、力のモーメントがつり合っているときは回転しないということなので、回転の中心はどこに設定しても問題ありません。そのため、多くの力がはたらいている点や大きさが不明な力がはたらいている点を回転の中心に設定すると計算がしやすくなります。

例:①②に注意して力のモーメントのつり合いの式を立てる

それでは、この2点に注意して力のモーメントのつり合いの式を立ててみましょう。

例えば以下のように、棒に質量Mの物体が吊り下げられており、その棒の一端は床と壁の隅にあり、もう一方の端は長さℓの糸でつながれているとします。物体がつりさげられている点をPとしたとき、AP:BP=2:1であり、床からBまでの距離がhであるとしたとき、この棒の力のモーメントのつり合いの式を考えてみます。ただし、糸や棒の質量は無視できるものとし、棒の厚さも無視できるものとします。

まずは回転の中心を設定しましょう。今回の場合、回転の中心にするべき点は、Aとなります。なぜなら、点Aにはたらいている力の大きさがよくわからないからです。こういった点を回転の中心にすると計算がしやすくなります。

そして次に、点Aまわりの力のモーメントを考えていきます。

まずは反時計回りから考えていきます。今回、点Aを中心として反時計回りにはたらく力は糸の張力となります。

その張力をTとして、反時計回りの力のモーメントを求めてみるのですが、注意点としてT×ABとしないようにしましょう。

確かに点Aからこの張力の「作用点」までの距離はABなのですが、力のモーメントは(力の大きさ)×(作用線までの距離)なので、上図の赤点線のように張力の作用線を引き、点Aからその作用線までの距離を考えます。すると、反時計回りのモーメントの大きさはT・hとなります。

そして次に、点Aを中心として時計回りにはたらく力はMgなので、先ほどと同様に時計回りの力のモーメントを求めてみます。

まずはこのMgの作用線を引きます。そして点Aから作用線までの距離を考えます。すると、AP:PB=2:1なので、点AからMgの作用線までの距離は2/3・ℓとなります。よって、点Aの時計回りの力のモーメントはMg・2/3・ℓとなります。

T・h=2/3・ℓ

このように力のモーメントのつり合いの式を立てるときは、この2つのことに注意するようにしましょう。

(3)解説授業の内容を復習しよう

糸でつり下げられた棒問題演習

(4)剛体のつり合いの解説一覧

剛体のつり合い(力学)公式一覧

力のモーメントの問題の考え方(質点と剛体の違い、剛体がつり合っているときに立てるべき3つの式、力のモーメントを考えるときの注意点)

(5)参考

剛体のつり合い(力学)の解説・授業・公式・演習問題一覧

力学(物理基礎、物理)の解説動画・授業動画一覧

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